早読み行政誌

大阪の「教育基本条例」を考える(2011年10月17日〜10月21日号)

地方行政

【10月17日号】 環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加問題をめぐる政府・民主党内の議論が本格化している。野田佳彦首相は、11月にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに結論を出したい考えだ。しかし、TPPに参加すれば、高関税に守られてきた日本の農業は大きな打撃を受けるとみられる。党内だけでなく閣僚の間でも賛否両論があり、調整は難航しそうだ。菅前首相はTPP参加を「平成の開国」と表現し、実現に意欲を示していたが、その後は指導力を発揮できないまま退陣した。APECまで1カ月を切り、残された時間も少ない中で、今度は野田首相の指導力が試される。(内政フォーカス)

【10月20日号】 大阪府の地域政党「大阪維新の会」は9月21日、府議会に職員基本条例案と教育基本条例案を提出した。人事制度の明確化や、教育行政に対する知事の権限強化が狙いで、職員の処分基準や人事評価の枠組みなどを規定している。このうち処分基準では、同じ内容の職務命令に3回違反したり、組織の合理化で余剰人員が発生したりした場合は分限免職の対象になると定めた。加えて教育基本条例案には、教育委員が同条例案に基づく職責を果たしていないと判断すれば、知事が議会の同意を得て罷免できるとの規定も盛り込んだ。両条例案をめぐっては、府庁内だけでなく府議会内でも批判的な声が上がっている。自民党府議団は職員基本条例案に対し、「違法性の疑いがあるとも思われる」(宗清皇一政調会長)と問題視。民主党・無所属ネット府議団は両条例案とも「法的問題点が多く、どこから見ても課題が多い」(冨田健治政調会長)との見解を示す。府議会で過半数を占める維新の会は、決着を急がずに「徹底的に議論する」方針だ。(特集「維新の会が2条例案」)

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内外教育

【10月18日号】 今年の学力テストは中止だったはず。教育現場にいる人たちの中にもそう勘違いしている方もいるかもしれない。学年初めの4月に実施している恒例の全国学力テストは、東日本大震災のため、文部科学省は確かに一度は中止を発表した。しかし、継続的に実施を求める声が寄せられ、既に作成済みだった問題を希望校に配布する形で、9月27日から10月17日までに実施された。文科省は全国集計をしないが、北海道や石川、福岡など10道県の教育委員会は正式調査として活用、採点結果を集計する。小学校6年の国語と算数、中学校3年の国語と数学の出題分析を掲載した。問題と正答例が付録された。

【10月21日号】 橋下徹大阪府知事を代表とする地域政党「大阪維新の会」は、11月の堺市議会に教育委員会への政治介入を盛り込んだ教育基本条例案を提出する。維新の会が大阪府議会、大阪市議会に提起するのと同様の内容だ。冒頭インタビュー「教育長はこう考える」に登場するのは、堺市の芝村巧教育長。芝村教育長はこの条例案に懸念を示す。条例案では、教員を必ず一定の割合で5段階評価する。「優れた先生が少しいて、劣る先生が少しいるというように、一定の数を念頭に置いて人をみるというのは、教育の世界になじまない」。教育行政の本質を考えるときに来ている。

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厚生福祉

【10月18日号】 東日本大震災から半年を契機に、大災害時に高齢者ら「災害弱者」の被害を最小にするにはどうしたらよいかを考えるシンポジウムが佐賀大学で開かれた。「阪神」「東日本」の経験に基づく専門家の提言内容など紹介する。「地域を支える」は、不登校や引きこもりなどの若者と家族の総合支援に取り組む長崎市のNPO。9月後期の「社説拝見」は、「野田首相、国連で原子力を語る」と題し、原子力安全をめぐる国連総会での首相の演説のほか、敬老の日、年金改革などをめぐる各紙の論調を取り上げた。

【10月21日号】 大学病院の卒後臨床研修先の人気ランキングで、和歌山県立医大が都心部の大学や旧帝大に混じって地方大学で唯一ランクインした。その人気の秘訣を伝える特集「『研修医本位』の卒後臨床研修プログラムが人気」は、他の地方大学にも示唆を与える内容だ。連載「12年度介護報酬改定の焦点」3回目は、改正介護保険法の柱ともいえる24時間対応の定期巡回・随時対応サービスについて、導入の背景や今後の見通し、介護報酬改定をめぐる議論の内容などをまとめた。「インタビュールーム」は、心疾患の救急搬送時間を短縮するための堺市立堺病院循環器内科の取り組みを紹介する。

