早読み行政誌

大震災「釜石の奇跡」とは?(2011年5月9日〜5月13日号)

地方行政

【5月9日号】 特集記事で「大詰めの公務員制度改革」を取り上げている。政府の国家公務員制度改革推進本部は4月5日、労使で給与水準などの勤務条件を取り決める「協約締結権」を国家公務員に付与することを盛り込んだ「公務員制度改革の全体像」を決定。政府は法案策定作業を本格化させ、今通常国会に提出する方針だ。法案が成立すれば、これまで人事行政の中核を担ってきた人事院は2012年度にも廃止され、給与水準をはじめとする国家公務員の勤務条件は、民間と同様に労使交渉で決まる制度に代わる。一方で、東日本大震災の発生やねじれ国会など、社会・政治情勢が激変する中で、改革をめぐる議論は与党内ですら限定的にとどまっているのが実情だ。盛り上がりに欠ける「議論なき大改革」の行方を展望した。

【5月12日号】 「河川統制から治水政策へのパラダイム転換」と題する連載が始まった。日本の治水政策は、明治以降の近代化に伴い、海外の土木技術を取り入れたダム建設や河川改修などの政策が大きな成果を上げてきた。しかし、いったんゴーサインが出たダム事業が中止されるなど、これまでの政策に限界があることも分かってきた。治水政策の目的を「人の生命と財産を水害から守る」と定義し、従来の政策の何を転換すれば目的を達成できるのかを考察する。3回連載で、初回は日本の治水行政を概観し、これまでに指摘された問題点を整理している。

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内外教育

【5月13日号】 東日本大震災で釜石市は1300人以上の死者と行方不明者を出した。その中で、3000人近い小中学生の死者は5人。「釜石の奇跡」と呼ばれている。日常の徹底した避難訓練が実ったのだという。子供たちに「率先避難者になれ」と教え込んでいたからだ。平時のリスク管理が、有事の危機管理に見事に結びついた。釜石東中学の女性副校長は、自身が借りていた自宅アパートを流された。「学校に居たから、私も子供たちに助けられた」。最後の言葉に思いが込められていた。

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厚生福祉

【5月10日号】 東日本大震災に関連し、国立成育医療研究センターの奥山眞紀子部長の寄稿「被災した子どものこころを守るために」を掲載、周りの大人が気を付けるべき点などを伝える。連載「進む営利法人の『福祉参入』」10回目は有料老人ホームの経営に焦点を当て、上場企業の決算書内容や、有料老人ホーム特有の「入居一時金」について解説した。2011年度厚生・労働・環境関係予算の連載16回目は、京都市、浜松市、相模原市。

【5月13日号】 東日本大震災の被災地には全国から医療支援などで人が派遣されているが、このうち福島県で活動する滋賀県「健康支援チーム」の角野文彦技官のインタビューを掲載。原発という特別要因が加わった被災地ならではの活動の状況が語られている。4月後期の「社説拝見」は「原発災害からの復興を考える」と題し、原発安定化への工程表や25周年を迎えたチェルノブイリ事故のほか、被災者支援、震災後の社会保障制度などをめぐる各紙の論調をまとめた。このほか、4人が死亡した腸管出血性大腸菌O(オー)111関連の情報などを掲載。

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税務経理

【5月10日号】 シリーズ「国際会計基準─見方・読み方」の第17回では棚卸資産の会計処理を規定している国際会計基準(IFRS))IAS2号に焦点を当てている。棚卸資産とは、一言でいえば、売れ残った商品などで、一般にいう在庫を指す。この棚卸資産の価額(価格)を確定することは、売上原価の額を決定する上でも不可欠なものとなる。本稿では、「棚卸資産が収益として実現するまでの間、資産として計上し、繰り越すべき価額をいくらとするのか」を中心テーマとするIAS2号の取り扱い範囲、棚卸資産の種類、棚卸資産の主な評価方法(売上原価の決定方法)とそのポイントなどを詳説。その内容について、日本の会計基準ではどう定めているかを点検している。

【5月13日号】 巻頭のフォーラムでは、東京大学名誉教授の神野直彦氏が「暗黙知に学ぶ」と題し、東日本大震災からの復旧・復興へ向けた対応などについて提起している。それによると、「それぞれの地域には、暴れ出したら手の付けられない自然と共生する知恵が伝わってきている。こうした何とはなしに祖先から伝わってきている知恵を『暗黙知』と呼んでいる。(中略)暗黙知をおろそかにしてはならない。それが大災害のたびに学ぶ教訓である」と指摘。その上で「大災害では事後責任よりも事前責任が重要である。(中略)今回の大災害では近視眼的な目先の利益に惑わされずに、事後責任を果たすことで、未来への事前責任を果たすことが要求される。それには暗黙知を真摯(しんし)に学ぶことである。」と結んでいる。

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金融財政ビジネス

【5月9日号】 「鍵握るスピード対応」と題して米国での災害復興支援に関する金融制度を紹介する記事を掲載した。それによると、「日本では、東日本大震災の被災地の復興を支援するための金融的な措置が取られている、または今後本格的に取られることになると思われるが、米国では自然災害の被災者に対する復興支援の制度が充実している。本稿では、米国における連邦政府および民間金融機関等による復興支援金融制度を紹介し、復興金融にとって重要と考えられている点について考察することとしたい」などとしている

【5月12日号】 「創世記が暗示する米経済の未来」と題し、米連邦準備制度理事会(FRB)が実施してきた超金融緩和政策についてのまとめ記事を掲載した。同記事は、「2008年の金融危機の際、米国の経済情報チャンネルであるCNBCテレビでは『TSUNAMI』を題材にしたテレビCMが流された。金融危機では衝撃の連鎖が瞬時に金融資産の価値を奪い去った。その直後からFRBは市場で直接金融商品を買い支えるなど、市場原理を無視した救済策を繰り出した。その結果、金融資産の価値は回復、富裕層だけでなく庶民にもその恩恵はある程度及び、オバマ政権の米経済復活シナリオは順調に進んできた。その一方で、米国の超金融緩和は国内でガソリン価格を高騰させただけでなく、海外でインフレを引き起こし、『中東の動乱の一因になった』との見方もある。ドルが基軸通貨であることを前提に、国内政策にしか目を向けようとしないFRBとは何か。これから何をしようとしているのか、その歴史を踏まえて再考してみたい。それが東日本大震災からの復興を機に新しい国づくりに挑む日本の未来に何らかのヒントになれば、とも思う」としている。

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