【12月12日号】 空港を活用した地域振興策を探るためのセミナー「地方空港ネットワーク作戦」(時事通信社主催)が11月28日に開かれ、国際政治評論家として著名なムウェテ・ムルアカ氏が利用者の観点から日本の空港の問題点を指摘した。まず、フランス経由でケニアに向かう予定だったムルアカ氏が、ターミナルからバスで駐機場に向かう途中、予約していた飛行機が飛び立ってしまい、同行していた家族と共に空港に置き去りにされた経験談を語り、「それでも日本の空港よりはいい」と厳しい評価を下した。確かに日本の航空会社はサービスを重視し、予約客を積み残すようなことはしないし、チェックインした登場予定者全員が席に着くまで、飛行機がターミナルを離れることはない。ただ、外国人が入国する際には異様とも思える厳しさで入国審査を行う。ムルアカ氏は「来訪者をもてなすという気持ちが欠けているのではないか」と手厳しい。(iJAMPセミナー「地方空港ネットワーク作戦」詳報)
【12月15日号】 東海・東南海・南海の3連動地震により、今後30年以内に高い確率で被災すると予測されている和歌山県は、東日本大震災の津波被害を受けて、県内2400カ所以上の全避難場所を見直すとともに、安全性の目安となる「安全レベル」を導入した。津波の高さが想定を超え得ることを念頭に、住民の高台への自主的な避難を促す取り組みで、「全国でも初の試み」として注目される。安全レベルは、海抜標高や浸水予測地域からの距離などを基に、避難場所の安全性を3段階(レベル1〜3)で評価。仁坂吉伸同県知事は「低地の避難場所に満足せずに、時間的に余裕があるなら、レベル1よりレベル2に、2より3にと、より安全な場所に逃げてほしい」と訴える。東日本大震災では、浸水が想定されていなかった地域で被害に遭ったり、逃げ込んだ先の避難場所が津波に襲われて亡くなったりした人も多かった。岩手県の越野修三総合防災室特命参事は「ハザードマップが、ここなら安全という『安全マップ』になっていた」と振り返り、「より高台にある第2、第3の避難先を確保しておくことも必要」と、和歌山県の取り組みを評価する。(特集「防災先進県・和歌山の取り組み」)
【12月13日号】 ニュー・パブリック・マネジメント。1980年代の沈滞した英国経済立て直しに威力を発揮したサッチャー政権が、行政の現場に持ち込んだ手法だ。非効率の代名詞だったお役所仕事に、外部委託による指定管理者制度などの導入で民間並みの効率性を求めるのがその目的。グローバル化を支える新自由主義の流れに乗って、日本の公共サービスの現場にも流れ込んだ。しかし、公共空間で全てがうまく機能しているのだろうか。例えば、図書館。最終面の匿名コラム「ラウンジ」に、地元の図書館からの要請で、自らの著作を寄託した筆者が、指定管理者制度に移行したために自らの著作や資料が粗末に扱われた経験を告発している。穏やかな筆致に大きな怒りが込められている。
【12月16日号】 法教育という言葉がようやく広まりつつあるのだろうか。仕掛人は法務省。裁判員裁判を始めるにあたって、法曹界が中心となって学校教育の中に位置付けようと試みている。そのシンポジウムの様子をリポートした。面白いのは、日本政治学会の理事長も務める杉田敦法政大学教授は、自身がつくった高校教科書で民事法分野の記述を入れようとして苦労したことを披露した。従来の高校レベルの教科書は、極端に言えば憲法の統治部分を説明すれば足りたのかもしれないが、国家権力行使から個人を守るという、古典的とも言える自由主義的な発想だけでなく、契約主体としての市民という概念も教えるべきだと訴えた。市民参加型の裁判制度への移行で、教育現場がどう変わっていくのか。さまざまに予感させるシンポジウムをお届けする。
【12月13日号】 巻頭言で、恩賜財団済生会理事長の炭谷茂氏が「働く喜び」と題し、知的障害者に就労の場を提供する「エコミラ江東」を紹介している。業務内容は廃プラスチックのリサイクルで、食品トレーの選別作業を行う知的障害者らの姿に「職業人としての誇りを感じた」とする。障害者の仕事づくりという福祉と、環境の両分野を向上させる有効な手段の一つだろう。TPP交渉参加問題をめぐり、東京大学医科学研究所の上昌広特任教授に寄稿してもらった「TPPは我が国の医療にマイナスか」。混合診療解禁など個別の問題に触れながら反対論を具体的に論破、「運用次第で毒にも薬にもなり得る。現実に即した柔軟な思考が必要だ」と提言している。
