早読み行政誌

新任教師自殺の背景に何が?(2011年8月22日〜8月26日号)

地方行政

【8月22日号】 地方自治体に対する普通交付税の交付額などを示す「2011年度普通交付税大綱」が決まった。総額は前年度比3・4%増の16兆4193億円。社会保障費をはじめとする財政需要が増えるものの、税収がまだ本格的に回復していないことから、普通交付税は4年連続で増えた。普通交付税を受け取らなくても財政運営が可能な「不交付団体」は前年度の75団体から16減り、過去4番目に少ない59団体に落ち込んだ。交付税算定に当たっては、東日本大震災の被災自治体の財政運営に支障が出ないよう、阪神大震災の時と同様の特例措置を講じた。津波や福島第1原発事故に伴い、操業停止や移転を余儀なくされる企業が増えて税収減となることを考慮し、収入額を186億円低く見積もるなど、計205億円の特例措置を行った。

【8月25日号】 東日本大震災の被災地では、地域医療の復旧・復興が大きな課題となっている。津波で壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町では、唯一の公的医療機関だった志津川病院が建物ごと津波にのまれ全壊した。震災直後、同町には国内だけでなく海外からも医療チームが重点的に応援に入った。こうした支援を受け、4月には避難所となった総合体育館敷地内に仮設プレハブ小屋を活用して診療所を開設。6月には隣接する登米市の市立よねやま診療所の空き病棟を5年間無償で借り、医師3人と看護師30人の体制で志津川病院を改めて開設した。とはいえ、これらは応急的な対応にすぎない。プレハブ小屋は、壁に断熱材なども入っておらず、暑さや寒さがしのげない。今夏も7月中旬にエアコンが設置されるまでは、うだるような暑さの中で扇風機頼みの診察を強いられた。職員や患者らは誰もが「とてもじゃないが冬は越せない」と嘆く。

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内外教育

【8月26日号】 連載「モンスターペアレント論を超えて」51回は、新任教師の自殺にいたる背景にあった、力による指導の問題をあぶり出している。学級崩壊の現状に対し、同僚から教師としての力量を疑われた女性教師がいた。発端は問題の中心にいた児童の虐待を見破れず、発達障害にあると誤認したことだった。その背景にあった問題がもう一つ。学校全体でのバックアップが得られなかったことが、教師の死に結びついた。実例に基づく具体的なケースの提示は、読む者を100%納得させる。

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厚生福祉

【8月23日号】 学童保育の数が法制化13年で2倍強に増え、2万件を突破した。しかし、まだまだ不足しており基盤整備が必要という。全国協議会の調査結果を紹介。正式合意に達した子ども手当では、制度改正後の見通しも含む詳しい解説記事を掲載した。京都大のチームが、マウスの万能細胞を精子のもとの細胞に変える研究に成功、実際に精子に成熟させ受精・出産まで至っている。命に直結する生殖細胞を人為的に作り出すことは、不妊治療への応用に対する期待や、生命倫理上の問題もはらみ、論議を呼びそうだ。

【8月26日号】 児童虐待防止をテーマに開かれた特別区職員研究所のシンポジウムのもようを掲載。子どもの安全確保が最優先されるべきであることや、親への支援の必要性などが議論されている。第一生命経済研究所が高齢者の人づき合いに関する調査結果を発表、周囲の人とのきずなが薄らいできている実態が分かる。8月前期の「社説拝見」は、広島、長崎の原爆忌もふまえ、引き続き原発や核をめぐる論説が多い。このほか、子ども手当「廃止」をめぐっても各紙が論を展開している。

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税務経理

【8月23日号】 最終ページに掲載の「私の苦心」欄では、「未申告法人調査の奥深さ」と題し、静岡県沼津財務事務所の取り組みを紹介。同県では「県と市町村の法人関係税の共同調査ガイドライン」を作成し、未申告(未登録)法人調査を行っているが、2010年度には、京都府の取り組みを参考にして、「緊急雇用創出事業」を活用した未申告法人調査(12月から3月までの4カ月間、1人)を実施。「この事業の実施によって、雇用の創出と調査対象法人の捕捉ができたことで、一定の成果は上がったと考えている。今後は、捕捉した法人の事務所・事業所認定、未申告法人である場合の設置届の提出や申告納付の指導を行っていく」としている。

【8月26日号】 巻頭の「フォーラム」は、環境問題評論家の江澤誠氏が「エネルギー問題と政局」と題し、寄稿。「今年の広島・長崎の原爆の日は、東京電力福島第1原発事故という新たな出来事が重なり注目度も高くなった。原爆と原子力発電を意図的に分けようとする力は原子力発電が始まった時から働いているが、今日、日本の世論は両者の同根性に敏感になっていると言ってよい」などと指摘。最後に筆者は、「菅直人首相は原爆の日のあいさつで、核兵器廃絶に向けた日本国の意思に加えて、東電原発事故を踏まえて原子力に依存しないエネルギー政策を目指す考えも表明した。『ポスト菅』として挙げられる人たちは菅首相よりも原子力発電に親和的であるとされるところから、ねじれ国会下での民主党代表選は、政局の範囲を超え、日本と世界の資源・エネルギー政策に影響を与える構図となっている」と結んでいる。

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金融財政ビジネス

【8月18・22日合併号】 「挫折から復活への道筋を描く」と題して、中国経済学界の重要テーマの一つである東アジア通貨金融協力について分析した記事を掲載した。同記事は「世界金融危機への中国の戦略的な対応は(1)国際通貨体制改革(2)東アジア通貨金融協力(3)人民元の国際化──という3点セットだった。しかし、国際通貨体制改革も東アジア通貨金融協力も、中国の努力だけで実現できるものではない。これが、中国が自らの努力の余地が大きい人民元の国際化を進めてきたことの背景の一つである。しかし、東アジア通貨金融協力は、現在も中国経済学界の重要テーマの一つである。昨年の中国世界経済学会30周年記念大会における吉林大学の李暁教授の基調講演は『東アジア通貨金融協力はなぜ挫折したか』についてだった。本稿では、それをアップデートした日本語版(『国際金融』2011年7月号)を簡潔に紹介した上で、東アジア通貨金融協力の意味と今後の道筋を考察する」としている。

【8月25日号】 「途上国での著作権の知識普及が課題」と題し、知的財産権について連続インタビューする「IPフロントランナー」の第11回として、日本知財学会の軽部征夫会長に登場していただいた。同記事は「日本知財学会の軽部征夫会長(東京工科大学学長)は同学会にとって最も関心のあるテーマとして、コンテンツの創造とその活用に際しての問題解決を挙げた。軽部会長は『(コンテンツに必要な)著作権の侵害は日常的に発生しているとも考えられる』と指摘。『日本の映画がそのままビデオ(カメラ)で撮影されて、DVDに焼かれ、二束三文で売られてしまう』ような事態に対して、著作権が存在し、コピーなどをしてはいけないということを『共通の常識』として開発途上国にきちんと分かってもらうことが学会に課せられた課題である、と強調した。また、企業や学者、弁護士など多くのメンバーを抱える学会の重要な役割について軽部会長は『政府に対して積極的に政策提言することである』として、今後もこうした活動に力を入れていく姿勢を明らかにした」としている。

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