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税務経理

【10月18日号】 最終ページ掲載の「私の苦心」欄では、「『連携』による歳入確保」と題して、群馬県の取り組みを紹介。同県では、2011年度から税務課に「個人県民税徴収対策主監」を設置し、徴収対策に特化した取り組みを県内全域で実施している。業務のキーワードとして「連携」を掲げ、「お互いの努力を尊重し、歳入確保という目的を共有し、協働で各種施策を実施することで相乗効果を高める」ことと定義付け、「合同滞納整理」「不動産の合同公売」などを行っている。さらに「市町村と県の役割を明確にし、体制整備等についても協力することで、税収確保のための、効果的で効率的な連携が継続できる」としている。

【10月21日号】 巻頭の「フォーラム」では、経済評論家の柳沢勝氏が「財政規律の維持」と題して寄稿。世界経済の現状について、「膨大な財政赤字を埋めた公債は累積的に積み上がり、市場から国債償還を強く迫られ、財政破綻が懸念される国まで出てきた。非常時の財政金融緩和と長期的な財政規律の両立を図る、という難問が世界先進国の共通課題になっている」とした上で、「財政危機・金融危機・信用不安が懸念される欧米経済では、国債に対する市場の信認を維持できるか否かに将来がかかっている」と分析。日本については「デフレに歴史的円高が継続し、そこに東日本大震災、福島原発事故が直撃した。まさに日本は非常事態に直面している。それ故、非常時にふさわしい財政金融政策が要求される」と指摘し、「震災復興事業は、国内民間投資需要を誘発する意味のある財政支出であり、一層の金融緩和と併せて成長軌道への回復が期待される」としている。

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金融財政ビジネス

【10月17日号】 「震災復旧背景に持ち直しの動き」と題して、最近発表された経済指標に加え、スポーツや芸能などに関する身近データを基に日本経済の先行きについて分析した記事を掲載した。同記事は「東日本大震災による日本の景気の落ち込みは一時的なものにとどまり、サプライチェーン(部品供給網)の復旧などを背景に足元まで持ち直してきている。そのことは、最近までの鉱工業生産指数、景気動向指数、日銀企業短期経済観測調査(短観)などの主要指標で確認できる。また、11月14日に発表される7〜9月期の実質GDP(国内総生産)は前期比年率5%台の高成長になると予測される。しかし、世界経済は欧州債務問題、米国の雇用問題、新興国の成長減速などを背景に、先行き不透明感が一段と強まっている。超円高の長期間の継続により、日本経済の空洞化懸念なども高まっている。先行きは、こうした悪材料と復興需要などの下支えを受けた国内景気の底堅さとの綱引きになろう。身近なデータを見る限りでは、下支え要因になりそうなものが多い」としている。

【10月20日号】 「国際的に注目されるGNH理念」と題し、今月中旬、国王の結婚式の様子が報じられたブータンの現状などを紹介する記事を載せた。同記事は「ヒマラヤの南に位置する小さな王国・ブータンから、ジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク現国王の結婚式を祝賀する国民の姿がメディアによって伝えられた。国王の父、ジグメ・シンゲ・ワンチュク前国王の主導で、国政改革や制憲作業などの民主化プロセスが進み、2008年に立憲君主制となった。そして、初の議会制民主主義により議会の多数党から首相が選出された。ブータン政府が提唱し、国際的にも大きな関心を集めている開発指標が『国民総幸福度(Gross National Happiness、GNH)』である。『国民誰もが幸せに暮らすことができるようにする』ことを国家の最大の責務と規定、欧米や日本を中心とする国内総生産(GDP)優先の政治経済運営に対して大きな疑問を投じた。今や、世界各地でGNHの理念を導入した地方自治体の運営が行われており、さらに今年9月には国連がGNHを『新しい開発指標』として認めている。ブータンは、外国人観光客の入国や欧米文化の流入に対して規制を続けてきたが、インターネットや衛星放送が導入され、若者たちの生活面の変化は著しい。また、第3次産業を中心とする経済成長の中で所得格差は拡大し、国外へ流出した10万人以上のネパール系ブータン難民の問題は解決の見通しがなく、課題も多い」としている。

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