【1月16日号】 地方自治の目的は「市民の満足度向上」にあります。その実現には自治体職員が「市民感覚、市民の不満」に「共感する」力が必要です。しかし、自治体職員はこの「共感力」が非常に弱い。その理由は「自治体職員個人の能力不足」にあるのではなく、職員から常識と市民感覚を失わせる自治体固有の風土にあると感じています。自治体固有の風土では「論理、前例」を基準に、「縦割り」で動きます。そのせいか、自治体職員は「論理的に考える力」と「前例を探す力」には磨きがかかります。しかし、論理力と前例に頼り過ぎ、何でも「机上」で考えて施策や施設をつくってしまいます。「現場」で起きている1次情報を足で探さないから、市民の本音とますます乖離します。さらに、論理と前例を探る対象が「縦割り」に限られるので、業界の中しか見えなくなります。この弊害はこれまでの連載で何度か指摘しています。すなわち「『同業の動向』より『顧客の不満』を見よう」と繰り返し提案しています。(月曜連載「施策や施設をつくる前に『顧客を創る』地域再生(5)」)
【1月19日号】 戦後、日本が高度成長していく中で、大企業の本社が集中する東京に税収が流れ込み、日本全体を発展させるため、この富の流れを地方に再配分する分配型の地方分権ができた。これは、ナショナルミニマムを達成するための平等型・底上げ型の地方分権と言える。しかし、ある程度ナショナルミニマムが達成され安定成長期に入ると、地域ごとに事情が違うのに全国一律の地方自治は成り立たなくなった。一方、東京への一極集中は止まらない。地域間競争もなく政策革新が起こらず、地方自治体のやりたいことは規制が強くてできない。次第に地域の独自性や生活文化、個性が衰退していった。こうして、役割分担、対等化、独立へという流れが今、出てきている。地方が役割分担して決められたことをやる時代から、国と対等に物事を考えて提案する時代に入った。これが地方政府の発想であり、地方自治の成長過程だと言える。自治体は、課税自主権の拡大や特区制度の活用、国の出先機関の移管などを求め、力のある自治体は「ミニ国家」を目指すようになる。これは成長の証しであり、国政の停滞への危機感と共に起こっている。これがハイパー地方自治の時代だ。(特集「山田京都府知事が講演」)
【1月17日号】 佐藤学東京大学大学院教育学研究科教授の大阪市長橋下徹への批判が掲載された。「条例が可決されれば、大阪で教職に就こうとする志願者は激減し、教師の質の低下は避けられない。それを百も承知で『教師をたたけば選挙に勝てる』と公言し、教師たたきを実行するのが橋下と『大阪維新の会』の政治手法である」と糾弾する。日本の学力格差は、地域差ではなく階層差の方が大きいと主張する。不信だけで構成された条例を断罪している。今一度、大阪府民に読んでもらいたいと思う。
【1月20日号】 野田内閣の改造によって、文科相が交代した。国対委員長だった平野博文氏が就任した。就任の記者会見を詳報した。今後の行政の方向性が読み取れる。「大学改革を進めたい」と言う。東大の秋入学が念頭にあるのだろうか。大阪の教育基本条例議論に端を発した、直近の教育委員会制度改革については「何が課題か検証していくべきだ」とした。橋下大阪市長の手法について、大阪出身の大臣としてどう思うかと問われ、「大臣として答える立場にない」とした。政治家の「空気を読む」とはこういうやりとりなのか。コメントの影響を無いようにしたいと考え、こう答えたのか。スタンスは明確であってもいいのではないのか。考えさせられるやりとりだ。
【1月17日号】 重要な役割が指摘されながら認知も利用もなかなか広がらない訪問看護について知ってもらいたいと、訪問看護ステーションの看護師らが自ら筆を執り、「優しさのなかで こころに寄り添う訪問看護」(文芸社)を出版した。同書を紹介する記事「訪問看護の現場から発信」は、多忙な仕事の中で出版に踏み切った彼女たちの思いや、訪問看護の現状などを合わせてお伝えする。社会保障と税の一体改革の政府素案が正式に決まった。消費税増税のほかは負担増につながる施策の多くが先送りとなっており、今後も紆余曲折が予想される。「進言」では、徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター特任教授の松久宗英氏が、徳島県の糖尿病対策とその成果を紹介。都道府県レベルで実際に成果を挙げている例は貴重で、注目に値する。特集「第18回医療経済実態調査から」2回目は、病院の療養病床の有無、病床規模別に同調査の内容をひも解く。
