【2月27日号】 北海道浦河町は、女性が起業した店が非常に多い。2011年9月に、6店を訪問しました。(中略)彼女たちはお互いの商品・顧客を紹介し合う「連携力」を発揮しています。例えば、他店のチラシや商品が、別の店に無償で置かれています。置いてもらう店側は、販売網を強化できるし、置く店側は品揃えを増やすことができます。顧客は、どこか一店に行くと浦河にある女性起業家の店の新商品やイベントが分かる仕組みが構築されていました。注目すべきは、彼女たちはいわゆる「机上の会議」を全く開いていないし、リーダーもいないのに「フラットで強固な連携」を自然に発揮していることです。男性や自治体は、こういう「自然に人が繋がる連携」はできず、「序列と義務(形式)の力で動かす連携」を好みます。そんな男性や自治体が連携を提案すると、まず机上の会議を開けという話になります。会議で浦河町の女性起業家たちのような仕組みを導入しようと話題にすると、やれ他店商品を置くには手数料を取ろうとか、やれ人気店と閑散店の差が出るからやめようとかいう利害調整に関する話が必ず出ます。(月曜連載「施策や施設をつくる前に『顧客を創る』地域再生」より)
【3月1日号】 グリーンツーリズムの発祥の地である欧州では、農村の景観と宿泊の快適さとが整えてある。そこを拠点として、農村地帯での余暇をゆっくりと楽しむことが定着している。何より徹底しているのは美しい景観づくりだろう。木々や森、農村の街並みなどの調和が図られている。多くの人が観光や余暇で農村を訪れるということが、至極納得できるのである。一方、日本の実情はかなり違う。景観への配慮がない所が多過ぎる。周辺環境と調和したまちづくりが徹底されていないため、コンビニやチェーン店、自動販売機などが目立ち、くつろげる農村空間とは言い難い。実際に地方に行き、グリーンツーリズムの内容を尋ねると、農家民泊のことだったり、子どもたちの農業体験のことだったり、都市との交流のことだったり、それぞれがバラバラで全体のつながりが見えないものも少なくない。農業体験もボランティア的に捉えられているケースが多い。(木曜連載「地域力と地域創造」より)
【2月28日号】 大阪から新卒教員が逃げ出している。ハシズムが吹き荒れる大阪で、教員採用の内定を得ながら、辞退者が続出。「モンスターペアレント論を超えて」の筆者小野田正利大阪大学大学院教授によると、2月3日の集計時点で内定者の12・4%に当たる284人が辞退した。辞退率としては過去最高という。例年は9%台。阪大でも大阪で教員になるのを避ける学生が増えている。神戸や京都の教育関係者からは「おかげで、ええ教員が採れるようになりました」と真顔で言われるようになった、と小野田教授が嘆いている!
【3月2日号】 文部科学省のエースとしてかつて輝かしい存在感を示していた官僚がいた。寺脇研。ゆとり教育の批判の高まりとともにその存在感は失せたかのようであった。今は、京都造形芸術大学教授。高校生を集めたカタリバを立ち上げ、教育行政から教育現場そのものにポジションを転換した。その寺脇が、内外教育の巻頭エッセー「ひとこと」で復活した。子どもや若者と向き合う「覚悟」を強調する816文字は、名前を出さずして人を切り裂く迫力がある。切られた側も、切られたことが自覚できないのではと思わせる名文だ。達人の領域とはこういうものかと、驚かされる。
【2月28日号】 旧社会保険庁の後継として日本年金機構が発足して丸2年が経過した。消えた年金問題解決への取り組みや、組織改革はどこまで進んだのか。民間から初代理事長に登用され、2期目(1期2年)に突入した紀陸孝氏のインタビュー記事を掲載した。「基幹業務に軸足を移していく時期だ」と強調している。連載「好転したのか、公立病院の経営状況」4回目は、いよいよ個別の病院の事例を取り上げる。まずは、病院建て替えを計画している市立病院の経営状況を、小樽市立病院、仙台市立病院を例に見ていく。豪雪が厳しい今冬、落雪による事故も多発しており、高齢化の進む地域では雪下ろしや雪かきをどうするかは課題だ。「地域を支える」は、富山市社会福祉協議会が組織したボランティアによる雪かき隊の活動を紹介する。
3月2日号 新型インフルエンザが発生した際、集会禁止など国による私的活動制限を可能にする法整備が進められている。これに対し、法律関係者や有識者から異議が示されているという。たしかに、病原性の弱さを考慮せずに隔離などの強攻策を採った2009年〝新型〟流行時の混乱は記憶に新しい。科学的根拠に基づくオープンな議論が必要だろう。特集「都道府県・政令都市2012年度厚生・労働・環境関係予算」1回目は、群馬県、滋賀県、新潟市を取り上げた。「進言」は、埼玉県川越市の「児童虐待防止SOSセンター」設置を紹介。電話相談のハードルを下げたことで、虐待予防・早期発見に一定の効果が見られるという。
