早読み行政誌

養護施設を“卒業”した若者を支援する (2011年12月5日〜12月9日号)

地方行政

【12月5日号】 無料で利用できる公共施設の利用者の満足度、利用頻度が低下し続けている。「民間企業の安価な有料サービス」が台頭する一方で、公共施設の利用者サービスの質は旧態依然のままだからだ。その典型例が図書館。無料で本や音楽CDを借りることができる図書館は一見、市民の満足度、利用頻度が非常に高いように見えるが、全くそうではない。本と音楽CDの流通構造はこの数年で激変し、それに伴い市民の利用形態も当然変わる。しかし、図書館の本や音楽CDの利用システムを社会情勢に合わせて変化させる自治体はほとんどない。図書館で人気の高い本を借りようとすれば予約が殺到していて、半年待ちということも珍しくない。半年も悠長に待てない多くの市民は、図書館を利用しないで自費で購入することになる。(月曜連載「施策や施設をつくる前に『顧客を創る』地域再生」)

【12月8日号】 政府主催の全国知事会議が11月21日、首相官邸で開催された。野田佳彦首相は、東日本大震災やそれに伴う東京電力福島第1原発事故について「一日も早い復興と原発事故収束は、野田内閣にとって最大かつ最優先の課題だ」と述べ、着実に対策を実施していく考えを表明した。また、地方側が推進を求める地域主権改革については「内閣の重要課題の一つ」とし、国の出先機関廃止に向け「最大限の努力をする」と改めて強調した。一方、新しい子ども向け手当や社会保障と税の一体改革に関しては「国と地方の協議の場で議論したい」と述べるにとどめ、踏み込んだ言及はなかった。さらに、先のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、首相が環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に向け関係国との協議入りを表明した問題では、高橋はるみ北海道知事が「農業界、労働界、経済団体などオール北海道で反対の立場だ」と主張。首相は「最終的に国益に沿ってどう結論を出すかというプロセスになる」と理解を求めた。(特集「政府主催の全国知事会議詳報」)

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内外教育

【12月6日号】 東京学芸大附属大泉小学校は1969年に国公立小学校で初めて「海外子女教育学級」を設置し、海外から転校してきた児童の学習活動を支援してきた。今は「国際学級」と位置付け、外国人児童も含めて受け入れている。グローバル社会で生きる力をどう育むのか。一般学級の児童とも交流しながら、互いの存在を認め合い、高め合う関係をベテラン教師がリポートした。

【12月9日号】 人間には「性(さが)」という捨てられないものがあるらしい。教師の性とは何だろうか。長期連載「モンスター・ペレント論を超えて—普通の教師が生きる学校—」は、その性のようなものを示した。「どこかで最後は優位のままで終わりたい感覚」が教師にはあるらしい。保護者とトラブルになったとき、「話がまとまりかけたにもかかわらず、余計なひとことで事態を降り出しに戻してしまう場合もある」というのだ。筆者の小野田正利・大阪大学大学院教授は「状況の中で、相手の保護者に51、自分たちは49で収めることも大事」と指摘する。

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厚生福祉

【12月6日号】 連載「12年度介護報酬改定の焦点」8回目は、新たに導入される小規模多機能型居宅介護と訪問看護の複合型サービスに焦点を当てる。介護給付費分科会での議論などに基づき、小規模多機能、訪問看護それぞれの現状や新サービスの狙いなどを解説する。「地域を支える」では、児童養護施設を退所した後の若者をサポートする山形市のNPO法人を紹介。新たな生活の中で家族の援助がなく孤立したり、生活の困難に直面したりしがちな退所者を、多面的に支援する重要な取り組みだ。

