早読み行政誌

公立病院、究極の赤字対策は廃院か(2012年4月2日〜4月6日号)

地方行政

【4月2日号】 国家公務員給与を削減する特例法が2月29日の参院本会議で、与野党の賛成多数で可決、成立した。2011年度の人事院勧告(人勧)に盛り込まれた平均0.23%引き下げを実施した上で、12、13年度は人勧分も含めて削減幅を計7.8%(10年度比)とする内容。国家公務員給与を人勧で示された削減幅よりも引き下げる「深掘り」の実現は1948年の人事院発足以降初めてとなる。ただ、特例法成立に至るまで、人勧を実施するかどうかで政府・民主党の対応は迷走。支持団体への配慮や政局への思惑も絡んで混乱は長期化した。国家公務員給与をめぐっては、人事院を廃止して労使交渉により給与を決める仕組みを導入する「国家公務員制度改革関連法案」が国会に提出されているが、今回の混乱を通じて公務員の給与決定の在り方も問われた。異例の経過をたどった給与削減をめぐる動きを振り返る。(特集「国家公務員給与削減(上)」より)

【4月5日号】 給与削減特例法は成立したが、課題は残されたままだ。今回の特例法に関しては、国家公務員にとって使用者の立場である政府の提案ではなく、議員立法となったことが問題点として国会審議で指摘されている。国公労連は既に「『賃下げ特例法』の廃止に向け法廷闘争を含む闘いを展開する」との声明を発表しており、訴訟に発展する見通しだ。また、12年度の人勧の取り扱いも注目される。3党協議では、12年度以降の人勧の取り扱いは議論しないとした。ただ、政府は11年度人勧の実施見送りを閣議決定しており、12年度人勧を実施するかどうかの判断や、実施する場合は特例法の深掘り部分との関係整理を求められそうだ。さらに、今後大きな焦点となるのが地方公務員給与への波及問題だ。国会審議では、付則に盛り込まれた項目の解釈をめぐり、「(削減につながる)実質的な効果はない」とする民主党に対し、自民党は「地方が何もしなくてよいというわけではない」と主張。両党の「同床異夢」だったことが露呈した。関係者は「玉虫色の決着。この問題は残り続ける」と話す。(特集「国家公務員給与削減(下)」より)

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内外教育

【4月3日号】 文部科学省の中で一番偉い人は誰なのだろうか?大臣か、次官か。現場の教師から見ると、そんな人たちではない。実は、教科調査官ではないだろうか。授業のポイントを押さえる上で、神のような存在として尊敬の眼差しで教科調査官は見られている。その教科調査官が筆者となって、授業のポイントを説く「視学官・教育課程調査官の講義ノート—ここが授業のポイント—」の連載が始まった。視学官は教科の領域を超えた部分も担当する、熟達の教科調査官である。通常、教科調査官と呼ばれるが、正式には教育課程調査官。1回目はそもそも教育界では知られるが、社会ではあまり知られない教科調査官の役割が説かれている。なるほど、日本の教育水準はこの人たちがつくっているのか、納得させられる。

【4月6日号】 日本リメディアル教育学会。聞き慣れない名前の学会は世の中に多いが、これもその一つだろう。大学進学率が50%を超え、本来は大学進学しなかった学力層の若者たちも入学している。そうした層の学生に大学はきちんとした教育対応をしているのか。どうすれば、そうした学生層を奮起させ、実のある社会人として卒業させることができるのか。そんな問題意識を持つ大学人らが集まっている。リメディアルとは、本来、「治療」という意味で使われてきた言葉だ。日本では10年程前に東大の理系分野の教授陣から「入試科目で不必要な科目を勉強せずに入学し、大学でついていけない学生がいる」と指摘されたことが、この学会創設につながったとされている。「おバカの世界」という表現が飛び交う研究会の様子は、現在の大学教育の一断面を浮き彫りにしている。

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厚生福祉

【4月3日号】 赤字体質が問題とされる公立病院の経営で、「究極の赤字対策」と言えるのが、病院の廃止や赤字部門の休止だ。特集「好転したのか、公立病院の経営状況」7回目は、比較的スムーズに廃止に至った茨城県のつくば市立病院の例と、一部休止しようとして周辺自治体の反対に遭い揺れ動いた埼玉県の志木市立市民病院の例を取り上げた。「進言」では新潟県副知事の北島智子氏が「地域を育ててくれる宝物」と題し、地震と豪雨災害に見舞われた十日町市の雪祭りやレスリングについて綴っている。とかく日本全体が元気のない中で、地域の〝資源〟に目を向け大切にする視点が良い。特集「都道府県・政令都市2012年度厚生・労働・環境関係予算」9回目は、埼玉県、石川県、広島県。

【4月6日号】 鹿児島県で3月、三男を激しく揺さぶって脳に障害を負わせたとして28歳の母親が逮捕された。後を絶たない虐待事件だが、その中でも、この母親は「虐待の可能性が高い」として児童相談所や病院、市など関係者が連携していただけに、なぜ防げなかったのかとの思いが残る。連携の状況や課題について、ニュースの詳報を掲載。3月末、今後の社会保障制度に大きく関わる「国民年金法改正案」「消費増税関連法案」が閣議決定された。しかし、ねじれ国会や民主党内の増税反対派の動きの中で、先行きの見通しは全く不透明だ。安心の社会保障に向け、建設的に議論が深まることを願ってやまない。慈恵病院(熊本市)の「赤ちゃんポスト」運用状況に関する市専門部会の報告書が出され、「留学」などの理由による安易な利用が判明した。これに対し、病院側は「母親は病院に相談する中で思い直し、留学を断念して育てている」と説明、預け入れ時の理由だけで問題視することに反論した。ポストの是非も含め、子どもにとって何が幸せか、考えさせられる。特集「都道府県・政令都市2012年度厚生・労働・環境関係予算」10回目は山形県、富山県、兵庫県、福岡市。

