【10月24日号】 第45回全国社会福祉事業団大会で、福島県社会福祉事業団の「福島県浪江ひまわり荘」(救護施設)の佐山嘉津子氏から、福島第1原発事故による放射能汚染地から利用者と共に緊急避難した様子が報告された。3月11日の地震発生時は機械浴中の利用者もおり、裸のままストレッチャーに乗った状態で激しい揺れに遭った。大きな浴槽の水が激しく波立った。停電、断水、通信網とライフラインが寸断され、利用者にはまず暖をとるために防寒着を着用してもらう。トイレについては、浴槽の水を大きなバケツに入れてトイレの前に置き、その都度利用した。水を流す回数や量を考え、女子トイレでは排尿で使用したトイレットペーパーは流さずにゴミとしてまとめたりもした。13日午後9時、近隣の山林で火災が発生し、同10分に避難を開始した。同原発1号機が12日午後に水素爆発を起こしたことは知っていたが、この時は「ひまわり荘に火災が延焼しては大変。早くここから少しでも遠くに逃げなくては」との思いが強く、目に見えない放射線のことはほとんど頭になかったという。(連載「自治体の防災危機管理」)
【10月27日号】 各地で農産物や魚介類の加工所・直売所、農家レストランなどを創設して、食品を売り出そうという話が持ち上がっている。だが、その前にぜひやってもらいたいことがある。地域の食材の調査と料理の試食である。地方では特定の農産物、魚介類を中央市場に出荷するという流れが戦後から築き上げられた。しかもよく食べられる品目をたくさん栽培し、市場に出すというシステムになっているため、おのずと大量に流通させることを目的とした加工になってしまう。例えば、トマトは各地で生産されている。余っているトマトでジュースを売り出そうということになりがちだ。しかし、ジュース類はどこでも作られている。しかも、大手メーカーのものに比べると単価が高くなり、価格面からも販売に打って出るのは至難のわざである。まずは実際に料理をして、みんなで試食をすることである。そうすれば、この食材がどんな食べ方があるのか、どの品種はどんな味でどんな料理に向いているか、地域のどんな産物と組み合わせたら個性的なものが生まれるか、などが分かる。(連載「地域力と地域創造」)
【10月25日号】 府立高各校の教育目標は知事がつくる。教員の勤務状況をトップと最下位層をそれぞれ5%に振り分け、校長が相対評価する。露骨な政治介入とあまりに粗雑な人事評価制度。大阪維新の会が提出した大阪府教育基本条例案だ。どう考えるのか。評価以前と切り捨てるのは簡単だが、広田照幸日本大学文理学部教授に聞いた。教授の切り返しが巧みだった。明治維新で教育勅語はなぜ法律化されず、勅語という形になったのか。当時の法制局長官井上毅が「徳目を法律に書き込むのは近代国家の原則に外れる」と主張したからだ。戦後も1947年に教育基本法を制定する時に教育の目的を書き込むことで大激論を展開した。「教育の政治的中立性」。原点をもう一度見直したい。
【10月25日号】 6月に改正介護保険法が成立し、来年度のスタートに向けて制度の具体化作業が進められている。新サービスの一つ、小規模多機能型居宅介護と訪問看護の「複合型サービス」にスポットを当てた「在宅療養を支えるために(上) 介護と看護、生活圏で一体的に」は、制度創設までの経緯や、日本看護協会によるモデル事業の内容などを解説。まだそれほど話題になっていないが注目されるサービスだ。厚生労働省が2000〜10年度の健康づくり目標を定めた「健康日本21」の最終評価が発表され、42%の項目で改善が見られたものの目標達成した項目は17%にとどまることが明らかになった。主な項目の一覧表と併せて掲載。「地域を支える」は原発を多く抱える福井県で、「被ばく医療に強い医師」を養成する福井大学の取り組みを紹介する。
【10月28日号】 連載「12年度介護報酬改定の焦点」4回目は、引き続き「定期巡回・随時対応サービス」がテーマ。介護報酬の額をめぐり、社会保障審議会介護給付費分科会に厚生労働省が示したたたき台の内容と活発な議論の様子を紹介し、見通しを探る。「インタビュールーム」は、自殺率の高い秋田県で、自殺で大切な人を亡くした遺族のサポートを行う民間団体を紹介、遺族支援における重要な点などが述べられている。遺族支援は自殺対策基本法の中にも盛り込まれているが、周囲の理解不足もあって取り残されている面が否めず、民間の力が重要となってくる。