【12月9日号】 新たな子ども向け手当の制度設計が急がれるものの、先行きは不透明だ。地方に新たな負担増を求めた国に対し、地方自治体側が猛反発。政局ともからんで難航する状況を「年末決着目指し攻防本格化」として解説した。連載「12年度介護報酬改定の焦点」9回目は引き続き複合型サービスがテーマ。介護報酬や人員基準などに関して厚生労働省が示した方向性、制度導入後の見通しや課題などをまとめた。「インタビュールーム」は、人口1800人の離島「興居島」で唯一のデイサービスのセンター長に、島ならではの問題や地域連携の取り組みについて尋ねた。

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税務経理

【12月6日号】 シリーズ「国際会計基準 見方・読み方」は、本号から2回に分けて「減損会計」を取り上げる。価値が減少したことを財務諸表に計上することをいう減損会計は、国際会計、米国会計が先行して導入した。今回は日本での減損会計のポイントや税務上の取り扱いについて、導入の背景、減価償却や時価会計との違いなどを交えながら解説している。最終ページ「私の苦心」欄は、「風通しの良い職場の醸成」と題し、松本税務署長が寄稿。「自分が認められる職場(他人を認める職場)」と「相互けん制機能が発揮できている職場」を目標に掲げ、取り組んでいる内容を紹介している。

【12月9日号】 連載「検証 租税判決から見た不動産の時価」では、土地利用規制との関係で利用制限を受ける場合の対象地の適正な時価をめぐって争われた事例(東京地裁)を取り上げた。「私の苦心」欄では、「徴収業務に従事しての寸感」と題して、青森県中南地域県民局県税部の取り組みを寄稿。筆者は、「有言実行」「まずは差し押さえを」「逃げない、引かない」を肝に銘じて、「徴税吏員」として毅然(きぜん)と対応することが大事だと指摘。最後に、公売予告に逆上した滞納者からの電話に応対した女性職員が毅然とした態度で、経緯や制度を説明するなど冷静に応じ、「これが私の仕事ですから」とやり取りを締めくくっていた様子を紹介している。

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金融財政ビジネス

【12月5日号】 「悪化する日本株のパフォーマンス」と題して、日本株の今後の動向について解説した記事を掲載した。同記事は「日本株の投資パフォーマンスの悪化が顕著になってきている。東証1部の時価総額は11月16日に249兆5174億円と、250兆円を割り込んだ。今年のピークは、2月21日の331兆9845億円で、実に24.8%もの減少である。リーマン・ショック前の2007年2月のピーク時には581兆3239億円という規模だっただけに、実に57.0%の減少となっている。今年の米株式市場の時価総額のピークは4月29日の16兆8190億ドルで、11月16日時点が14兆8620億㌦だから11.6%減となり、時価総額の下落という『痛み』は日本の半分以下だった。また、リーマン・ショック前のピークが07年7月の19兆1370億ドルで、今年11月16日までの減少率は22.3%となる。つまり、リーマン・ショック後の時価総額の減少率は米国よりも日本が大きいということになる。これらの数字を見れば、米国の大手金融機関が破綻したにもかかわらず、日本株の下落率が大きく、かつ長期的に深刻な状況にあるのは一目瞭然だ。そして、今は欧州債務問題を材料に、日本株は大崩れの状態である。日本の金融機関の欧州向け融資が欧米の金融機関に比べていかに少なく、ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン(PIIGS)の国債の保有額がいかに僅少かを力説しても、日本の金融機関の株価はメルトダウン状態にある」としている。

【12月8日号】 「日米とも景気減速は不可避」と題して、日米の経済動向について分析した記事を載せた。同記事は「貯蓄率のこれ以上の低下余地がなくなりつつあることなどから、米国の個人消費は先行き減速が避けられない。設備投資も世界景気の減速を背景に、企業の姿勢が慎重化してきている。景気を牽引する両輪が回転しにくくなるため、米経済が減速に向かうことは不可避だろう。また日本では、純輸出がこれまで景気牽引の主役となってきたが、世界景気の減速から先行きの伸びが期待できなくなってきている。公的需要を除いては確実に下支えを期待できる項目は見当たらず、日本経済の先行き減速も避けられないだろう」としている。

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