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税務経理

【4月3日号】 巻頭の「フォーラム」は、慶応大法学部教授の片山善博氏が「上乱るれば 下それに倣う」と題して寄稿。地方自治体の法定外税に関し、興味深い事案が検討されているとして、大阪府泉佐野市が総務省に新設の協議を申し出た「空港連絡橋利用税」を取り上げている。同税は、同市に所在する関西国際空港連絡橋を通行する自動車1往復につき100円を課すという内容。「連絡橋はもともと関西国際空港株式会社の事業用資産として固定資産税の課税対象だったのに、国がこれを『国有化』したことにより課税できなくなったことに起因する」この新税構想のいきさつを踏まえつつ、「租税法定主義の原理を踏みにじる悪質な租税回避行為である」と指摘。その上で、「権力の座にある者が税をないがしろにすれば、税制は歪み国が乱れるのは平安朝も今も変わらない。上乱るれば下それに倣う。姑息(こそく)な租税回避行為に加担した官僚と、それを見逃した政治家の罪を問う」と問題視している。

【4月6日号】 「私の苦心」欄は、「財源なくして、事業ならず」と題し、和歌山市の取り組みを紹介。同市では、滞納整理事務について各債権所管課においてかなりばらつきがあり、法令および条例等に基づいた公平・公正な滞納整理事務が徹底されていなかったとの反省をから、2009年4月に各債権所管課から高額・悪質等徴収困難な債権の移管を受け滞納整理を行っていく債権回収対策課を設立。さらに、市の債権管理の包括的な指針として、各債権所管課が共通の認識の下、債権の発生から回収まで適正な債権管理を行うため、2010年4月に「和歌山市債権管理条例」を制定した。今後の債権回収対策課の方向性については、「各債権所管課へノウハウを伝授し、指導および支援していくのがよいのか、それとも市の全ての未納債権を一括して回収する組織を目指す方がよいのか、悩み続けている」としながらも、「財源なくして、事業ならず。市の財政はわれわれの肩にかかっているんだという気持ちで、公平かつ適正な滞納整理を進めていきたい」とし、最後に、「やってみせ、言って聞かせ、させてみて、褒めてやらねば人は動かず」という山本五十六元帥の言葉を紹介している。

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金融財政ビジネス

【4月2日号】 「賞味期限切れのクール・ジャパン」と題し、日本の広報文化外交に関する解説記事を掲載した。同記事は「英国の力の源泉は、大局的な現状認識を持ちつつ世界の叡智、財力を国内に引き入れ、その結果を英国からの発信として世界に売り込むところにある。そのような知恵の一つとして、世界の主要課題を討論する場『Ditchley Foundation』という国際会議がある。『What is cultural diplomacy?』というテーマの会議に招かれた筆者は、このテーマが世界の関心を集めていることを改めて認識し、『クール・ジャパン』をことさらに進めようとする現在の日本の広報文化外交の問題点を再確認した。広報文化外交は新しい概念ではなく、第2次世界大戦後の日本に対する米国の占領政策は、米国史上最大のソフトパワーの行使だった。一方、日本も戦前戦後を通じ、成否は別にして軍事力、経済力というハードパワーを相殺する意図で、ソフトパワーとしての広報文化外交の推進に注力した。今後の日本の広報文化外交が進む道はどうあるべきか。欧米とは異なる文化から出発しつつも、民主主義、人権の尊重、法の支配という基本的価値観を有するという評価を世界から得ている日本は、いかにして自国が現在の地位に至ったかを検証し、『次の日本』をつくるための広報文化外交を展開する必要がある」としている。

【4月5日号】 「利用広がるビッグデータ」と題して、米国の金融機関における顧客情報などのデータ利用法についてまとめた記事を載せた。同記事は「最近、『ビッグデータ』という言葉をよく耳にする。ビッグデータとはその名の通り『巨大なデータ』ということだが、実際には顧客情報や顧客の活動に関するデータをいかに分析し、ビジネスに活用していくか、という観点から捉えられることが多い。その典型的な例は、インターネット関連企業が利用者の検索の履歴などを基にその利用者に合った広告を各種の媒体に掲載することである。ネット通販のアマゾンで本を買ったら、その後同社のサイトで、その本に関連のある本を薦められた経験を持つ人は多いだろう。また、ネット検索サイトグーグルの電子メールサービスである『Gメール』を利用すると、メールの内容に合った広告が画面の右側に表示される。このように、アマゾンやグーグルは顧客のオンライン上の行動パターンを分析して、広告やプロモーションに生かしているが、顧客の行動の分析は金融機関など他のさまざまな業界でも試行されている。例えば、米金融大手シティグループは、米コンピューター大手IBMのスーパーコンピューターである『ワトソン』を金融機関として初めて利用することを決定した。ワトソンは昨年、米国の人気クイズ番組で人間に圧勝した実績を持ち、2億㌻の文書をわずか3秒で読み、理解できるという。シティグループは、交流サイト(SNS)最大手米フェイスブックに投稿された顧客からのコメントなど膨大かつ整理されていないさまざまなデータの解析に、このスーパーコンピューターを利用するとみられる」としている。

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