【3月8日号】 日本における防災政策の最大の欠陥は、被災現場が災害救助や復旧・復興の主役になれないことです。何をするのにも、財源と権限を握る国の意向を伺わなければなりません。被災現場が必要としていることを被災自治体はなかなか実施できません。被災自治体は、被災者に向き合うよりも、被災現場のニーズや実情を知らない国を相手に四苦八苦せざるを得なくなります。復興を妨げる強固な「国の壁」が立ちはだかるのです。この構図は、阪神大震災でもそうでしたが、東日本大震災でも全く変わっていないようです。日本の災害政策は、平時における行政と同様に、国が自治体をコントロールすることを基本としています。被災自治体を押しやって国が主役となろうとする結果、復旧・復興が被災地の思ったように進まず、「なぜ」と問わずにいられないことが噴出します。自由に使える財源が普段から自治体にない弊害が、大災害時には顕著となるのです。中央集権が被災地を疲弊させます。(連載「東日本大震災1年」より)
【3月6日号】 3月恒例の全国の地方教育予算(案)の掲載が始まった。政令指定都市分も含め北から順に4回にわたる連載で、各都道府県の特色ある教育事業が一覧できるようになっている。2回目の連載の中部、近畿特集では高校教育で一段と工夫を重ねる新規事業が目白押しなのが分かる。新潟県では日本建築科やロシアンメソッドピアノ専攻など専門化に特色を出す。静岡県ではオーバードクターの状況を活用し、博士号取得者を高校に配置しサイエンスエキスパートとして活用する。京都府では自由なスタイルの定時制高校が新設される。いい意味の競い合いが繰り広げられている。
【3月9日号】 昨秋、県立学校の教育目標を知事が決めるとした大阪府教育基本条例案を見た時には、多くの教育関係者が驚いた。土足で日本家屋に上がり込むそのあまりの無神経さに、声も出なかった一瞬だった。選挙の争点に掲げて大勝すると、今度は府市統合本部で「教育振興基本計画」を首長と教委の協議で定めるという一見、おとなしい中身に変えた。だけども、「満額回答」と笑みをたたえる大阪市の橋下市長。多くの真面目な弁護士さんには申し訳ないが、すれっからしの弁護士流交渉術を見せられただけだったのか。教育をおもちゃにしたことに、阪大の小野田教授の怒りは収まらない。連載「モンスターペアレント論を超えて」は、橋下の手口を詳しく分析する。
【3月6日号】 連載「好転したのか、公立病院の経営状況」5回目は、PFI方式で新病院を建設する市立病院に焦点を当て、まず長崎市立市民病院の例を取り上げる。「インタビュールーム」は、発達障害者を総合的に支援する徳島県のプロジェクトの一環として、4月に開校する県立みなと高等学園の冨樫敏彦校長。同校は、知的障害や心身症などを伴う発達障害者の就労に向け、職業教育や就労支援を行う全国でも類を見ない学校だという。取り組みが注目される。特集「都道府県・政令都市2012年度厚生・労働・環境関係予算」2回目は、福島県、新潟県、長崎県。
【3月9日号】 「メディアドクター」とは、医学・医療記事を第三者が評価し質の改善につなげる取り組みだ。2月に行われた定例会のもようをお伝えする。通常は日本の新聞記事を評価するが、この回は米国版メディアドクターで既に評価されている同国のウェブサイト記事を扱っており、彼我の違いが興味深い。内閣府の有識者会議が、事実上「65歳以上」とされている高齢者の定義を見直すよう求める報告書をまとめた。働く意欲・能力や健康状態の個人差が大きく、一律に年齢で区切るべきではないとし、「65歳」に代わる年齢案は示していない。意欲と能力のある人には、社会保障に支えられる側から支える側に回って欲しいとの思惑がある。特集「都道府県・政令都市2012年度厚生・労働・環境関係予算」3回目は、千葉県、川崎市、京都府。
【3月6日号】 「2012年度税制改正と今後の展望」の5回目は、固定資産税・都市計画税の税負担軽減措置の見直しを中心に解説。特に、東日本大震災による原発災害からの復興支援と、国が地方自治体に対し特例措置の実施を求める場合でも、法律の定める範囲内で自治体が特例措置の内容を条例で定めることができる地域決定型地方税制特例措置(通称「わがまち特例」)について詳説している。本号から、都道府県・政令指定都市の2012年度および2011年度の税収見通しの特集を開始した。
【3月9日号】 「2012年度税制改正と今後の展望」の最終回は、国税部分に関する税制改正大綱の概要を詳述。2012年度税制改正に向けては、税制の公平性確保と課税の適正化、2011年度税制改正の積み残し事項の取り扱いなどを中心に議論。個人所得課税、資産課税、法人課税、環境関連税制、国際課税などの税制改正事項を解説している。「私の苦心」欄は、「組織再編の一例」と題し、新潟市の取り組みを紹介。平成の大合併を経て、2007年4月に政令市に移行した同市は、政令市に求められる税務事務体制の構築を税務業務の課題とし、財務部税3課(税制課、資産税課、納税課)と8区役所税務課の組織再編について検討を重ねた。税証明などの窓口業務の担当部署をどこにするかといった難題にも直面したが、今年7月から新組織がスタートする。
【3月5日号】 「海外頼りになりかねない財政ファイナンス」と題し、昨年赤字に転じた日本の貿易収支に関する解説記事を掲載した。同記事は「長い間黒字を続けてきた日本の貿易収支が、ついに赤字に『転落』した。『輸出で稼ぐ日本』というイメージが強いだけに、この結果を見て多くの人は日本経済の将来について不安を覚えたようだ。しかし、2011年に起きた東日本大震災後、貿易収支が赤字に転落したのには、一時的な要因がかなり強く作用している。また、貿易収支や経常収支の赤字そのものが大きな問題になるわけではない。唯一懸念されるのは、経常収支が赤字化することによって、日本も財政赤字のファイナンスを海外資金に頼らざるを得ない状況になり、これが長期金利を上昇させることである。経常収支の赤字化がいつ訪れるかについては種々議論があるが、『いずれ赤字化する』と多くのエコノミストが指摘している。その日が来る前に財政再建の道筋をつけておく必要があるだろう」としている。
【3月8日号】 「日米共に主役不在」と題して、日米の経済動向について分析した記事を載せた。同記事は「貯蓄率が回復に向かう動きによって、米国の個人消費はほぼ横ばいの状況になっている。同国を取り巻く経済環境の悪化を背景に企業の設備投資に対する姿勢は慎重になり、世界経済の減速から輸出の伸びも期待しにくい。主役不在で米経済は先行き減速の恐れが強い。一方、日本でも、エコカー補助金制度による個人消費の下支え効果は一時的なものにとどまるとみられる。世界経済の減速により輸出が伸び悩む中、原子力発電所の運転停止で液化天然ガス(LNG)の輸入が著増しており、外需の先行きも厳しい。主役不在は日本も同じと言える」としている。