早読み行政誌

「モンスター」が育つ不機嫌な社会(2012年1月30日〜2月3日号)

地方行政

【1月30日号】 全国の自治体は、観光を地域経済の再生・振興につなげる有力な手立てと位置付け、イベントの開催や内外観光展への参加など、さまざまな取り組みを進めている。しかし、若者の旅行離れに加え、ファミリー層の旅行回数も減少。さらに、団塊世代で旅を楽しむ「悠々自適組」が予想ほど多く現れていない上、東日本大震災が「インバウンド」(海外から日本への観光客)に与えた影響などもあり、試行錯誤が続いている。一方で、民間には星野リゾートのように、旅館・ホテルの所有者から運営を受託する経営手法で、全国規模で事業を展開するユニークな企業が登場してきた。同社の星野佳路社長は「世界から日本の地方に投資してもらう機会をつくるのがリゾート運営企業の役割」とし、集めた国際投資マネーを日本の地方に注ぎ込み、地域活性化に貢献したいとしている。同社の戦略は(1)旅館・ホテルのリゾート施設運営に特化(2)2001年からは培ったノウハウを基にリゾート再生事業に着手(3)国際投資マネーを活用(4)リゾート運営企業としての競争力の観点から環境対策を充実──と、従来ビジネスモデルとは大いに異なる。同社の事業展開が地元観光産業に刺激を与え、地域全体の活性化のきっかけになることが期待される。(特集「施星野リゾートの観光戦略」)

【2月2日号】 行政は、住民や区民に対して親であってほしいと思う。親は子どもの将来を思えばこそ耳障りなことも言う。子どもに嫌われても叱り続ける。その場を丸く収めるために相手の言い分にうなずき、その要求をとりあえず聞き入れることが、本当に住民のことを考えていると言えるのであろうか。時代は大きく変わっている、現状をそのまま続けることは至難であり、現状を維持するための一時しのぎでは、明日の展望は開けないであろう。多少の痛みを伴っても、我々は未来を切り開くために、現状のさまざまなシステムを変えていくしかないのである。行政は、明日を切り開く人々を支援してほしい。少なくとも、自分の力で自分の明日を切り開くために、可処分所得や可処分時間を多くし、ルールはできるだけ必要最低限にすることが望まれる。そのためにも、政策決定権力の分権が必要である。(木曜連載「個性輝く自治を目指して」)

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内外教育

【1月31日号】 高校生が自分たちの学校を紹介するCMをつくるとどうなるのか。そんな実践的取り組みが、「東京学芸大附属の実践」33回でリポートされた。CMづくりによって、メディアを利用した創造的面白さを体験し自発的態度が生まれる。CM作成過程で著作権を有する楽曲などの利用から知的財産の実務に触れる。CMづくりを始めて8年を経過し、CMづくりを目指し入学した生徒が自己実現した。さまざまな効果を生んでいる。この情報Aでの取り組みを、法教育への足掛かりとして公民科との連携も考えるという。面白い展開だ。

【2月3日号】 クレームが言える時代は、本当はいいはずだが……。しかし、言いたい放題モードに入っている人は、主張の根拠を探す努力もしないし、抑制も利かない。それを「暴走」という。「モンスターペアレント論を超えて」第69回は、クレーマーの心理状態に立ち戻って分析する。モノゴトの本質的改善にはつながらない。不機嫌な気分が充満するストレス社会。対応する術を今回は基本から説いている。

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厚生福祉

【1月24日号】 特集「いつでも医療情報にアクセス」は、鹿児島大学病院の患者参加型「ITカルテ」の取り組みを紹介する記事だ。このカルテの最大の特徴は、インターネット環境さえあれば、患者自身やアクセス許可を受けた医師がいつでもどこでも医用データにアクセスできるという点。内容は、主治医の所見のほか、エックス線写真、薬剤処方の記録などで、患者が自らの医療情報を保有できるという意義にとどまらず、災害時のバックアップや疫学研究、遠隔医療にと活用が広がっている。「インタビュールーム」は、兵庫県明石市の「コミュニケーション麻雀協会」会長。特大の牌を使って2人1組でやるこのマージャンは、高齢者の脳トレや孤立防止に役立つといい、県内だけでなく他県からも呼ばれて体験してもらいに行っているそうだ。「第18回医療経済実態調査から(下)」は、診療所の損益や医師の給与水準などを取り上げる。

