【2月15日号】 トップ記事は、「『交通権』実現へ総合交通財源を確保せよ」と題する谷口博文九大教授の論文。「行きたい所に行くこと」が権利として保障される。それが交通権だ。同教授は「誰もが年をとり、目も耳も足も悪くなる。自分ひとりで買い物や病院に行けなくなり、趣味のサークル活動や旅行も難しくなる状態を思えば、移動=モビリティーの確保が誰にとっても生きることと同じぐらい重大な意味を持っている」と指摘する。その上で、「公共交通優先の思想」や「運賃と費用負担のあり方」など四つの視点から交通政策の見直しを提言。「フランスや英国でも、交通政策の大転換は政権交代とともに動きだしており、政府全体でこの問題に取り組む絶好の機会ではないか」と訴える。
【2月18日号】 「農業を核とする地域再生ビジョン(中)」は、「地域が主導する食・農システムの構想」がテーマ。日本農業再生に向けた議論のポイントに「食と農を取り巻く価値体系」の変化と「食と農のトータルルシステム」の必要性の2点を挙げ、具体的な対策として(1)直売所流通を農産物流通全体の20%程度にまで拡大する(2)地域ごとに「食料・農業・農村基本法」を制定する──よう提案した。
【2月16日号】 文部科学省の2010年度予算案の中身を詳しく解説する恒例のシリーズが今年も始まった。その2回目となる今号の対象は幼稚園から高校までの、いわゆる初等中等教育。何といっても注目されるのは公立高校の授業料無償化、それに、私学に通う生徒に対する高等学校等就学支援金支給だが、そのほかにも、小中学校教員の定数改善(差し引きで300人の純増)、いわゆる「小1プロブレム」「中1ギャップ」などへの対応のための退職教員活用、悉皆(しっかい)から抽出方式へ変更しての全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)実施(10年度は4月20日に行う)、昨春更新制が始まったばかりの教員免許制度の抜本改革に向けた調査検討など内容は盛りだくさんだ。
そのほか生徒指導の分野では、「学校裏サイト」などインターネット上でのいじめや、違法、有害な情報から子供たちを守るため、ネット上の情報を監視する「ネットパトロール」の効果的な実施方法などを、専門家や教育委員会関係者などで構成する会議を設置して検討を進める経費が盛り込まれた。
【2月19日号】 文部科学省がこのほど発表した「子どもの学習費調査」の結果によると、保護者が支出した学習費の総額(学校教育費、学校給食費、学校外活動費の合計)は昨今の厳しい経済状況を反映し、公立の幼稚園、小学校、高校、私立の中学校、高校で減った。中でも、学習塾費、家庭教師代などを含む学校外活動費は、その減少ぶりが目立つ。
調査は1994年度から隔年で実施している。今回は幼稚園児、小・中・高校生の保護者が2008年4月1日から09年3月31日までに支出した教育費について、学校と保護者を対象に聞いた。
【2月16日号】 主要省庁の「2010年度予算案詳報」の3回目は環境省。2020年までに温室効果ガスを1990年比25%削減するための対策に重点を置き、再生可能エネルギーの活用、住宅での断熱技術の利用などの実証研究、地方自治体の温暖化対策計画作りの支援などを進める。「海外トピックス」にはフランス政府の炭素税修正の動きや米政府のクリーンエネルギー推進のための税制優遇措置などを紹介。「地域を支える」では兵庫県音楽療法士会を取り上げ、独自の認定制度や音楽療法の普及活動を紹介する。
【2月19日号】 主要省庁の「2010年度予算案詳報」の4回目は厚生労働省。民主党の目玉施策である子ども手当(6月から半額支給)を計上したため総額が大きく膨らんだ。診療報酬の10年ぶりのアップ、救急医療などへの財政支援増額も盛り込んだ。連載「増加する有料老人ホームと高専賃」の4回目は「自治体は有料老人ホームの総量規制緩和へ」。介護付き有料老人ホームの急増で介護保険財政を圧迫し始めたため、自治体によっては施設数や利用者数を規制しようとする動きがある。東京都、大阪市、広島市などの状況を解説する。「地域を支える」では福井県越前市にある障害者福祉施設の「たけふ福祉工場」を取り上げ、施設商品のカタログを作製して販売促進を図っていることを紹介。
【2月16日号】 政権の座を降りた自民党は、民主党主導の税制改正をどのように眺めているのか。「特集」では、現政権による2010年度税制改正などについて、自公連立政権時代に自民党税制調査会長を務めた津島雄二氏にインタビューする。津島氏は10年度税制改正を「大きな課題はすべて先延ばしをした印象で、ほとんどが宿題になっている」と切り捨てる一方で、消費税増税の論議に関して「逃げたらいけない」とハッパを掛ける。また、民主党の政治姿勢に対して「しがらみこそ政治の基本だ。しがらみなしに自由にずばずばやると言った途端にうそになる」と疑問符を突き付けている。
【2月19日号】 「特集」は、新年度の税制改正について総務省と財務省の担当者が解説する「2010年度税制改正と今後の展望」(5回連載)の第1回で、都道府県税を取り上げる。自動車関連諸税や不動産取得税、地方法人課税について見直し内容を解説した上、今後の検討課題として、「地球温暖化対策のための税」などをクローズアップする。
【2月18日号】 「見え始めた?米雇用調整の出口─下がらない期待インフレ率、タカ派を後押し」と題し、米国の経済情勢と金融政策の見通しを分析する記事を掲載した。それによると、2月5日に発表された1月の米国雇用統計では、雇用者は事業所調査による非農業部門就業者数で前月比2.0万人減少した。労働時間も長くなっているほか、失業率は0.3%も改善して9.7%に低下した。ただ、この改善が趨勢となるかどうかの見極めには時間を要する。なぜなら(1)雇用の増加の勢いが鈍い(2)失業の期間が長くなっている(3)算定の基になる家計調査の雇用者数が非常に急激に動いている(前月比54.1万人も雇用が増加)──からである。また、今回の雇用統計では、賃金(平均時給)が0.3%上昇した。厳しい雇用情勢でありながら賃金の低下圧力が鈍い、という傾向が見え、金融政策の行方を考える上で、利上げ積極派を勢いづかせることになりそうだ。