【3月12日号】 「今の東京は昔と比べてどの程度安全になっているのか」などと聞かれることがあります。その質問の趣旨は、関東大震災など過去の災害を教訓にしている上、技術革新も進んでいるから、大災害は起きないだろう、と言うことです。しかし、これは勘違いです。東京の危険度は高まっている、と間違いなく言えるでしょう。人口や産業経済機能の集中などによって、▽住宅の過密化▽液状化が心配される低湿地や崖崩れの恐れのある急斜面地への居住地の拡大▽高層ビルの林立▽地下街など地下空間の無秩序な開発▽災害時に必要不可欠な公園などの空き地の少なさ──など、都市構造に絡む災害要因が悪化しているからです。また、災害時には避難が難しい、寝たきり老人、独居老人、障害者、外国人も急増しています。多くが低所得である彼らは、老朽化した住宅に住んでいます。災害で犠牲になるのは、高齢者など弱者であることが多いのです。さらに、これらに加えて東京では、政治・行政や経済の中枢機能が集積しており、その機能不全によって日本全体がまひする恐れも高まります。(連載「東日本大震災1年」より)
【3月15日号】 平時における普段の取り組みが、大災害など緊急時に役立ちます。普段の取り組みがないのに、緊急時になったからといって急に危機管理ができるわけはありません。普段が大事なのです。「普段使っていないものは緊急時には使えない」──。こう述べたのは、阪神大震災で災害対応を行った神戸市広報課長(当時)の桜井誠一氏でした。この言葉は、危機管理全般に有効な教訓だと思います。その意味は「普段やっていないことはいざというときできない」「緊急時にだけ使うことを想定して普段使わないモノや仕組みは、緊急時には役立たないことが多い」ということです。要するに、「日頃から準備を怠るな」「緊急時に使うものは、普段から使うようにしておくべきだ」という教訓です。例えば、阪神大震災当時、ほとんどの人が知らなかったインターネットを使って、神戸市は被災状況などを情報発信しました。同市がインターネットを活用できたのも、以前から使っていたからでした。阪神大震災に遭遇してから急にインターネットを使い始めることは不可能です。(連載「東日本大震災1年」より)
【3月13日号】 浅田和伸さん。この人もしばしば民間人校長と分類されるが、文部官僚からの公立中学校長への転身だから正確ではないと常々、思っていた。教育行政を担う役所から、現場に飛び込んで3年。その年数の経過とともに、発言内容がますます説得力を持っている。巻頭エッセー「ひとこと」で義務教育を9教科に分けることそのものに問題提起をしている。「教える内容の索引としてはあった方が便利だろうが、実際の授業や教員免許は大くくりでいいのではないか」と言うのだ。単なる暗記授業にしてしまうか、生徒に考えさせ、表現させることができるか、あくまでも教員の力量次第だと指摘する。義務教育を考える上で、根本的な問題提起である。
【3月16日号】 橋下徹大阪市長が義務教育段階で学力が目標に達しない場合は留年させることの検討を指示したことが、報じられた。そんなことできるのか、と思う人がいるかもしれないが、正式な法令用ではないが「原級留置」という措置は可能だ。検討も何も、対応は可能だという。結論だけを聞くと、また橋下さんの〝受け狙い〟発言のように思えてくる。しかし、実態は判定基準等の問題があり、有名無実の制度になっている。実務の実態、法的問題を区分けして、元文部省初等中等教育局長だったベテラン筆者が解説している。「教育法規あらかると」は教育行政に関わる人には必読の内容だ。
【3月13日号】 東日本大震災から1年。被災地では仮設住宅の交通の不便などから具合が悪くても病院に行くのを我慢する「受診抑制」が多発、悪化してから救急搬送されるケースが増えているという。高齢者の多い地域だけに、医療体制の再建と、通える環境の整備が大きな課題となっている。内閣府男女共同参画局が、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の現状に関する報告書をまとめた。長時間労働の抑制や、仕事と介護・子育てとの両立支援、非正規労働者の処遇改善などの必要性を説いている。特集「都道府県・政令都市2012年度厚生・労働・環境関係予算」4回目は山梨県、京都市、香川県。
【3月16日号】 連載「好転したのか、公立病院の経営状況」6回目は、引き続きPFI方式を導入する市立病院の例として、福岡市立病院と京都市立病院を取り上げる。いずれも他の自治体の「失敗例」を踏まえて計画を立てており、今後の経営状況が注目される。前回の長崎市立病院と合わせ、最近増えている病院PFIの特性がよく分かる内容だ。「地域を支える」は、経済連携協定(EPA)に基づかず独自に外国から介護職員を受け入れている特別養護老人ホーム「湖北水鳥の里」(滋賀県)。来日前に母国で日本語を習得させるのが大きな特徴だ。EPAで来日した看護師、介護福祉士候補者が「言葉の壁」で苦労し、低い合格率にとどまる中で、現実に即した活動といえる。特集「都道府県・政令都市2012年度厚生・労働・環境関係予算」5回目は、栃木県、愛媛県、福岡県を取り上げた。
【3月16日号】 本号から2回連載で「地方都市の行財政改革─前橋市税務部門の挑戦」を特集。執筆者は前橋市の税務担当者。今日の社会的要請として、「税外債権を含めた歳入管理体制の刷新・意識改革が地方自治体に求められている」との問題意識から、特に税務においては「公平・合法・効率的に自主財源を確保するという原則に立ち、自治体自身の解決すべき問題として、課税精度の向上と徴収体制の確立を図ることが求められている」と指摘。前橋市が取り組んでいる徴収対策について、群馬県や県内市町村との協調体制などを交えて解説している。「私の苦心」欄は、「自動車税の徴収対策について」と題し、北海道札幌道税事務所の取り組みを紹介。
【3月15日号】 「『関空〜新千歳250円』時代が到来?」と題し、格安航空会社(LCC)の最近の動向に関する記事を掲載した。同記事は「3月1日に関西国際空港から飛び立ったピーチ・アビエーションの機内に乗り込む乗客には、満面の笑顔が目立った。何しろ、一部の座席だけとはいえ、500円で関空から新千歳や福岡へ往復できる航空券を入手できたのだから。だが、驚くのはまだ早い。これから格安航空会社(LCC)が続々と就航する日本では、『100円運賃』や『ただ』という運賃も飛び出しかねない。一方、経営再建の完了を目指す日本航空(JAL)は、これまでの厳しいリストラから脱して、成長路線に大きく舵を切る。キャリアー同士が至る所で『対決』する場面が生まれる今年の日本の航空業界は、いよいよ『シナリオのない乱戦』に突入する」としている。
また、「自殺者数、14年連続3万人超」と題して、最近の自殺者の動向について分析した記事を載せた。同記事は「警察庁が発表したところによると、日本における2011年の自殺者数は3万513人(速報)に達し、14年連続3万人を超えた。今回の自殺者数の急増は、1998年から始まった。わが国は、今回を含め戦後3回にわたり自殺死亡率の上昇を経験しているが、今回は高水準の期間が以前のどの時期よりも長いこと、また、男性の自殺死亡率が異例の高水準を続けていることが特徴として挙げられる。この間、女性の自殺死亡率は男性に比べ低水準で推移しているため、自殺死亡率の男女間の乖離はかつてなく広がった。男性の自殺死亡率が高いということは、われわれにいったい、何を語り掛けているのだろうか」としている。