早読み行政誌

ローカルかグローバルか、それが問題だ(2012年4月9日〜4月13日号)

地方行政

【4月9日号】 グローバル社会の今、ビジネスを持続・成功させるには「ローカル、グローバル」のいずれかに徹する戦略が不可欠です。どちらでもない中途半端なビジネスは、必ず淘汰される運命にあります。したがって「ローカル、グローバル」のいずれかに徹底できるまで、補助金や規制を使い「期間を明確に限って保護」しながらビジネスを育成する選択肢も必要になります。しかし、補助金や規制の多くは「半永久的な既得権」化していて、ビジネスの育成が進まず雇用や地域経済に深刻な影響を及ぼしています。(中略)補助金や規制などの保護は、そもそも「育成するまでの暫定的な措置」である原点に回帰して、育成すべき分野と期間を明確に定めるとよいでしょう。そして、各事業者は「ローカル、グローバル」のいずれかに徹するべきです。国や自治体はグローバル事業者とローカル事業者の「双方を分けて育成する発想とシステム」を持つ必要があります。具体的に言えば、国はグローバル事業者の育成に専念して、ローカル事業者の育成は自治体に任せます。自治体は各地域の特性に応じて、ローカル事業者を育成します。このシステムは、まさに地方自治(地方分権)の発想そのものです。(月曜連載「施策や施設をつくる前に『顧客を創る』地域再生」より)

【4月12日号】 地域の在来種は今でこそ注目を浴びているが、1960年代以降、次々と地域から消えていった。流通が大型化し、中央市場に出荷されて大手スーパーや量販店で販売されるようになると、在来種に代わる新たな品種が栽培されるようになったからだ。大手スーパーなどでは、日持ちがよく、病気に強く、形がそろい、大量に収穫でき、何より遠隔地の流通に向くものが喜ばれた。(中略)一方で、どこでも画一的な野菜が販売されるため、地域性や季節性が薄れ、味も単一化してしまう。こうした野菜を使うと、どこでだれがいつ料理しても同じような味になるということでもある。これに対し、在来種は一度にたくさん栽培できないし、日持ちもしない。病気に弱いものも少なくない。それでも、かつては地域内流通がほとんどだったことから、大量に栽培する必要がなく、在来種があればそれでよかった。しかし、流通の大型化に伴いだんだん栽培されなくなり、中には絶滅したものもある。(木曜連載「地域力と地域創造」より)

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内外教育

【4月10日号】 サービスラーニングという言葉を知っていますか?高校教員でつくる「全国公民科・社会科教育研究会」の授業研究委員会が3月末、横浜市内で「サービスラーニングを考える」というテーマで研究発表会を開いた。地域社会の課題解決を目指した社会参加活動に学習者を積極的に関与させることで、公民的資質を発達させることを狙いとした教育活動を指す。1960年頃に米国南部の大学で始まった。コミュニティーの課題に応じて、その問題解決を目指すが、幼稚園から大学まで発達段階に応じた教育プログラムがある。90年には「全国および地域サービス法」という名で法整備も終えている。社会と個人の関係性を考えさせるシチズンシップの観点からも検討される必要があるだろう。

【4月13日号】 日本では高等教育の授業料負担は家計が担うのが主体だ。一向に奨学金などの整備が進んでいない。文部科学省の直轄機関である科学技術政策研究所がこのほど「博士課程の修学と経済状況に関する調査」の結果をまとめた。日米比較では大学院の学費を全額免除された者の割合は米国57.3%、日本は1.7%。日本では、老いた親からの仕送りやアルバイトなどでの自己資金で修学する実態が浮かんだ。知識基盤社会というにはお寒い実態だ。研究者育成に向けた手厚い政策は、日本の国力維持に直結すると考えるべきであろう。

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厚生福祉

【4月10日号】 公立病院の経営改革をめぐっては、民間(医療法人)への譲渡や経営統合の動きも目立つ。特集「好転したのか、公立病院の経営状況」8回目は、こうした民間譲渡や統合がテーマ。譲渡・統合による医療機能の選択と集中、業務の効率化で黒字転換したケースなどを取り上げている。また、大学が仲介役となって、公立と民間や異なる自治体間での統合を現実化した兵庫県の例なども興味深い。特集「都道府県・政令都市2012年度厚生・労働・環境関係予算」11回目は、静岡県、福井県、大阪府。「事件・事故・裁判」では、重度知的障害者の逸失利益を認め和解が成立した裁判のニュースなどを取り上げた。

【4月13日号】 主婦やフリーターなど、定期的に健康診断を受ける機会を得にくい〝健診弱者〟は推定3300万人。こうした人たちがきちんと健康チェックをすることにより、病気が悪化する前に生活習慣を改善したり治療を受けたりすることができ、ひいては医療費削減につながる─。こうした考えから、500円より健診を受けられる会社を興した若者がいる。「ケアプロ」社長の川添高志氏による新連載「ワンコイン健診の現場から」1回目は、こうした起業の経緯などをつづっている。特集「都道府県・政令都市2012年度厚生・労働・環境関係予算」12回目は青森県、山口県、大分県、大阪市。「社説拝見」は、「外国人介護士をもっと合格させよ」と題し、経済連携協定(EPA)に基づく看護師、介護士の受け入れや、新児童手当、パート年金拡大などをめぐる各紙の論調を紹介する。

