早読み行政誌

タクト振らぬ鳩山コンダクター(12月14日〜12月18日号)

地方行政

 低迷する地域経済の浮上に向け、農業をいかにして振興するか─。こんなテーマのシンポジウムを17日号が取り上げている。日本総合研究所が主催した「農業を核とする地域再生のビジョン」で、今月4日に東京・大手町の経団連会館で開かれた。シンポでは、国内の農業の厳しい現状の報告や、経済浮揚の起爆剤として農業を活用する具体策の提言が行われたほか、農業ビジネスを成功させている実践者を招いたパネルディスカッションも行われた。そこでは、「農」と「食」の距離を近づけることで、新たなビジネスを生み、地域に雇用と収入をもたらすというビジョンが次々に紹介され、詰め掛けた聴衆も熱心に聞き入っていた。

 好評コラムの「政治潮流」(14日号)が、「鳩山首相は『コンダクター』(指揮者)なのか」と、首相のリーダーシップに大きな疑問符を付けた。「私はある意味、コンダクター的な役割だ。みんなが一番いい音色を出せるように努力をする。一番大事なことは、それぞれの大臣が大臣として仕事の一番やりやすい環境をつくっていく、そして、それを前提として、ハーモニーがされるように指揮をしていく」。首相のこの発言(10月19日)に対し、筆者は「はて、鳩山内閣の閣僚はハーモニーを奏でているのだろうか?」と問う。そして、コンダクターとしての役割が求められる局面でもタクトを振らない首相に、「年末の来年度予算編成はいったいどうなるのだろう」と憂慮する。

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内外教育

【12月15日号】 トップ記事は、この秋(9〜11月)の教育界の動きを論評する「時評クォータリー・秋」。教育ジャーナリストの斎藤剛史氏が担当した。

 斎藤氏によると、この秋のキーワードは「政権交代」。もちろん、8月の総選挙で大敗した自民党、公明党に代わり、民主党を中心とする3党が9月に連立政権を発足させたことを受けたものだ。1955年の保守合同以来、初めての本格的政権交代で、これに伴い日本の教育が今後どう変わっていくのか、多くの教育関係者がまさにかたずをのんで見守っている。しかし、その行方はまだよく分からず、期待半分、不安半分という雰囲気で過ぎた秋だったという。

【12月18日号】 学力向上を狙って教える内容や時間を増やす新しい「学習指導要領」がまとめられ、中学校では2012年度からの本格実施を前に、早速その一部が今春から導入されているが、これを受けて、夏休みなどの長期休業期間を短縮するとした中学校がほぼ5校に1校(22・4%)に上っていることが、ベネッセ教育研究開発センターの行った調査で分かった。

 授業の時間を確保するため、各学校などの判断で短縮を決めたとみられるが、調査は今年の1学期中に行われており、その後、新型インフルエンザによる休校や学級閉鎖が全国で相次いだことを考えると、“長期休業返上”の学校の割合はさらにアップするものとみられる。
 一方、新指導要領を実施する上で課題になることを10項目のうちから3つ選んでもらうと、「教員の数が足りないこと」が77・5%で突出。以下、「教員の勤務時間が長過ぎること」(40・6%)、「学校の設備が十分でないこと」(35・9%)、「学校の予算が足りないこと」(34・0%)などが続いた。

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厚生福祉

【12月15日号】 連載「保育所の現状と課題」の6回目は「東京都の認証保育所はどう評価されているのか」を掲載。認証保育所の設置状況、事例、東京都が実施した調査結果、学習院大学教授の評価について紹介。都の認証保育所は12月現在で477カ所あり、うち設置主体の最多は株式会社の277、ゼロ歳児保育、日曜保育なども実施しているが、都の調査によると利用者から「園庭なし」「保育料が高い」との不満が多いことなどが分かる。「社説拝見」は11月後期分で、犯罪白書、鳩山政権の政権公約、たばこ増税などに関する社説について解説する。

【12月18日号】 ニッセイ財団シンポ「高齢社会を共に生きる─長生きして良かったと思えるまちづくり」の詳報を2回に分けて取り上げる。東京の日生劇場で11月28日に開催されたもので、制度にない新サービス、地域での支え合いのポイント、社会福祉法人、社協、NPOの役割などをめぐる活発な議論を紹介。初回は「必要な『行政と住民協働』の社会哲学」と題して地区社協と公民館の一体的な取り組み事例などを取り上げる。町村合併に伴って空き庁舎となった旧町役場を活用して幼稚園と保育所を一体的に運営しようと計画している徳島県吉野川市の事例を特集。少子化に対応した取り組みとなる。

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税務経理

【12月15日号】 時事通信社が東証一部上場の3月期企業を対象に集計した解説記事によると、09年9月中間決算の連結経常利益は前年同期比で62.0%減だったが、減益幅は徐々に縮小しつつあり、10年3月期(通期)では0.2%増とわずかながら増益に転じる見通しという。日本企業の業績悪化はようやく歯止めが掛かっているように見えるが、リストラ頼みの収益回復を続ければ、個人消費や設備投資の低迷につながって内需不振を招き、企業業績の足を引っ張る可能性もあると同記事は指摘する。

【12月18日】 巻頭言「フォーラム」は、国際結婚した夫婦が離婚した場合の子どもの保護に関する「ハーグ条約」を批准すべきかどうかについて問題提起をしている。同条約は、一方の親が他方に無断で子どもを自らの母国に連れ去った場合、子どもを元の居住国へ帰還させることを義務付けるなどの内容。先進国のほとんどが同条約を調印・批准している中、日本が批准していない理由として、▽ドメスティックバイオレンス(DV)を原因に逃げ帰ってくる母親を守れなくなる▽離婚後の親権設定が欧米諸国とは異なっている──ことを挙げ、同条約については「是々非々で対応すべきである」としている。

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金融財政ビジネス

【12月17日号】 「返済猶予、実効に疑問も─動きだす中小企業金融円滑化法」として、施行の態勢が15日に整った中小企業金融円滑化法に関する解説記事を掲載。同法は12月4日に施行されたが、返済猶予を補うための新たな信用保証制度が15日にスタートし、初めて実地に支払い猶予を認める環境が整った。同法の施行に合わせて、金融庁は不良債権の基準を緩和するなど金融検査マニュアルや監督指針も改定。中小企業に対する金融を下支えし経営改善につなげることを狙う。

 ただ、新法が目覚ましい効果を発揮するかどうかは不透明だ。信用保証の新制度は、既に公的融資や信用保証を受けている企業が対象外で、利用できるところは限られる。また、金融機関が新法で条件変更の実施状況について開示・報告義務を課されたため、実績づくりを目指して、返済猶予をそれほど必要としていない中小企業に対し「『返済猶予の押し売り』をするという、ゆがんだ現象が発生する」との懸念もある。金融界には「効果は限定的で、かえって中小企業向け融資の現場が混乱する」との危惧も浮上している。

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