早読み行政誌

「釜石の奇跡」生徒はこうして助かった!(2011年9月12日〜9月16日号)

地方行政

【9月12日号】 連載「自治体の防災危機管理」の33回目は「いのちを守る耐震」。地震直後に人が亡くなるのは、主に建物破壊、火災、津波の三つが原因。その中で、最も早い時期に人が亡くなるのは建物の下敷きになった場合だ。阪神・淡路大震災では、地震直後に建物等の下敷きになって命を落とした約5500人のうち8割以上は建物破壊等による窒息死・圧死などで、しかも、死者の9割以上は地震発生から15分以内に亡くなっている。建物の下敷きになって脱出できなければ、火災や津波から逃げることもできない。そういう意味では、耐震化により人が建物の下敷きにならないようにすることが、地震から人命を守るための中核的な対策になる。あらゆる地震対策の中で、最も緊急で重要なのが地震に弱い建物の耐震化だ。

【9月15日号】 連載「ソーシャルメディアの活用」の最終回は、これまで書いてきたツイッターとフェイスブック以外のソーシャルメディアも交えて、自治体のソーシャルメディア活用の今後について考察した。例えば「グーグル+」は、情報収集に適しており、普段からネット上で情報収集に時間をかけている人や、チャットを使っている人にとっては、アクセスする場所を一元化することができて便利だという。また、「リンクトイン」はビジネスに特化したソーシャルメディアで、ここでは自分をアピールし、ビジネスチャンスを見つけることができるという。自治体が活用するならば、まちづくりやICT(情報通信技術)の推進などを担う地域の人材を発掘するといった使い方ができるかもしれない。日本語化により、どの程度、利用率が高まるか、今後の動向に注目したい。

地方行政表紙 地方行政とは

内外教育

【9月13日号】 学会開催のシーズンを迎えている。日本教育学会の最終日には「人生前半の社会保障」として教育予算の拡充を提唱する広井良典千葉大学教授らが登壇してシンポジウムが開催された。格差を是正して定常型社会(経済成長を前提としない社会)を実現させるためには、教育政策と社会保障政策を統合して社会保障を「人生前半」にも振り向ける必要を、同教授は主張した。面白いのは、このシンポに菅直人前首相の長男源太郎氏とともに若者政策を説く千葉県松戸市の高橋亮平政策推進研究室長も参加。シルバーデモクラシーに対するユースデモクラシーの構築を提言していることだ。教育を学校の中だけで考えるのはもうやめよう、というメッセージだったのだろうか。

【9月16日号】 防災を専門学科として掲げる全国唯一の学校、兵庫県立舞子高校が設立10年目を迎え、県内外の中高校生らを招き「防災教育全国交流大会」を開いた。その模様を特集した。小中学生を極めて少ない被害にとどめた「釜石の奇跡」。奇跡の原動力となった岩手県釜石市立釜石東中学校など17校が招かれた。やはり、釜石東中学の「想定外」を超えた準備がきらりと輝く。ステレオタイプに陥りがちな防災教育に、人と人のつながりでつくるきめ細かい「セーフティネット」の大切さを「釜石の奇跡」は示唆している。

内外教育表紙 地方行政とは

厚生福祉

【9月13日号】 急速に普及しつつあるスマートフォン(多機能携帯電話)を、町中での障害者や高齢者の見守りサービスに活用する実証実験が東京都青梅市で行われた。その模様を紹介しながら、実用の可能性や課題を探る。東日本大震災の被災地で「災害支援ナース」現地コーディネーターとして活動した石井美恵子氏は、救急看護を専門とし、海外での災害救援活動にも多く携わる。活動を通じて見えてきた災害時における医療・福祉の危機管理の在り方について、2回にわたり寄稿してもらった。1回目は実際の活動の様子を報告、避難所によって異なる実態と課題がよく分かる。「地域を支える」は、伴侶を亡くした高齢者に不足しがちな「栄養」「人的つながり」を提供しようというユニークなカフェの取り組みを紹介。

