【6月13日号】 連載「自治体の防災危機管理」の22回目は、片田敏孝群馬大大学院教授インタビューの後半で、三陸地方に伝わる「津波てんでんこ」をめぐるやりとりで始まった。地震で津波が来たら、家族さえも気にせずに、てんでばらばらに一目散に避難しろ、そして一家全滅、共倒れを防げという非常に厳しい知恵だ。片田氏は、親子がバラバラのときにどうするかが問題であり、そのときに家族が必ず避難しているという信頼関係を築くことが重要だと指摘する。親は「あの子はきっと逃げている。だから私も避難しよう」と考え、子どもは「親はきっと避難しているはず。自分が逃げ遅れたら親が悲しむから、とにかく逃げるぞ」と思う。自らの命に自らが責任を持ち、家族が避難していることを信頼して一人で逃げる、これが防災教育における「てんでんこ」の意味だという。
【6月16日号】 特集は「震災復興財源知事アンケート」。東日本大震災の本格的な復興に向け、巨額の財源が必要となる中で、復興財源を賄うための増税への賛否について聞いた。「反対」と答えたのは9人、「どちらかと言えば反対」は6人で、およそ3割の知事が反対姿勢であることが分かった。望ましい財源については、復興目的に限定した「震災国債」を挙げたのが17人と最も多く、「消費税」としたのは、甚大な被害を受けた宮城県と、岡山県のみだった。消費税をめぐっては、政府の東日本大震災復興構想会議で増税分を復興財源に充てることが議論されている。これに対し、多くの知事が復興財源と社会保障財源との議論の区別を求めており、なし崩し的な増税への強い警戒感がうかがえる。
【6月14日号】 巻頭インタビュー「あすの教育」では、埼玉県の女性スクールカウンセラーから対応の方法や現状の問題点などを聞いた。この女性は、震災直後に避難所となったさいたまスーパーアリーナで子供たちの対応に当たって以来、今も各避難所でその対応を続ける臨床心理士の阿部利恵さん。阿部さんは「学校だからできること」がある、と指摘する。環境が違う中で頑張って適応しようとする子供たち。これから本格化するストレス症状に目配りするのが、大人の役割だ。もちろん、その大人もかなり疲れてきているが。避難してきた保護者との接し方にも配慮が必要と言う。
【6月17日号】 内外教育の最終面を飾る匿名筆者のコラム「ラウンジ」。今回は「入れ墨の女子転校生」。中学校長だろうと推定される筆者の苦闘と、それ以上であろう転校生の心の重い葛藤が行間ににじみ出る。荒れる中学校と指摘されてから、何年がたつのだろうか。日本の公教育とは、このコラムに表現されたような一抹の積み重ねなのだろう。ぜひ、一読をお願いしたい。
【6月14日号】 連載「進む営利法人の『福祉参入』」15回目は介護職員の給与水準がテーマ。各種調査の結果から、さまざまな介護サービスの人件費比率や収支差率などを点検する。「進言」では、消防当局と医療機関の連携で救急患者の〝たらい回し〟を防ぐ佐賀県の取り組みが紹介されている。東日本大震災は発生3カ月で行方不明者が「みなし死亡」となり、そうした関連情報を掲載。5月後期の「社説拝見」は、続く原発災害との闘いや新エネルギー政策、主婦年金問題などをめぐる各紙の主張をまとめた。
【6月17日号】 医療、介護、福祉を一体化させた「地域包括ケアシステム」の構築・推進に向けた基盤となる組織を、京都府が全国に先駆けて発足させた。その内容や設立に至った背景などを紹介。社会保険病院や厚生年金病院を存続させる法案が成立する見通しとなり、これまでの経緯を含めて掲載した。神奈川県の受動喫煙防止条例は施行1年で実態調査を行い、禁煙が義務付けられている施設のほとんどが対応済みとの結果が示された。
【6月14日号】 巻頭のフォーラムでは、政策研究大学院大学教授の福井秀夫氏が東日本大震災の復興対策に関連して「震災被害は誰が負担するのか」と題し、被災の負担のあり方について問題提起している。提案の一つとして、リスクに応じた保険料を前提とする強制加入保険の導入を挙げ、この保険制度によって、「負担の公正や、何よりも人命、財産を守るより安全な土地利用が実現できる」と指摘。その上で、「被害者救済は重要だが、痛みに応じた公正な扱いの原則を踏まえるべきである。また、救済が人々のリスクへの対処を鈍らせることでより甚大な被害を生み出す悪循環をもたらしてはならない」としている。
【6月17日号】 最終ページに掲載の「私の苦心」欄は、砺波税務署長、黒田榮治氏の「ピンチはチャンス」。税務歴35年、うち21年間を東京国税局査察部に勤務したという黒田氏。その駆け出しの査察官の頃の経験を紹介している(黒田氏によると、その経験は、映画「マルサの女」の中でも出ている)。
【6月13日号】 「日本は7〜9月期にプラス成長へ」と題する6月の景気動向と金融情勢に関する記事を掲載した。同記事は「原油価格が低下に向かったにもかかわらず、米国のガソリン価格の上昇が止まらない。デフレーターの上昇によって、実質個人消費の伸びは低い水準にとどまっている。米国の実質GDP(国内総生産)伸び率には下押し圧力がかかっている。一方、日本の実質GDP伸び率は7〜9月期からプラスとなる可能性が高い。2008年秋のリーマンショック後の景気回復を牽引してきた輸出と個人消費に今回多くは期待できず、設備投資と住宅投資が主役になる公算が大きい」としている。
【6月16日号】 「攻める小沢とかわす菅」と題して、東日本大震災以降の政治動向に付いてまとめた記事を載せた。同記事は「戦後最大級の惨事となった3・11東日本大震災から3カ月が経過したが、未だに明確な復旧・復興の見通しは立っていない。東北地方の沿岸部はほぼ壊滅状態にあり、阪神・淡路大震災の比ではない。まさに『国難』である。ところが、相変わらず永田町は『政局』の域から抜け出せないままでいる。先般提出された、菅内閣に対する不信任決議案は、3・11への対応を見極めた上で菅直人首相が退陣する意向を示したことにより、反対多数で否決。民主党から大量の造反者が出て党が分裂する事態は回避された。だが、菅は明確な退陣時期については語っておらず、場合によっては再び『お家騒動』が勃発する可能性もある。日々の政局の動向を細かく追うマスメディアの報道とは違った観点から、3・11後の永田町の動きを振り返り、今後の展開を可能な限り俯瞰してみたい」としている。