【2月28日号】 「2012年度税制改正と今後の展望」の3回目は、市町村税を特集。個人住民税、軽自動車税および事業所税の改正内容について、法律改正事項を中心に解説。さらに、今後の個人所得課税をめぐる課題にも触れている。「私の苦心」欄は、「改革に終わりなし」と題し、大阪府の取り組みを紹介。最小の経費(徴税コストの縮減)で最大の効果(税収確保)を生み出す、簡素で効率的な税務執行体制へ常に変革し続ける一方で、これまで税務行政を支えてきた経験豊かな団塊世代の職員が大量退職期を迎え、税法・民法等関係法令や企業会計などの知識あるいは税務調査や納税交渉などの高い専門性をいかに継承していくのかが課題だとし、新たな税務執行体制を構築するため、業務・組織の集中化などについて検討。大阪市内の府税事務所を統合・再編するとともに、同市内全域の法人二税に関する業務や自動車税の徴収業務の集中化を図ることを決めた。
【3月2日号】 「2012年度税制改正と今後の展望」の4回目は、固定資産税を特集。2012年度は3年に1度の評価替えの年に当たり、評価替えに伴う制度見直しをめぐる議論の結果、住宅用地に係るいわゆる据え置き特例については、2014年度までに段階的に廃止することが決まった。結論に至るまでの背景事情や政府税制調査会での議論の状況も含めて解説している。「私の苦心」欄は、「適正な課税と確実な徴収」と題し、千葉県の取り組みを紹介。同県では、2011年度から高額な滞納事案について、滞納者の住所や主たる事務所などが所在する県税事務所で一括して滞納処分を行う徴収引き継ぎを開始した。毎年徴収職員が減少する中で、徴収窓口の一本化による効率的な事務処理を主眼とするもので、各事務所では順調に整理が進んでおり、引き継ぎの効果は表れているとしている。
【2月27日号】 「期待と不安の新金融政策戦略」と題し、米連邦準備制度理事会(FRB)が1月に打ち出した新金融政策戦略に関する解説記事を掲載した。同記事は「FRBは1月25日、連邦公開市場委員会(FOMC)の通常の経済判断と政策決定を告げる声明に加え、今回から公表の内容が拡充された経済見通し、金融政策戦略に関する声明を発表し、バーナンキ議長が定例の記者会見を開いた。今回の発表は、いわゆる時間軸の延長による追加金融緩和と、透明性を高めることを主眼とする金融政策戦略の提示が重なっていたため、その解釈には混乱がある。まずその整理をした上で、新金融政策戦略の採用は大きな前進だが、課題も大きいことを確認したい。ボルカー議長(当時)がインフレ抑制への断固たる意志を示した、『サタデーナイトスペシャル』と呼ばれる大きな方向転換が1979年10月6日にあった。それ以来、多くの先進国では深刻なインフレの悩みを持たずに過ごすことができ、その間経済成長が支えられた。今回のFRBの新金融政策戦略は、後世になって『ボルカー議長による政策変更に比肩する大きな決断』と評価されるかもしれないし、『危機の時代の経済構造に関する認識に甘さがある』として成果を上げられないかもしれず、新政策は期待と不安の中での船出となる」としている。
【3月1日号】 「実質GDP、2期ぶりマイナス」と題して、2011年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報に関する分析記事を載せた。同記事は「内閣府が2月13日に発表した11年10〜12月期のGDP1次速報値によると、物価変動の影響を除いた実質は前期比0.6%減、年率換算では2.3%減となり、1カ月前の民間予測の年率0.5%増から大きく下振れした。7〜9月期の高成長で『回復軌道に復帰する』と判断した多くのエコノミストは今回、『踊り場』ないし『足踏み』と表現せざるを得なかった。マイナス成長は2期ぶり。古川元久経済財政担当相は消費税率の引き上げを考慮してか、『タイの洪水など一時的な要因によるもので、景気は上向きの動きを続けている』と述べている。だが、10年10〜12月期以降、5期のうち4期がマイナス成長だった上、多くの企業が12年3月期決算で減益あるいは赤字を予想している状況をみると、景気が袋小路に迷い込んだ感がある」としている。