【9月6日号】 経済産業省は、インターネットを通じて高度な情報処理やデータの蓄積・分析といったIT(情報技術)サービスを提供する「クラウドコンピューティング」の普及促進について検討していた研究会の報告書を公表した。報告書は、(1)新たなビジネスモデルによる国際展開など「イノベーション創出」(2)データの利活用に伴う規制緩和や個人情報保護の新たなルールの確立など「制度整備」(3)データセンターの国内立地促進など「基盤整備」──を一体的に進めるよう提言。これにより、2020年までに40兆円を超える新たな市場が形成されると推計し、その影響力はパソコン、インターネットに続く第3の変革に当たると評価した。
【9月9日号】 連載「自治体と公文書管理─いかに効率化するか」の5回目は、熊本県宇土市の渡辺勇一氏が執筆。同市は平成13年4月から全国初となる「宇土市文書管理条例」を施行している。一般的に自治体では、文書管理については規則・規程の制定で対応しているが、宇土市ではあえて条例として文書管理を制度化したという。文書管理条例の制定から来年で10年。これを機に条例の運用を振り返り、それを通じて文書管理の具体的手段の改革とその効果について検証した。
【9月10日号】 民間と公務員の世界で、使う言葉に違いがある。例えば「出張」。民間で出張と言えば、宿泊を伴うケースを想像する。仮に1日限りの場合は、日帰り出張。ところが、役所や先生たちは、数時間単位で職場を離れても「出張」と言う。この落差が、理不尽な要求を突きつける保護者の対応を複雑にするケースがある。出張と説明した教諭が数時間後に職員室に戻って、ちょうどその場に要求を突きつけに来た保護者が「いないはずの人物」を見つけた場合だ。「さっき出張と言ったじゃないか」。日本の社会はどこの業界でも、それぞれ独自の用語がある。業界用語を避けて、だれもが同一に認識する表現で対応する。この配慮だけでも、不必要なトラブルはかなり防げる。連載「モンスターペアレント論を超えて」で、小野田正利大阪大学大学院教授はこう説いている。「平たい言葉で」。
【9月7日号】 シリーズ「医の安全を目指して」の8回目は「中央管理、機種統一、手順の標準化─使用頻度の高いポンプを安全に使うために」。前回に続いて「医療安全全国共同行動」に寄せられたQ&Aを取り上げ、使用頻度の高い輸液ポンプ、人工呼吸器等に絞ってみる。「新刊図書の中から」では「ルポ 生活保護─貧困をなくす新たな取り組み」「脳再生への道─最先端医療の現場から」「家族のための介護入門」を紹介する。
【9月10日号】 連載「揺れる障害者自立支援法と施設、事業所」の4回目は「ケアホーム、グループホームのサービス内容などを見る」。共同生活介護、共同生活援助、療養会議の具体的な事業内容を詳しく解説する。「自殺予防対策、秋田のキーマンに聞く」の特集を開始。初回は秋田大学の本橋豊医学部長に秋田の現状や課題を聞いている。シンポジウムが民間活動の起爆剤になったことが分かる。
【9月7日号】 巻頭言「フォーラム」は、「財政健全化の姿勢を崩すな」と題し、財政規律の確立が日本の国際公約となったことへの自覚を求めている。筆者は、消費税増税をめぐる菅直人首相の発言が7月の参院選で民主党大敗の原因になったとする見方に対して「昨年9月以降の政権担当の実績に対して、有権者が下した厳しい評価とみなさねばならない」と異論を展開。さらに、「国会が一丸となって財政規律の確立に取り組む体制をつくることに努め、わが国の国際的信用のさらなる後退を防がなければならない」と力を込める。
【9月10日号】 「検証・租税判決から見た不動産の時価」は、親族間の土地取引が、時価よりもかなり低い「相続税評価額」で行われた場合、時価との差額分が贈与に当たる(贈与税の課税対象となる)かどうかが争われた裁判事例を取り上げる。相続税法第7条は、「著しく低い価額の対価」で財産の譲渡を受けた場合、時価との差額相当分の贈与があったとみなすと定めているが、今回の事例で裁判所は、相続税評価額が、時価とおおむね一致する地価公示価格の80%とされている点に言及し、「社会通念上、基準となる数値と比べて一般に著しく低い割合とはみられていない」として、贈与税課税処分の取り消しを求めていた原告の訴えを認めた。裁判所はまた、こうした相続税評価額の設定が「地価が1年間で20%近く下落することもあり得ると考えられていることを示すもの」との見解も明らかにしている。
9月6日号では、最近の不動産投資信託に関する分析記事「東証指数、年内1200ポイントも」を掲載した。それによると、「不動産投資信託(REIT)市場は9月10日で、取引がスタートしてからちょうど10年目の節目を迎える。最近のREIT市場は、昨年初めまでの下落基調からは抜け出したものの、取引が活発化せず、株価(投資口価格)も低水準で推移している。多くの投資家は現在のREITを『割安』と評価しているが、その一方でREITの運用状況などに対する不安も存在しているようだ」などとしている。
9月9日号では、騒乱が起きて3カ月がたったタイの政治・経済情勢を分析した「経済は好調維持、拡大へ」と題する記事を掲載した。それによると、「今年3月から5月下旬まで続いたタイ・バンコクでの反政府デモは、死者90人以上、負傷者1600人以上を出す大きな事件となり、同国における過去20年間で最悪の事態を招いた。暴動の模様は、衝撃的な映像とともに国内外に伝えられ、同国は国際的な信用力を失墜させたとされる。その一方で、タイ経済は昨年後半から好調を持続。8月23日に発表された今年第2四半期(4〜6月)の国内総生産(GDP)成長率は、騒乱の時期とほぼ重なるにもかかわらず、前年同期比9・1%増と驚異的な伸びを示した。騒乱後も日系企業はもちろん、他国企業によるタイ進出の流れに大きな変化はない。タイでは不安定な政治状況の中、経済が堅調を持続する奇妙な事態が続いており、同国における政治と経済の『デカップリング』(切り離し)を指摘する見方が出ている」としている。