【1月5日号】 2012年度の地方財政対策は、地方交付税総額(出口ベース)が11年度比0.5%増の17兆4545億円となり、5年連続で増額を果たした。臨時財政対策債を前年度に引き続き縮減するなど、歳出削減も重視しつつ、交付税財源をひねり出した。川端達夫総務相は地財対策の決着後、「(前年度は1兆円規模で見込まれた)巨額の繰越金が見込めず大変厳しい状況にあった。通常の対応策だけでは、対前年度比で少なくとも数千億円のマイナスが予想された。しかし、疲弊する地域経済状況を踏まえると、(地方交付税は)少しでも対前年度で増額させる必要があった。現場で知恵を出し寄ってもらい、(自分自身も)1円でも上回るように関係閣僚らを説得し協力いただいた」と総括。自治体に対しては、「今回確保した財源を生きた形で活用してもらい、創意工夫も凝らし、地域特性を反映して全力で取り組んでもらえるだろう」と期待感を示した。(特集「12年度地方財政対策」)
【1月12日号】 「食育基本法」が成立してから5年が経過した。今後、食育を持続的に地域に根付かせていくためにはどうしたらよいのか。食育の講演で各地に行くと、その手法が知りたいという声が圧倒的に多い。そのときにお願いしていることは次の七つ。(1)地域で横断組織をつくる(2)地域の健康調査と小中高生の生活リズム調査の結果を明らかにする(3)地域の医療費用の負担がどれだけ掛かっているか明らかにする(4)農業や料理体験の学習にプログラムを作り、学ぶことの位置付けを明確にする(5)食材の四季のリストと、文化、歴史、背景、品種、味などのテキストを作製する(6)学校給食においては、教育委員会、栄養士、農業者、市場、農協、直売所、地域などの密なコミュニケーションをつくる(7)子どもの健康的な未来と地域経済の発展につながるビジョンを持つ──。食育の一番の目的は、未来の子どもたちに健康を手渡すこと。その目的をはっきりさせておけば、みんなが何のために何をするのかが分かり、動きやすくなる。(木曜連載「地域力と地域創造(13)」)
【1月10日号】 形骸化したと指摘され何年が過ぎたのだろうか。教育委員会の活性化というのは無理なのだろうか。そんな暗い気分を吹っ飛ばす事例が滋賀県草津市にあった。教育長を除く4人の委員を公募制で順次、入れ替えた。もともとは、今の市長が選挙に出た時のマニフェストで公募制導入を書き込んだ事が発端。市長は立命館大学で草津キャンパス移転の実務を仕切ったベテランの職員を教育長に任命した。そのベテラン職員が「話し合いの文化」を教育委員会事務局に持ち込んだ。先生と市職員の一体化を目指す「教職協働」がキーワード。大人が協力すれば、子どもたちが主役の現場も活性化する。教育は制度改変を頭で考えてはダメ、という格好の事例リポートだ。
【1月6日号】 新年とともに新連載「『中之条研究』10年の成果」がスタート。中之条研究とは、群馬県中之条町において2000年から行われている広大な疫学研究であり、高齢者の日常的な身体活動と心身の健康に関するさまざまな知見が得られてきた。その内容について、東京都健康長寿医療センター研究所の青_幸利副部長に8回にわたり解説してもらう。1回目は歩く速さと全体的な体力水準との密接な関連について述べている。「地域を支える」は、山口県宇部市の重度身体障害者授産施設で製造される「蟹せんべい」が地元の隠れた名産になっているという話。障害者の就労・社会参加と地域興しが一体となって興味深い。12月前期の「社説拝見」は、社会保障制度改革などをめぐる各紙の論調を紹介する。
【1月13日号】 特集「第18回医療経済実態調査から」は、診療報酬改定の基礎資料となる同調査の内容を3回にわたり詳しく見ていく。1回目は、医療機関の損益状況、主に経営改善の中身とその背景について解説している。連載「『中之条研究』10年の成果」2回目は「漫然たる散歩やウォーキングだけでは老化は防げない」と題し、加齢による下肢の筋力低下を防ぐためには一定の強度の運動が必要であることや、そのための運動処方について述べている。「インタビュールーム」は鳥取環境大学サステイナビリティ研究所の田中勝所長。持続可能な社会の実現に向け、環境問題に対して市民が身近なところから取り組むことの重要性を訴えている。
【1月13日号】 「私の苦心」欄では、「小さな自治体の大きな改革」と題し、香川県善通寺市の取り組みを紹介。同市は2005年4月に、外部から債権回収経験者の専門家(嘱託職員)を招請して債権管理第1課を創設した。特に口座振替について、新たにはがき様式の口座振替依頼書を作成し、口座振替未利用者の納税通知書に口座振替依頼書を同封するという勧奨方法により、口座振替普及率が向上。最終的な収納率アップにつなげている。10年度の市税現年度分の収納率は98.75%。滞納処分では、換価の必要のない債権を主体とし、また滞納者に多重債務者が多いことから、多額の収納が見込まれる過払い金に着目。過払い金については、差し押さえに対しての履行がないものも多くあり、異議決定を経て差押債権の取立訴訟を提起している。同市の特長は、この原告訴訟の指定代理人を市の嘱託職員が行うことで、現在までに30件程度の差し押さえを執行し、総額で2100万円余の金額を収納している。
【1月5日号】 「バーゼルⅢへの適応、相対的に容易」と題して、新たな自己資本規制(バーゼルⅢ)がアジア太平洋地域の銀行に及ぼす影響などについて解説した記事を掲載した。同記事は「世界の銀行がバーゼルⅢへの対応に苦労する中で、アジア太平洋地域に本拠を置く銀行は相対的に優位な地位にある。ただし、中国やインドなど高成長を続ける国の銀行システムや、追加的な資本賦課が課される日本のメガバンクなどはより困難な課題を抱えている。また、市場での資金調達に対する依存度が高い銀行は、流動性規制への対応に苦慮することになるだろう。日本のメガバンクはグローバルな金融システム上重要な銀行(G−SIFIs)に含まれるため、資本のハードルがより高い。しかし、一定の時間軸の下では達成が可能であり、既存のビジネスモデルを大幅に見直す必要性が少ないことは有利な点とも言える。本稿では、最初にバーゼル規制の変更の概要に触れ、欧米およびアジア太平洋地域の銀行業界への影響を分析し、さらに邦銀への影響について敷衍したい」としている。
【1月12日号】 「原発依存度低下でも経済成長と環境保全は可能」と題して、新たなエネルギー・システムなどについてまとめた記事を載せた。同記事は「リコー経済社会研究所は、グローバルな事業展開を図る日本企業を取り巻く経営環境の大きな変化を捉え、新しい経営の方向性を探ることを目的に、2010年に設立された。環境、資源、エネルギーの分野については、地球環境の保全と経済成長の両立を企業のイノベーションを通じていかに達成していくか、という観点から調査・研究を進めている。この間、11年3月11日の東日本大震災に伴い、東京電力福島第1原子力発電所の事故が発生した。これを機に、必要な電力の確保と地球温暖化防止を両立させていくことの難しさが改めて浮き彫りとなった。そうした中で、当研究所では関連分野の有識者の方々に集まっていただき、『エネルギーと温暖化対策懇談会』を開催、同年6〜10月に計5回の会合を行った。その結果、企業、個人・家庭、政府が各自の立場で努力すれば、原子力発電への依存度を低下させても経済成長と環境保全を両立させ得る、との結論に達した」としている。