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税務経理

【4月10日】 巻頭の「フォーラム」は、一橋大名誉教授の石弘光氏が「消費税増税の景気弾力条項」と題して寄稿。3月末に国会に提出された消費増税関連法案をめぐる民主党内の議論で争点となった、増税をする際の目安となる「景気弾力条項」の取り扱いに関して論じている。最終的に努力目標として付則に盛り込まれた数値目標(名目成長率3%、実質成長率2%)について、増税を阻止しようとする手段そのものだとして反対の考えを示した上で、二つの理由を挙げた。「第一に、名目成長率が3%を超えたのはバブル期が崩壊する直前の1991年度の4.9%が最後であり、それ以降はその水準を大きく下回り、2001〜10年度の平均で名目成長率はマイナス0.6%、実質成長率でプラスの0.7%にとどまる。消費税率の引き上げは、このようなデフレ・低成長を前提に検討するべき時期に来ており、今この機会を逃すとギリシャの二の舞いになりかねない。第二の理由は、国内総生産が統計データとして最終的に確定するのに2年の歳月を要する。従って、消費税増税に踏み切るときに目安にする数値目標はあくまで、暫定あるいは見込みのデータを用いるしかない。後年になってこれらの数値は改変されることも多く、一国の税負担を決める大切な政策の発動にこのような性格のデータを用いるべきではあるまい」とした。

【4月13日号】 「私の苦心」欄は、「効率的な組織運営を目指して」と題し、北九州市の取り組みを紹介。一層の費用対効果が求められる徴収部門では、リーマン・ショック以降の景気低迷の影響もあり、北九州市の今年1月時点で滞納件数は1人当たり平均750件を抱え、きめ細かな対応は困難な状況にある。10年度の徴収率も93.8%と前年度より0.3ポイント低下しており、「このままの体制では徴収率の向上は望めそうもなく、徴税吏員という戦力の高度化、重点化を図っていかなければならない」と指摘。その上で、戦力の高度化に当たっては、専門職員の育成・配置が必要となるので、体系だった滞納整理研修等の充実はもちろん、異動に対する人事当局の理解にも努めなければならない。重点化に向けては、一定額以上の滞納者が滞納税額の90%以上を占める一方、滞納件数の40%は少額の滞納者で、その滞納税額はわずか5%程度にすぎない現状から、滞納税額の階層に応じて、持ち件数を設定するなど、滞納整理を効率的に推進していく体制を整えなければ徴収率の向上にはつながらないとし、「市政の根幹は市税にあることを踏まえれば、公平性の原則を常に念頭に置くことは当然としても、同時に『効率』という視点をもって組織運営に努めていきたい」としている。

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金融財政ビジネス

【4月9日号】 「日米いずれも春以降に不安」と題し、4月の景気動向と金融情勢に関する解説記事を掲載した。同記事は「海外部門の利益の減少を背景に、米国企業では増益幅が縮小に向かっている。企業利益の不振は設備投資と在庫投資に直接下押し圧力として働き、間接的には個人消費にも悪影響を及ぼす。一見堅調な米経済も先行きは不安だ。一方、日本経済は公的需要、住宅投資に確実な復興需要が期待できる。個人消費もエコカー補助金制度で、このところ堅調だ。今年1〜3月期の国内総生産(GDP)は堅調な姿となろう。しかし、個人消費や輸出、設備投資はその先に問題がありそうだ。春以降の日本経済は予断を許さない」としている。

【4月12日号】 「秋口までは円安が続く?」と題して、外国為替市場に関する分析記事を載せた。同記事は「2月14日に日銀が1%の『物価目標』の導入と追加金融緩和策を打ち出して以来、外国為替市場では『歴史的円高』が大きく修正され、株価も反発した。それまで、欧米に比べて日本の緩和が遅れていたため、円高になったとみられていたところに、日銀が積極的な緩和姿勢を見せたことで日本経済は転機を迎えた。同時にギリシャの債務危機がいったん小康状態を取り戻し、米景気の回復基調が量的緩和第3弾(QE3)に対する期待の後退につながったことも、ユーロ安やドル安への市場の懸念を沈静化させた。そればかりか、行き過ぎた金融緩和が原油高などのインフレ懸念を呼ぶとの批判も出始め、米国ではむしろドル高を容認する雰囲気さえうかがえる。3月下旬以降、円安の動きにも一服感がみられるが、内外の政策環境によって日本は相対的な緩和を継続できるのに対して、当面欧米の追加緩和は難しくなっているため、秋口までは円安が持続しやすくなったように見える」としている。

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