【10月25日号】 巻頭の「フォーラム」は、慶応大法学部教授の片山善博氏が、前内閣で総務相を務めていた3月に発生した東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴う本格復興予算編成に関連し、「増税なくして復興なし?」と題して寄稿。鳥取県知事1期目の2000年10月に鳥取県西部地震を経験しているだけに「復興予算は、被災自治体が地域の復興計画を作る際の指針あるいは裏付けとなるものだから、国はできるだけ早くこの予算を通じて自治体に対し新しい支援策の全貌を示してあげなければならない。それが明らかにならなければ、自治体は自信を持って住民との協議に入ることさえできない」とし、さらに、「今日まで延々と続く増税論議である。増税プランが明確に定まらなければ、復興予算は組まない。被災地の復興のことなど二の次で、増税のことで頭の中がいっぱいのごとくである。」とばっさり。最後に「これでは、重篤な救急患者が病院に担ぎ込まれても家族が治療費の返済プランを持ってくるまで患者を玄関で待たせておくようなもので、そんな病院がどこにあるか。そう皮肉ったら、米国にいくらでもありますよ、と耳打ちしてくれた閣僚がいた。日本国政府がかくも非道な病院であっていいはずがないのだが」と締めくくっている。
【10月28日号】 前25日号との2回連載で、主要各省の「2012年度税制改正要望」を特集。抜本改正を盛り込んだ11年度税制改正法案の主要部分は依然成立していない状態だが、12年度改正要望では、04年度税制改正で廃止された老年者控除の復活や石油化学製品に使われるナフサの免税恒久化、自動車産業を支えるため自動車取得税や自動車重量税の廃止、エコカーに対する自動車税優遇措置の強化、エコカー減税の延長、たばこ税の増税などが盛り込まれている。
【10月24日号】 「IFRS─こんな会計を信用できるか」と題して、国際会計基準をめぐる最近の動向についてまとめた記事を掲載した。同記事は「世界の会計基準は、ロンドンに本拠を置く国際会計基準審議会(IASB)と米コネティカット州ノーウォークにある米財務会計基準審議会(FASB)との2者協議によって決められてきた。その根拠は、2002年にIASBとFASBの間で結ばれた『ノーウォーク合意』にあるという。すなわち、米国で採用されている基準と欧州で拡大している国際会計基準(IFRS・IAS)を収斂(コンバージェンス)させ、それを採用するということである。『意見の食い違いの調整を、他国を含めた3者間で行うことの困難さを考え、IASBとFASBの2者の間だけで議論を行う』わけだ。『開いた口がふさがらない』とは、このことを指すのではないか。『国際的にはまとまらないと分かっている話をIASBとFASBでまとめるから他の国はそれに従え』ということである。英米両国の利害が、世界各国と一致するとはとても考えにくい。『英米で決めたから、後は各国ともその決定に従え』と言われて、各国がその通りにするとでも考えているのだろうか。これはいわば、英米の傲慢な態度と言えるものであり、以下に述べるように、両国が決めて世界に押し付ける会計基準には不可解な点が多い。こんな会計を信用できるだろうか」としている。
【10月27日号】 「期待される『新たな日本的経営』と題し、グローバルな競争環境の中で日本企業が行っている人材育成などについて解説した記事を載せた。同記事は「日本では景気の低迷が続き、政治にも期待しにくい面があるが、グローバルな展開を志向する日本企業において、特に人事面の対応でこれまでにはないダイナミックな変革の動きが足元で生じている。例えば(1)若手社員の海外への早期派遣拡充や徹底化(2)英語力のより一層の重視(3)人事評価・管理、幹部候補の育成・登用に関する、高度外国人材も含めた内外一体の統一的な制度づくりと運用──である。さらに、政府レベルでも関係閣僚をメンバーとする『グローバル人材育成推進会議』で検討が進められており、今年6月にはその中間まとめが公表されている。このように、国内の各方面で『グローバル人材』に関する具体的な取り組みが進んでいるが、筆者はその中核となり最大の原動力となるのはやはり企業セクターであると考えている。そして、先進的な企業の戦略的な取り組みが他の企業に波及し、それが政府の関与や支援の在り方、学校や家庭の教育に大きな影響を与え、ひいてはわが国の社会の変革にもつながると考える。以上の問題意識を踏まえて、グローバルな競争環境とその変化に挑む企業の人材面での対応に焦点を当てる。加えて、日本的な経営システムの特質を生かした新たな経営の在り方についても私見を述べることとしたい」としている。