【12月16日号】 特集記事「在宅医療を推進し長寿社会のまちづくり」では、千葉県柏市と東京大学高齢社会総合研究機構などが共同で立ち上げた「柏市豊四季台地域高齢社会総合研究会」の活動を紹介。在宅医療を行う医師の養成・質の向上や、他職種間の連携など、高齢者の在宅療養を支える仕組みづくりに取り組んでいる。在宅医療の推進は超高齢化社会に向けた重要課題。柏市で順調にいけば全国展開を考えているといい、その成否が注目される。連載「12年度介護報酬改定の焦点」最終回は、これまでの議論を整理し、改定の基本方針を解説した。「インタビュールーム」は、群馬県医師確保対策室長の川原武男氏。県と群馬大学、医師会、病院で「レジデントサポート協議会」を設立し、研修医の県内定着を目指したさまざまな取り組みを行っている。
【12月13日号】 本号から、基礎講座「固定資産税(償却資産)の課税と調査実務」の連載がスタート。「法人税減価償却制度の基本を知り償却資産を学ぶ」を副題に、市町村財政において「隠れた財源」と言われ、極めて重要な役割を果たしている償却資産税を取り上げ、税制改正により新しくなった法人税減価償却制度の基本である、減価償却費計算の3要素を理解し、償却資産の実務において必要な課税客体、課税の仕組み、申告漏れ、課税漏れおよび減価償却資産の「把握・捕捉」等、実地調査の方法を学んでもらう。具体的には、法人税減価償却制度の計算要素である「取得価額・残存価額・耐用年数」の習得、自治体の担当者にとって普段なじみの薄い法人税法関係、通達関係項目の習得、帳簿調査に不可欠な減価償却資産の初級簿記の習得を目的とする。
【12月16日号】 「私の苦心」欄では、「課税自主権の活用と滞納額の縮減」と題して、島根県税務課の取り組みを紹介。同県では、2007年10月に「財政健全化基本方針」を策定し、08〜11年度の4年間を「集中改革期間」と位置付け、抜本的な財政改革に取り組んでいる。県税については、「課税自主権の活用」と「滞納額の縮減」を具体的施策として掲げ、税収確保の取り組みを推進。その結果、滞納額の縮減では、07年度末に10億7900万円に上った滞納額が10年度末には9億2300万円と、4年間で1億5600万円を縮減。最後に「今まで以上に市町村との連携を密にしつつ、特別徴収の推進、県および市町村の共同徴収システムの構築、収納チャンネルの拡大あるいは非常勤職員・再任用職員の活用など、徴収率向上のためのあらゆる方策について、市町村と共に検討を進め、より一層の滞納額縮減を図っていきたい」としている。
【12月12日号】 「欧州危機深化で円高圧力強まる」と題して、今後の為替相場について解説した記事を掲載した。同記事は「欧州の債務危機がドイツを含めた中枢国にまで広がり、いよいよ手に負えなくなってきた。そして、この危機がクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)などを通じて米国の金融市場にも波及する懸念が強まっている。財政手段が限られる中で、欧州では欧州中央銀行(ECB)による非伝統的な金融緩和(米国流のプリンティング・マネーによる量的緩和)が必要になる。米国に危機が伝播した場合、同国では量的緩和第3弾(QE3)に頼らざるを得ない。一般市民らによる『99%の草の根民主主義』が、税金による銀行救済を困難にしているためだ。金融危機時には、国内総生産(GDP)に対する金融の比率が大きい地域(英国や米国、スイスなど)ほど自国通貨安に傾きやすい。グローバルな金融機関が海外市場で利益を上げるのに都合がよいからである。そして、世界全体の金融危機、経済危機時には円高になる傾向がある。従って、欧州発の金融危機が深化すると、大きな円高圧力になり、通貨切り下げ競争が金融緩和競争に発展すると、インフレ期待を通して、安全資産のはずの日米の国債まで売られるリスクがある」としている。
【12月15日号】 「構造変革期に入った世界経済」と題して、欧州の債務問題が世界経済に及ぼす影響などについて分析した記事を載せた。同記事は「欧州諸国は、単一通貨ユーロの導入によって域内貿易や資本移動を増加させ、経済のレバレッジ(てこ)を拡大させてきた。しかし、これによって生じた不均衡は、もはや欧州域内だけでは解決できず、世界経済の不安定要因となっている。米国はドルを基軸通貨とすることにより、巨額の経常赤字を対内証券投資の形で国内に資金還流を行う構造をつくり、世界経済の発展に寄与してきた。しかし、2008年のリーマン・ショックを経て、不均衡を縮小せざるを得ない中、米国経済もまた大きな転換点を迎えている。この間、新興国経済が急速に拡大してきたが、これもドル本位制を前提とする中で起きたことである。共通の経済圏の中で不均衡を拡大させつつ、全体の経済成長を謳歌してきた経済モデルが見直しを迫られており、世界経済は構造変革期に入っていると言える。欧州の債務問題は日本の財政とも類似点がある。部門間の不均衡を是正する枠組みを強化しなければ、日本も欧州と同様の状況に至る懸念がある」としている。