早読み行政誌

教科書デジタル化に「検定」の壁(2010年8月30日〜9月3日号)

地方行政

【8月30日号】 総務省は、地方自治体の首長と議会の関係といった基本構造の見直しに関し、5通りのモデル案をまとめた。橋下徹大阪府知事らが求めているような、議員による副知事や副市町村長の兼職を解禁したり、執行機関に「内閣」を設置したりするモデルも含まれている。今後、これらのモデル案や現行制度をたたき台として、同省の地方行財政検討会議などで議論し、来年の通常国会への提出を目指す地方自治法の抜本改正案に反映させたい考えだ。ただ、同検討会議の第1・第2分科会が5月に合同で実施した全国知事会など地方六団体へのヒアリングでは、議員と自治体幹部の兼職解禁や議会内閣制の導入について慎重な検討を求める意見が相次いだだけに、今回のモデル案が自治法改正案に盛り込まれるかどうかは不透明だ。

【9月2日号】 東京大公共政策大学院は10月19日、公開フォーラム「わが国の持続的成長をけん引する社会資本整備と資金調達手法の多様化」(後援・国土交通省、不動産証券化協会)を東大安田講堂で開催する。政府や多くの地方自治体が財政難に陥っている中、税金などの公的資金だけに頼った社会インフラの整備は厳しさを増している。フォーラムは、社会的意義の大きい社会資本の建設や維持、管理を確実に進められるようにするため、証券化などの手法を導入し、民間からも資金を調達する道筋を探るのが狙いだ。併せて、公有資産をより効率的、効果的に運営・管理できる方策についても議論する。同大学院の特任教授を務めている内藤伸浩・不動産証券化協会上席主任研究員に、今回のフォーラム開催の意義などを聞いた。

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内外教育

【8月31日号】 聴覚障害の新生児はどのようにして言葉を獲得していくのか。聴覚障害が発見されて間もない乳児の教育相談を担当する、筑波大学附属聴覚特別支援学校の佐藤幸子教諭は「母親とのコミュニケーションが言葉獲得の土台」と訴える。同校は乳幼児教育相談の窓口として「けやきルーム」を設けている。「母親が子供に心を通わせながら、しっかりと向き合えるように支援する」という。現場の温もりが伝わって来るリポートだ。

【9月3日号】 紙の教科書がデジタル化へ向かっている。ソフトバンクの孫正義社長らの音頭で、業界にはデジタル教科書教材協議会という名の団体が立ち上がった。この盛り上がりと教育現場の不安と戸惑いはあまりに落差が大きい。デジタル教科書を実際につくる東京書籍ソフトウエア制作部長は、むしろ日本の学校で行われて来た黒板に向かって生徒が板書を写すスタイル、いわゆる一斉授業が問われることになる、と予測する。と言っても、デジタル化は当面はDVDだけ。ネットを使う大量のデータ送信による利益は、業界に当面ないのだが……。なぜなら、「教科書検定」という厚い規制を乗り越えなければならないからだ。

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厚生福祉

【8月31日号】 シリーズ「医の安全を目指して」の7回目は「複合対策で入院患者の肺塞栓症を予防─弾性ストッキングとIPCと抗凝固薬」。前回に続いて「医療安全全国共同行動」に寄せられたQ&Aを取り上げる。「地域を支える」では横浜市にこのほど完成したゲストハウス「カナリアン」を紹介する。「海外トピックス」ではオーストラリアで漢方医登録が義務化されたことや韓国で屋外の禁煙区域で喫煙すると罰金が科されることなどを解説する。

【9月3日号】 連載「揺れる障害者自立支援法と施設、事業所」の3回目は「居宅介護、就労継続支援などのサービス内容を見る」。障害福祉サービスのうち就労継続支援などのサービス内容を解説する。障害者の雇用に向けさまざまな取り組みがなされていることが分かる。

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税務経理

【8月31日号】 シリーズ「会社法の基礎」の最終回は、「株式移転」と「外国会社」について。株式移転は、新設会社が既存会社から株式の交付を受け、既存会社の完全親会社となる仕組みで、1999年の商法改正で導入された。関係者を保護する手続きとして、株式交換と同様▽反対株主による株式買い取り請求権▽不利益を受ける恐れのある債権者が異議を述べる手続き──などが定められている。また、外国会社に対しては、日本国内で取引をする場合に起きる紛争の防止や債権者保護のための一定の規制が設けられている。

【9月3日号】 法人税率の引き下げが、来年度税制改正の検討課題として浮上してきた。「直言苦言」は、企業利益に課税される実効税率(国・地方合計)が日本と米国に比べて10ポイント低い欧州連合(EU)諸国の事例を取り上げている。EU諸国では、国内企業の海外移転を防ぐとともに外国からの直接投資を呼び込むため、「法人税率の引き下げ競争」が行われてきたにもかかわらず、法人税収の対GDP(国内総生産)比はむしろ上昇したという。その理由は、▽法人税率の引き下げが租税特別措置の見直しなど課税ベースの拡大とセットで行われ、税率引き下げ以上の増収があった▽減税のアナウンス効果で起業を誘発するなど経済の活性化に働いた──ことが挙げられると指摘。これに倣い、わが国の法人税減税は「まず『課税ベースを広げて税率を引き下げる』という税収中立で行い、EU諸国で現実に生じた経済活性化・税収増という効果を追求すべきであろう」と提言している。

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金融財政ビジネス

 8月30日号では、8月16日に内閣府が発表した今年4〜6月期の国内総生産(GDP)速報について分析した「年率0・4%とゼロ成長近辺に暗転」と題する記事を掲載した。それによると、「物価変動の影響を除いた実質GDPは前期比0・1%増、年率換算0・4%増で、事前の民間予測平均(年率2・1%)を大きく下回った。『GDP統計は2、3カ月前の過去の話』市場で無視される場合が多いが、今回はインパクトがあった。昨今の円高は、輸出の伸びを抑えるだけでなく企業収益の悪化を招き、設備投資を冷やす。さらに、9月末にエコカー補助金、12月末に家電エコポイント制度がそれぞれ打ち切られた場合、消費が落ち込む可能性は高い」などとしている。

 9月2日号では、連載企画・IPフロントランナーの一環として「国際標準への取り組み強化が必要」と題する産業技術総合研究所の野間口有理事長へのインタビュー記事を掲載した。それによると、「野間口理事長は、知的財産権(IP)に関する国際標準の分野で日本が不利になっている、との認識を示した上で『国際標準も自分で提案していくことが大事であり、国際標準を獲得していくような人材の養成はこれからの課題だ』として、その重要性を強調した。また、中国の特許出願件数が急増していることについて『知的財産マインドが上がっていることを反映している』と指摘。さらに、日本や欧米の先進国が知的財産制度を守るよう中国側に求めていかなければならない、との考えを明らかにした」としている。

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