早読み行政誌

「まんべくん」炎上の教訓(2011年9月5日〜9月9日号)

地方行政

【9月5日号】 連載「自治体の防災危機管理」の第32回は、東日本大震災の被災地、宮城県気仙沼市の佐藤健一危機管理課長のインタビュー。気仙沼市は東日本大震災以前から熱心に防災に取り組んできた。にもかかわらず、今回の津波では多くの人が亡くなったり行方不明になったりした。佐藤課長は「訓練しても逃げなかった人は、高をくくっていたのかもしれない」と言い、その要因の一つとして市が作成した津波のシミュレーションCG(コンピューターグラフィックス)について触れた。そのCGにはあえて人間を入れず、また建物が壊れるシーンもない。「自分の家が壊れる映像は嫌でしょうから、気を使って弱めのCGにした」というのだ。佐藤課長は「それで事前研修をしてしまいました。そうすべきではなかったと、今では思います。もっとリアリティーのあるものを作ればよかった」と悔やむ。

【9月8日号】 連載「ソーシャルメディアの活用」の第7回は、北海道長万部町の「まんべくん事件」を取り上げている。同町のゆるキャラ「まんべくん」がツイッターに書き込んだ侵略戦争発言をめぐって苦情が相次ぎ、町がこのツイッターを中止し、まんべくんとして書き込みをしていた同町出身の男性への業務委託を取りやめたという騒動だ。ツイッターの運用を事業者に任せれば、爆発的な人気を呼ぶことができるかもしれない。問題があれば、契約を解除してしまえばいい。しかし、自治体のその行為自体が批判の対象となり、結果的にマイナスイメージだけが残る恐れもある。そこで、ツイッターを利用するに当たって、「目的」の設定が重要になる。「知名度向上」が目的であれば、炎上マーケティングなどあらゆる手を使って注目を集めればいい。まんべくんは、立派にその役割を果たしたといえる。しかし、「好感度向上」が目的であれば、やり方は変わってくる。フォロワー数やメディアの露出度を競うよりも、ゆるやかな温かいつながりをつくるコミュニケーションが必要だ。

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内外教育

【9月9日号】 大阪府の橋下徹知事が率いる地域政党「大阪維新の会」が、教育行政への政治関与を盛り込んだ「教育基本条例案」を9月定例議会に提出する。法的問題を検証した。学校法務の案内役となってきた「教育法規あらかると」欄を30年以上にわたって担当している菱村幸彦さんが執筆者。菱村さんは6つの観点から検討。条例は法律の範囲内で制定することを憲法は要請している。この基本的視点の上での検討だが、結論は「法的に疑問のある条例」だった。

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厚生福祉

【9月6日号】 相次ぐ児童虐待死。8月には里親里子関係の中での虐待死事件も明らかになった。児童虐待問題に長年携わり、自らも里子を育てた経験のある津崎哲郎・京都花園大特任教授に、虐待増加の背景や里親制度の課題、行政のあり方などを尋ねた。親族による里親の拡大や、児童相談所は「権限型」、市町村は「支援型」という行政の関わり方の役割分担の必要性を述べている。実親に育てられない子が増える中、東京都は児童養護施設などの退所者を対象とする初のアンケート調査を実施した。就労や生活に関する厳しい実態が浮かび上がる。任を終えた細川律夫前厚生労働相の記者会見内容も掲載。

【9月9日号】 「シリーズ・公立病院の経営改善」と題し、まず三重県・松阪市民病院の黒字化の経緯を、総合企画室副室長の世古口務氏に語ってもらった。職員全員のほんの少しの意識改革が重要と説く。救急患者の受け入れをいくつもの病院に断られ搬送が遅れるケースが後を絶たない中、「インタビュールーム」では、6月にそうした事例があったばかりの富山県・小林秀幸厚生部次長に、課題や行政の対応について尋ねている。8月後期の「社説拝見」は、「原子力安全庁は環境省外局に」と題し、同庁の発足が決まったことや、岩手県陸前高田市の被災松をめぐる騒動などに関する各紙の論調を紹介する。

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税務経理

【9月6日号】 巻頭の「フォーラム」は、東京大学名誉教授の神野直彦氏が「改革の流れを見間違うな」と題して、寄稿。「改革では方向性を付与することが重要である」と指摘した上で、「社会保障・税一体改革は、日本の社会の基本的方向を示す改革であり、従って、改革の方向性を見間違えると日本社会そのものが迷路に迷い込んでしまう」と強調。一体改革成案が「旧来型の年金・高齢者医療・介護の高齢者3経費という社会保険の財源確保が中心となっている」ことに懸念を示し、「歴史の流れを逆流させると、日本の社会に大きな混乱の渦が生じる。この渦が大震災に、経済危機を巻き込んで膨張すれば、日本社会は破局へと流れ込んでしまう」と警告している。

【9月9日号】 最終ページ掲載の「私の苦心」欄では、「収納率向上へ毅然たる取り組み」と題し、千葉県市川市の滞納額削減に向けた取り組みを紹介。それによると、徴収一元化の一環として、債権管理課を設置し、高額・困難事案に対する体制強化を図るとともに、税の公平性の確保に向け、より一層の滞納額削減に向けた専門的な滞納整理への取り組みを開始。2010年度には、収納率のアップとともに、特に税に優先する抵当権が付いている差し押さえ不動産の任意売却時の一部納付による差し押さえ解除を禁止したことで、約40件の事案完結に結び付き、1億3700万円の税収確保につながったとしている。

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金融財政ビジネス

【9月5日号】 「復旧・復興で景気回復続く」と題して、今後の日本経済の動向について分析した記事を掲載した。同記事は「2012年4〜6月期に向け、企業主導の復旧(設備投資)と政府主導の復旧・復興(政府消費と公共投資)が日本の景気をサポートすることになろう。その間に日本の成長率が先進国でトップクラスとなる可能性もある。なお、東日本大震災後の鉱工業生産を見ると、『復活組』には加工業種、『出遅れ組』には素材業種が多い。これは、11年度第1次補正予算における公共投資関連支出が出遅れている可能性を示唆している。逆に言えば、景気動向の観点からは第1次補正予算でさえこれからのテーマ、ということだ。00年代以降の物価には(1)需給ギャップとの連動性の弱まり(2)為替との連動性の強まり─という二つの特徴が見て取れる。これは、日本がデフレ脱却を図る際の政策対象として、需給ギャップに加えて為替の位置付けを高める必要があることを物語っている」としている。

【9月8日号】 「戦略的な復興事業推進が鍵」と題し、内閣府の「経済財政の中長期試算」改訂版などを基に、今後の財政問題に関する解説記事を掲載した。同記事は「野田新政権が誕生し、多くの課題を抱えての船出となる中、3月11日の東日本大震災で被災した地域を未来に向かってどうつくり変えるかというビジョンと、それを具体化させる有効なアイデアを積み上げていくことが、日本の将来にとって極めて重要であると筆者は考える。すなわち、復興のための増税ができるかどうかは、景気を支え、経済成長を促すような復興事業を戦略的に進められるかどうかで決まってくる。『復興増税ができるかどうかは景気次第』『復興増税は景気を悪化させる』というのでは知恵がない。被災地の復興はこれからであり、息の長い課題である。官民の財源を組み合わせて、どんな戦略的復興を進めるかこそが肝心だろう」としている。

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