【1月20日号】 連載「『中之条研究』10年の成果」3回目は、24時間装着の身体活動計(体動計)の記録などに基づき、高齢者の日常身体活動パターンの特徴について概説する。心の病で休職する公立学校教員が18年ぶりに減少に転じた。「調査・統計のページ」に掲載。12月後期の「社説拝見」は、「社会保障、能力に応じた負担と効率化を」と題し、高齢者医療費、65歳定年などをめぐり各紙それぞれ異なる論調を紹介する。
【1月17日号】 「私の苦心」欄では、「個人住民税緊急対策」と題し、埼玉県の取り組みを紹介。同県では、個人県民税の割合が高く、2010年度の課税額は全体の44.9%を占め、また、その収入未済額は全体の81.7%にも達している。このため、11年9月に総務部内に「税収確保対策推進本部」を設置し、個人県民税の徴収対策を中心とした緊急対策に取り組んでいる。同年10月から収入未済額の大きい大規模8市に複数の県税務職員を派遣し、市の職員とのプロジェクトチームにより個人住民税の高額・困難事案の集中整理、現年度対策の推進などを強力に推進。また県と県内全市町村で組織する「個人住民税税収確保対策協議会」の総会を臨時開催し、納税率の向上と税収確保を県と市町村の共通重要課題として確認し、徴収対策を強力に推進するための緊急決議を行った。さらに11月から3カ月間を「県税・市町村税滞納整理強化期間」とし、広報を充実するとともに、具体的な数値目標の下で効果的な文書催告や厳正な差し押さえなど、県と市町村が一体となって滞納整理に取り組んでいる。
【1月20日号】 昨年12月に都内で開催された、資産評価政策学会の2011年度「秋の研究大会」の模様を、同学会理事で明海大学名誉教授の武田公夫氏が寄稿。研究大会は2分科会とシンポジウムで構成。シンポジウムは、地震、津波、原発による複合的被害に見舞われた東日本大震災の被災地の復興に向け、「震災復興を支える不動産市場のソフトインフラのあり方」をテーマに、被災地における土地境界の明確化や都市計画上の課題、早期復興の試案「定期借地権と等価交換の活用」などについて討議した。「私の苦心」欄は、「税収確保対策」と題し、岡山県の取り組みを紹介。重要課題となっている個人県民税の税収確保対策に取り組むため、11年8月に、県副知事と県内全ての副市町村長を構成員とする個人住民税徴収対策会議を開催し、県・市町村が協力・連携して(1)特別徴収の推進(2)徴収体制の強化(3)機構の有効活用(4)地方税の共同徴収組織(機構)の維持・発展─などの施策を展開していくことで合意。徴収体制の強化策として、市町村は機構の有効活用に努め、県は市町村への職員派遣や共同徴収を行うことで市町村の支援に努めている。
【1月16日号】 「日米とも新年の経済に不安」と題して、1月の景気動向と金融情勢について解説した記事を掲載した。同記事は「このところ個人消費に明るさが戻ってきた、との見方から米経済に対する楽観論が広がっている。しかし、貯蓄率の低下によって支えられた消費の増加は長く続かない。内外の環境悪化により、企業の業績にも不安が広がっている。新年の米経済は大きく減速する恐れが強い。日本経済も、世界景気の減速で輸出の伸びが期待できなくなっている。需要を先食いしてしまった個人消費、内外の環境悪化から企業の姿勢が慎重化した設備投資においても減速が見込まれる。世界景気の減速度合いによっては深刻な状況に陥りかねない」としている。
【1月19日号】 「今後の動向を決める重要な年に」と題して、今年の不動産投資信託(REIT)市場について展望した記事を載せた。同記事は「REIT市場は2011年に10周年を迎えたが、投資口価格(株価)の動きを示す東証REIT指数(総合指数)がほぼ一貫して低下するなど、厳しい一年だった。しかし、REITの「本業」である不動産賃貸事業は堅調で、REITの平均配当利回りは6%超の高水準に達しており、投資家の関心も高まっている。12年は、5年ぶりの新規上場が見込まれるほか、制度改正の検討も本格化するなど、REIT市場の浮上に向けて重要な年になると予想される」としている。