【3月7日号】 連載「自治体の防災危機管理」の11回目は「市民参加で防災条例を作ろう」の(下)。筆者が勤務する板橋区は2002年4月に防災基本条例を施行したが、条例を作るに当たって最も困ったのはその制定過程がよく分からないことだった。当時、ほとんどの条例は国や県から準則が示され、その通りに制定されていた。自治体が独自に取り組む場合には、どのような検討を行い、どの程度の議論の深さが必要なのかさえ不明で、条例を解説した文書もほとんどなかった。そこで板橋区は、条例に盛り込むべき内容を審議するに当たって、公募区民を含む24人の委員から成る防災懇談会を設置。区民や事業者の役割は何か、行政は何をやるべきか、どうやって協働するかということを、区民と行政が同じテーブルで議論した。これを板橋の防災の憲法とも言うべき防災基本条例に反映させれば、これまで以上に継続的で力強い防災政策を展開できるのではないかと期待したという。
【3月8日号】 2月中旬に東京都文京区の日本医師会館で開かれた財団法人日本学校保健会が主催した薬物乱用防止シンポジウムは地味だが、教育現場で着実に生かさなければならない教訓が多く示されていた。今は中高生がファッション感覚で薬物を乱用する「第3次乱用期」なのだそうだ。薬物に対する教育の結果、「絶対に使うべきでない」とする児童生徒が増加していることは一定の成果なのだろうが、乱用は続いており、安心はしていられない。
【3月11日号】 好評連載「モンスターペアレント論を超えて」の筆者は50代の阪大教授小野田正利さん。その小野田教授は京大入試のネット投稿事件について、「大学教師として30年近く、自らが試験監督の経験をしてきた今、半分はやるせない気持ちになる。悲喜こもごも、いや悲悲こもごものエピソードがある」と感想を漏らす。「試験監督は、実はクレームとの応答の歴史でもある」と位置付ける。今回31回は、「保護者の理不尽要求そもそもが、入学試験に端を発した」歴史が分かる社会学講座になっている。
【3月8日号】 連載「進む営利法人の『福祉参入』」2回目は、高齢化の進展や人材不足など、介護が成長産業といわれる背景を取り上げる。自殺者が毎年3万人を超える中、警察庁による2010年の自殺者に関する調査結果を掲載。生活苦や50代の自殺者が減少し、経済・雇用情勢が改善しつつある現状がうかがえる。都道府県・政令市の2011年度厚生・労働・環境関係予算の連載3回目は、秋田県、富山県、鳥取県。秋田県は少子化対策として男女の出会い支援を強化している。
【3月11日号】 医療ツーリズムで注目を浴びる中国の医療事情レポートを3回にわたり掲載。1回目は、経済急成長を遂げた社会の状況や、医療制度の概観、先進的なモデル病院の様子などを伝える。専業主婦の年金救済問題では、直近の動きを2ページにまとめた。「社説拝見」はイレッサ薬害訴訟や年金改革に関する各紙の考え方を紹介。2011年度厚生・労働・環境関係予算の連載4回目は、新潟県、福岡市、大分県を取り上げる。
【3月8日号】 巻頭言「フォーラム」は、聖徳太子が定めた十七条憲法の第一条に掲げられている「和を以て貴しと為す」を表題に、神野直彦・東大名誉教授が共同体意識と日本の民主主義の在り方を論じている。それによると、共同体意識とは、「構成員の誰もが互いが不幸にならないことを願い、互いに幸福になることを願い合っているという確信」であるという。例えば家族内で対立があっても、共同体意識があればそれは互いに幸福になることを願うが故の対立であり、意見の相違を認めた上での論争をしていることになる。このように、共同体意識によって民主主義は活性化されるわけだ。しかし共同体意識が失われると、社会は不安と不信にとらわれ、「孤独となった人々は、空疎な雄弁による大衆操作に操られ、不安から逃避しようとする」危険が生ずる。だからこそ「和」は、「親和的な対立を支える共同体意識の大切さを教えている」と筆者は指摘する。
【3月11日】 シリーズ「国際会計基準─見方・読み方」は、収益(売り上げ)をめぐるルールについて。分割払いなどで現金の流入が繰り延べられるケースについて、国際会計基準のIAS18号は「対価の公正価値は、受け取った、あるいは受け取ることが可能な現金の名目の金額を下回るだろう」とし、対価の公正価値と名目額との差額は「利息収益」として認識されるとしている。一方、日本公認会計士協会が2009年にまとめた中間報告によると、日本の会計では「金利要素を考慮しない限り、収益の額は受領する対価の時価で測定されないことになる」と指摘する。この点で、差額が利息の性格を持つ場合、国際会計基準との相違が生ずるため、同報告は「わが国の割賦販売に係る会計処理については、全面的な見直しが必要になる可能性がある」と強調している。
【3月7日号】 「『東アジア化』する日本の景気循環」と題して、欧米の先進国との違いを浮き彫りにしながら2011年の日本経済について分析した記事を掲載した。同記事によると、「 『日本って意外と新興国?』。もちろん、これは日本の経済規模や所得水準について言っているのではない。これらの点において日本は明らかに先進国の一員である。しかし、11年の景気を展望する際、三つの意味で日本には他の先進国と異質性があることに注意したい。第一に、鉱工業生産のボラティリティーの大きさ。第二に、消費者物価指数(CPI)における食料のウエートの大きさ。第三に、原油輸入における中東依存度の高さである。これら3点に注目しながら、11年の景気と金融政策を展望しよう。ポイントは、1点目の異質性が11年の景気のメーンシナリオを強く規定するのに対し、2点目と3点目がメーンシナリオに対するリスクを形成する点だ」などとしている。
また、「シリコンバレーで異彩放つハッカー道場」と題して米国での第3次ネットブームについてリポートした記事を載せている。それによると、「米カリフォルニア州北部のハイテク先進地シリコンバレーの中心部で、IT(情報技術)の次世代サービスや製品開発を競い合う『Hacker Dojo(ハッカー・ドージョー)』が起業家の支持を集めている。インターネット検索最大手のグーグルや会員制交流サイト(SNS)最大手のフェイスブックの次を見据え、寝食を忘れて事業プランの検証やソフトウエアのコード開発に没頭する面々の様子は『空手や柔道の稽古場』(運営元のNPO法人)を彷彿とさせる。『道場』は、SNSを核とした第3次ネットブームを追い風に『入門者』が相次ぐ、IT生態系の新しいホットコーナーと言える」としている。