連載「若者Iターンと起業の島」の2回目(14日号)は、一流大学を卒業して大企業に就職しながら、安定した生活を捨てて人口2600人の小さな島、島根県海士町に移り住んだ2人の若者の話。一人は、京都大工学部を卒業し、トヨタ自動車に就職した阿部裕志さん(31)。会社の同期社員から海士町の話題を聞き、06年12月に島を訪れた。役場の職員らと酒をくみ交わしながら語り合い、島の魅力やさまざまな課題に前向きに取り組んでいる町の人の話を聞いた。そして、島から帰るときには「町の人と何かをやってみたい」と考えるようになっていた。もう一人は岩本悠さん(30)。大学時代に1年休学してアジア、アフリカの20カ国を旅行し、ボランティアやインターンシップなどさまざまな体験をまとめた「流学日記」という著作を出している。卒業後はソニーに就職。島に移り住んだのは、途上国支援などのために自ら設立したNGOの活動として全国の学校を回って講演やワークショップをしている中で、海士町の中学校に出前授業に行ったのがきっかけだった。
【1月12日号】 政府は昨年末、2010年度予算案を閣議決定した。そのうち文部科学省関係の一般会計予算案は、前年度比3109億6000万円(5・9%)増の5兆5926億1200万円。文科省予算案の対前年度比伸び率が5%台になったのは、1992年度(前年度比5・1%増)以来のことだ。内容的には、既存の各種モデル事業を大幅に見直したのが特徴。対象となったのは145件で、一部を統合した上で4つの類型に整理。教育委員会がこれらの中から選択できるよう仕組みを改めた。民主党のマニフェスト(政権公約)に盛り込まれた高校無償化は、公立高校生については授業料を徴収しないこととし、地方自治体の授業料収入相当額を国費で負担する。一方、私立高校生には年額11万8800円の就学支援金を支給し、低所得世帯には所得に応じて追加支給を行う。
このほか、理数教科の少人数指導を充実させることなどを念頭に、教職員4200人の定数改善を行い、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)は、これまでの悉皆(しっかい)方式をやめ、約32%の抽出調査とする。
1月15日号 東京大学がこのほど、「2008年度学生生活実態調査」の結果をまとめた。それによると、保護者の年収が「450万円未満」という学生の割合は、前年度の9・3%から17・6%へとほぼ倍増。全体に、08年秋の世界的な金融危機以降顕著になった景気悪化を反映した結果になった。保護者の年収が950万円以上の学生の割合は53・4%で、前年度の63・7%に比べ10・3ポイント減った。しかし、東大生の過半数がこの所得層の家庭の子女であることも、改めて明らかになった。
【1月15日合併号】 1月に発足した「日本年金機構」の紀陸孝理事長へのインタビューを掲載。機構が目指す組織像、納付率向上策、厚生労働省との関係などについて質問。理事長は信頼回復に大事なことは「記録回復ときちんとしたサービス機関になること」と答えている。連載「保育所の現状と課題」の8回目は「保育所の民営化は何を目的としているのか」。従来、地方自治体と社会福祉法人を原則としていた保育所の設置主体制限が2000年に撤廃され、基準を満たせば学校法人や株式会社でも保育所設置が可能となり、待機児童対策の一環で保育所の民間委託が進みつつある。その現状や課題を点検する。「社説拝見」では昨年12月前期の社説について解説。COP15の開催で残された課題、過去最多の校内暴力、後期高齢者医療制度の見直し、事業仕分けについての社説を取り上げて論評する。
【1月15日号】 「解説」は、昨年暮れに開かれた「資産評価政策学会」の定期研究大会で報告された内容を、明海大学名誉教授の武田公夫氏がまとめている。パネルディスカッションでは、自公連立政権時代に法制化された「長期優良住宅普及促進制度」がテーマの一つとして取り上げられた。通称「200年住宅」とも呼ばれる長期優良住宅の普及に向けては、▽わが国に根強い土地資産主義により、個々の建物が購入者の家族構成や趣向に合致しないため、優良な既存住宅であっても取り壊しが当然という観念がある、▽既存住宅が市場で適正に評価され取引されるには、関連する税制、金融などの整備が必要・商業地などへの変化を想定する必要のない、安定した住宅地域でのみ長期優良住宅は有用─といった課題点があることを報告者は指摘している。