【1月27日号】 強毒性のH5N1型鳥インフルエンザ研究をめぐり、各国の科学者39人が、自主的に60日間研究を停止する異例の声明を発表。テロ悪用を恐れる米国の規制強化の動きに対処するためだ。世界的大流行が懸念される中、規制強化は研究の遅れにつながりかねず、科学研究に対する政治の介入がどこまで許されるのか、今後の動きが注目される。連載「中之条研究10年の成果」4回目は、高齢者の日常的身体活動と、うつ病やメタボリックシンドロームなど心身の健康との関連を解説する。「インタビュールーム」は、離婚や別居により子どもと会えなくなった親を支援する「親子交流を考える岐阜の会」事務局長。これまであまり表に出ていなかった問題だが、ハーグ条約締結に向けた国内法整備の動きの中で関心が高まりつつある。

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税務経理

【1月31日号】 巻頭の「フォーラム」は、慶応大法学部教授の片山善博氏が「地域決定型税制への期待」と題して寄稿。政府の2012年度税制改正大綱に盛り込まれた、固定資産税の課税標準の特例措置の一部について具体的な課税標準の軽減率を市町村が条例で決められるようにする「地域決定型地方税制特例措置」(わがまち特例)を取り上げ、「政府は、取りあえず公害防止用設備などごく一部の特例措置を対象に新制度をスタートさせる方針だが、ゆくゆくは問題含みの住宅用地の特例などにも対象を拡大すべきだ」とした上で、「自治体においては、地方自治の将来に重要な意味を持つこの試みを定着・発展させるためにも、新制度の誠実な運用を心掛けてもらいたい」としている。シリーズ「国際会計基準 見方・読み方」は、本号から3回に分けて知的財産などの無形固定資産をめぐる会計を取り上げる。日本での無形固定資産の会計および税務上の取り扱いのポイントと、国際会計基準(IFRS)での規定を検証する。

【2月3日号】 巻頭の「フォーラム」は、四国大学特命教授の牛嶋正氏が「消費税増税と財政再建」と題して寄稿。政府が国際公約とした「2015年度までに基礎的財政収支の赤字の名目GDP(国内総生産)比を10年度に比べ半減させ、20年度に黒字化する」という目標の達成に向け、消費税増税を中心に据えた社会保障と税の一体改革に取り組むよう求めるとともに、「野田政権は国際公約を果たした後のわが国の進むべき方向について、もう少し力強く明確に国民に語りかけることが求められる」と注文を付けている。「私の苦心」欄は、「できることを着実に」と題し、富山県黒部市の取り組みを紹介。同市では、本税中心の徴収という「滞納者優位の滞納整理」を改善するため、文書催告の強化にまず取り組んだ。悪質な滞納者には、特別催告書や差押予告書を目立つようにカラー印刷とし、封筒の色も変え、簡易書留で送付。それでも反応がない滞納者に対しては、実態調査や預貯金調査等を徹底的に行い、差し押さえを予告通りに実行している。こうした取り組みや、県との連携強化とともに、高まってきた技術や意識を生かすためにも徴収専門チームづくりに取り組むとしている。

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金融財政ビジネス

【1月30日号】 「これから始まる『高齢者ブーム』」と題して、人口動態の面から日本経済について分析した記事を掲載した。同記事は「発生から65年間の時差を伴ってベビーブームの『裏』、つまり『高齢者ブーム』がこれから始まろうとしている。こうした高齢化を一因として、家計の労働力は『リスク資産』と化している。労働力のリスクを分散する機会は国内にあるのだろうか。日本は貿易、直接投資などの企業活動を通じて、海外経済の高成長を国内に取り込む経路が細いと言える。また、日本の税率構造は少子高齢化との親和性を著しく欠いている。企業や政府の活動を通じたリスク分散の機会は国内では期待できそうにない。結局、証券投資を通じて海外の高成長を取り込み、国内人口動態のリスク分散を図ることが重要になる」としている。

【2月2日号】 「消費増税の条件は整うか」と題して、政府・与党がまとめた社会保障と税の一体改革素案について解説した記事を載せた。同記事は「世界的に財政再建が大きな課題となる中、1月6日に社会保障と税の一体改革の素案が政府・与党の社会保障改革本部で決定された意義は大きい。言うまでもなく、日本は政府債務残高の対国内総生産(GDP)比が主要先進国の中で最も高い。しかも、日本は高齢化のフロントランナーであり、将来を見据えれば最も厳しい財政問題を抱えている国である。米国やギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペイン(GIIPS)諸国と違って日本は経常黒字国であり、国債を国内で消化できていることを強調する向きもある。しかし、国内の投資家は日本の財政赤字に嫌々付き合っているわけではないし、国債の価格形成に重要な役割を果たしている国債先物市場における海外投資家の取引シェアは約4割を占める。内外の投資家は世界の市場を見渡してリスクとリターンを評価しており、誰が日本国債を保有しているかということで財政問題の大きさを議論するのはミスリーディングである」としている。

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