【9月16日号】 災害支援ナース現地コーディネーター・石井美恵子氏の寄稿2回目は活動を踏まえての提言で、避難所の在り方や人材育成の必要性などに言及。海外を含む多くの経験に裏打ちされた内容には説得力がある。連載「進む営利法人の『福祉参入』」25回目は、訪問介護と訪問入浴介護のスケールメリットについて考察する。「インタビュールーム」は、デンマークの高齢者福祉を参考に、「我が家を終のすみかに」を目指して活動する滋賀県のNPO法人「ゆうらいふ」理事長。

厚生福祉表紙 地方行政とは

税務経理

【9月13日号】 巻頭の「フォーラム」は、一橋大学名誉教授の石弘光氏が「政府税調の新旧」と題して、寄稿。野田政権の当面の最大課題となっている東日本大震災の復興財源を賄う臨時増税問題。政府税制調査会の審議が本格化しているが、筆者は、幾つもの欠点が指摘された、自民党税調と並存した旧政府税調と比較しつつ、「じっくり腰を据え、中長期的な視点から将来の税制を検討するといった発想がなく、従って、税制のあるべき姿を議論するとき必要な理論的なフレームもなく、規範的な基準もない」などと指摘。「これでは旧政府税調の頃のように、検討結果を広く国民に提供し議論を巻き起こすという段取りにさえなり得ない。世界的な財政再建の必要が叫ばれ、そして高齢社会の下での社会保障財源、さらには大震災の復興財源の確保と、今や税制の出番なのだ。それなのにこの体たらくでは、日本のために誠に心配である」と結んでいる。

【9月16日号】 税制をめぐる意見などを載せる「直言苦言」欄では、「カネに色はついていないのだから」と題し、見直しが決まった子ども手当など、「使途」を限定しない現金給付の問題などを取り上げた投稿を紹介。「一見、救済の切り札に思えるが、世間でよくいう、カネには色がついていないこと、つまり、経済学上の価値形態から派生する問題を抱えている。給付とは逆の税金、中でも徴収の分野で、同じようなことが問題になる」と指摘。「長引く不況で、滞納事例は増える一方。もっとも、地方税の滞納整理業務も様変わりしてきている。国税の気勢を制するような差し押さえの手段を講じる自治体も目立ってきている。地方税収の確保は、地方独自で行うのが筋。新政権が、国と地方が対等である地方主権を目指すのなら、なおさらのことで、国税とのフェアな競争は推進していくべきではないか」と奮起を促している。

税務経理表紙 地方行政とは

金融財政ビジネス

【9月12日号】 「日米経済に下押し圧力」と題して、9月の景気動向と金融情勢に関する記事を掲載した。同記事は「2011年上半期の米経済は、個人消費の低迷で大きく減速した。世界景気の減速を背景に輸出の伸びが縮小傾向をたどり始め、企業の景況感も悪化に向かっている。11年の成長率はかなり低いものにとどまろう。一方、日本の7〜9月期の成長率においては外需が大幅なプラス寄与に転じる見通しとなっていることなどから、4四半期ぶりにプラスとなることがほぼ確実な情勢だ。ただし、その先は世界景気の減速を背景に、輸出の伸びは失速し、高い成長率が続くことは期待しにくい」としている。

【9月15日号】 「対応迫られる企業経営」と題し、円高下の日本経済について分析した記事を載せた。同記事は「為替レートがどのように決まるかについては、既に様々なモデルが考えられ、いろいろな説明がなされてきた。長期的には貿易財についての購買力平価が影響しており、中期的には金利差も変動要因となり、さらにより短期ではランダムに動いているという整理もなされている。このように、為替レートには様々な要因が影響を与えており、その中には、先行きの金融経済状況に対する期待の在り方によって瞬時に大きく変化する金利差も含まれる。極めて多数の参加者が毎日膨大な取引を行っている今日の国際市場において、そこで形成される期待を自在に操作するのは決して容易なことではない。こうしたこともあり、当局が効果的な対応策を打ち出すのもなかなか難しいようだ。従って、日々、事業を継続していかなければならない企業にしてみれば、過去に見られたような為替レートの大幅な変動がこれからも繰り返されていく可能性があると覚悟せざるを得ない。その上で、ビジネスの計画を作るに当たって、為替レートが円高・円安双方に振れた場合の代替計画をあらかじめ持っていないといけないようだ」としている。

金融財政ビジネス表紙 地方行政とは