【11月29日号】 「年内総辞職」か「年初解散」の可能性も──。今号の「政局を読む」のタイトルだ。菅政権は、中国漁船による海上保安庁巡視船に対する体当たり事件の処理と、事件を撮影したビデオの流失問題で国民の信頼を大きく損ない、内閣支持率は「危険水域」の30%をあっさり割り込んだ。今後の政局を占うと、選択肢として残るのは総辞職か解散・総選挙かの二つで、場合によってはこの二つの組み合わせもあり得るという。あくまで菅直人首相のまま総選挙に臨もうとするなら、来年1月の通常国会冒頭解散が有力視され、総辞職により新首相に交代すれば、来年度予算案を年度内に成立させたあとの5月解散─6月選挙の線が出てくるとか。
【12月2日号】 政府主催の全国知事会議が11月22日、首相官邸で開かれた。菅直人首相は、国が使い道を定める「ひも付き補助金」を地方が自由に使えるようにする一括交付金化について、「三位一体改革と同じにはしない」と明言。地方交付税が大幅に減って地方財政に打撃を与えた同改革の二の舞いにはならないよう、地方財源に配慮する姿勢を明確にした。一方、地方側が反発している子ども手当の地方負担をはじめ、地域主権改革関連3法案の早期成立、出先機関の改革では政府側から踏み込んだ答弁はなかった。いずれも地方側が政府の対応を強く求めてきた項目だが、結局、政府が示したのは相次ぐ「ゼロ回答」だった。
【11月30日号】 ダブルリミテッド—という言葉をご存知だろうか。母語以外の外国語環境の中で幼少期を過ごした人が、両言語とも中途半端になってしまう状態を指している。周囲には「この子はひょっとしたら学習障害(LD)?」という印象を与え、おどおどして落ち着かない様子を見せる。年齢に応じた学習も困難になることが懸念される。日本でもブラジル人集住地域の子供たちの中に、ポルトガル語も日本語も発達が遅い者がいる。今回から3回にわたる「続・あなたの隣の外国人」は、帰国子女の中にもいるこのダブルリミテッドの問題に焦点を当て取り上げる。
【12月3日号】 巻頭インタビュー「あすの教育」には「五体不満足」の作家乙武洋匡さんが登場。今年3月までの3年間、東京都杉並区立杉並第四小学校で教壇に立った。子供たちに何を伝え、何を教えてもらったのか。「学校が9割の杞憂で出来ていることに驚いた」と事なかれ主義の一面を見抜いた上で「ただ、一方的に批判する気はない」とも言う。インタビューは、教師の体質と本質、民主党政権の教育政策、障害者教育の在るべき姿を含め、現場主義に基づく教育提言になっている。
【11月30日号】 連載「揺れる障害者自立支援法と施設・事業所」の13回目は「障害福祉計画に見るサービスの動向」。障害者自立支援法に基づく障害福祉計画に焦点を当て、厚生労働省の計画策定指針のポイント、全国集計結果、横浜市の具体的な計画について解説する。施設入所者の地域生活への移行が8%程度の計画となっていることなどが分かる。連載「〝最貧国〟の最新事情」の12回目は「『女は内』から表通りへ」。四半世紀前に女性の生き方と社会の変化を検証するためバングラデシュに出掛けるようになった筆者。最初に訪問した1990年代の初めに外で女性の姿を見掛けなかったが、NGOなどの教育、保健指導等さまざまな取り組みの結果、初婚年齢の変化に伴う人口急増の改善、識字率の上昇、衣料品製造の発展など大きく社会が変化しつつあることを紹介する。
【12月03日号】 連載「“最貧国”の最新事情」の13回目は「女性の経済的自立、縫製業と小起業」。最貧国といわれるバングラデシュは繊維製品を中心に輸出額が着実に伸びており、衣料品製造に中国よりもずっと安い賃金で働く女性たちが貢献している。工場で働くことによって女性の生活が一変しつつあるという。また小規模の融資によって貧困の軽減に向けた活動が進んでいる。「新刊図書の中から」では「助けてと言えない─いま30代に何が」「大切な人の『こころの病』に気づく」「消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし」を取り上げる。
【11月30日号】 「検証・租税判決から見た不動産の時価」は、農地転用の届け出がなされた土地について、現実には建物などの建築が困難であるにもかかわらず、標準宅地を基礎として評価額を算出したことの妥当性が争われた裁判を取り上げている。広島高裁は2004年2月、農地転用の届け出が出された約2000平方メートルの土地の「適正な時価」として、市が決定した課税台帳登録価格2431万9503円ではなく、不動産鑑定士の評価による835万円が相当だとする判決を下した。評価対象となる土地が、ある種別から他の種別へと転換しつつあったとしても、今回のように移行後の機能を十分に果たし得ないと考えられるケースでは、「転換前または移行前の種別の地域の地域要因をより重視すべきである」(不動産鑑定基準)とされている。このため筆者は、こうしたケースで土地の時価を求める場合は、転換前の土地の種別(農地、林地など)に、将来宅地となる期待性を加味して得た価格を重視すべきだとしている。
【12月3日号】 「地方税法総則─基礎から実務まで─」第38回は、引き続き、更正、決定などの手続きの期間制限について。課税標準額や税額を減少させる更正・賦課決定などの期間は法定納期限の翌日から5年となっているが、所有権が移転していたり、家屋が滅失していたりするにもかかわらず固定資産税が誤って課税されるような場合は、同税の賦課自体が無効となる。このような無効な賦課処分では、無効を主張できる期間の制限はなく、納税者はいつまでも「無効だ」と主張することができる。
【11月29日号】 「駆け込み消費で年率3・9%成長」と題して7〜9月期の国内総生産(GDP)速報に関する分析記事を掲載した。それによると、「内閣府が11月15日に発表した2010年7〜9月期のGDP1次速報値によると、物価変動の影響を除いた実質GDPは前期比0・9%増、年率換算では3・9%増で民間予測の平均である2・31%増を大幅に上回った。駆け込み消費による一時的な現象である可能性が高いため、世間の関心はその反動が出る現在の10〜12月期、さらに来年の景気に移っている。民間のエコノミストは『一転してマイナス成長』と予測しており『踊り場入り』との見方が多い。他方、内閣府は10、11月の月例経済報告で共に『足踏み』という言葉を使い、下振れを懸念している」などとしている。
【12月2日号】 「不均衡是正の具体策は先送り」と題して、11月にソウルで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合に関する解説記事を掲載した。それによると、「G20首脳会合は、輸出拡大に有利な自国通貨安を促す『通貨安競争』の回避を盛り込んだ首脳宣言を採択した。世界経済の不均衡是正については、経常収支の過度な黒字・赤字の縮小などを目指す『参考ガイドライン(指針)』が必要、との認識を共有した。ただ、焦点だった指針の具体化は2011年前半までに進めるとし、先送りした。世界的な金融危機と、それに伴う実体経済の急激な悪化に対応するため、08年11月に緊急招集されて始まったG20首脳会合が、アジアで開催されたのは今回が初めて。日本からは菅直人首相が出席し、野田佳彦財務相が同行した」などとしている。