【5月14日号】 東日本大震災という近代では未曽有の天災をはじめ、財政悪化や雇用危機など自治体を取り巻く環境は厳しさを増している。まさに激変の時代である。その中で自治体幹部は、地域とそこに居住する人々を守る最前線にいて重責を担っている。求められる人材の要件とはどんなものだろうか。幹部となる人材を育成する必要性について異論のある人はいないだろう。しかし、そのための方法論となると百論百出である。各自治体では、幹部の選抜や育成のために人材育成基本方針を策定し、職場での指導や研修などに相当の時間をかけてきた。実際、自治体で実施される研修は、同規模の民間企業の研修に比べて充実していると言える。しかし、多くの時間や予算をかけている割に、時代の動きに合致した優秀な幹部がどんどん輩出されているという話は、残念ながらあまり聞かない。激変する時代に、地域の重責を担っている自治体幹部には、これまでの延長線にはない大局観や知見が必要であり、大きな改革については「荒野を切り開く」リーダーシップが不可欠であり、そのための新たな、大胆な方法論が必要となるのではないか。(月曜連載「激変時代の自治体幹部育成法を探る」より)
【5月17日号】 最近、元気な地域に行って、こんな方法があったのかと驚くことがたびたびある。それは、価値観とチャンネル(販路)の転換であり、それまでの手法に新しい道筋をつけることである。例えば、福島県会津地方の伝統工芸である会津漆器の木地(素地)を作る丸祐製作所(同県会津若松市)は、インターネットでつながりが生まれた県外の業者からの注文が増え、もともと取引があった地元業者の注文額を上回ったという。会津漆器の製作は分業化されている。素地を作る工房と漆を塗る工房に分かれ、素地に漆を何度も塗り重ねて漆器が作られる。それを地元業者が販売してきた。ところが、インターネットでつながった県外の業者は、従来の漆工芸ではなく、木の生地を活かしたナチュラルな器を販売した。それが売れ始めたのである。消費者の購入傾向が変化してきたことの表れだろう。(木曜連載「地域力と地域創造」より)
【5月15日号】 衆参のねじれで動かない政治。20年続いた小沢政局が今も途切れない。この事態を前にして、霞が関の官僚たちは何を考えているのか。文部科学省の初等中等教育局長から今年1月、文教担当の審議官となった山中伸一は、福島の学校巡りを続けている。時間が空けば、霞が関から福島に向かっているという。原発事故の影響を受けた子どもたちの学習状況を確認するためだ。巻頭インタビュー「あすの政策」で、じっくり聞いた。見出しは、「制度論より実質対応を」。動かない政治を待っていてもしょうがない、自らやれる範囲でやろう—そんな官僚の思いがにじむインタビュー記事だ。
【5月18日号】 京都府亀岡市で集団登校していた児童の列に無免許運転の少年が運転する軽自動車が突っ込み、2人が死亡する事故が起きた。その事故後、加害少年の親に被害者側の氏名や住所を警察官が知らせていた。これに加えて、被害に遭った児童の小学校の教頭が、事故で亡くなった女性の携帯電話の番号を加害者側に伝えていたことが判明し問題となった。この教頭の法的責任を「教育法規あらかると」で分析した。最終ページのコラム「ラウンジ」では、危機管理として、処分を覚悟の上、あえて全生徒の名簿を持ち歩いていた校長経験者の告白が載っている。危機と個人情報の問題を考えさせる。
【5月15日号】 ハンガリーの国立大学医学部は、外貨獲得の手段として外国人を積極的に受け入れており、各国からの留学生が学んでいるという。日本人も例外ではない。同国で医師免許を取得すればEU域内で医師として働くことができ、EU以外なら同国で学んだ後に自国の医師国家試験に合格すればよい。ノルウェーは自国に医科大学をつくるより安上がりということで、国が補助金を出して留学させているというから驚きだ。巻頭言で慶応義塾大医学部客員教授の岩尾總一郎氏が、医学部増設の可否でもめている日本にとっても、こうした海外での医学教育は選択肢の一つになるかもしれないと示唆している。社会保障と税の一体改革の中で重要なポイントとなる子ども・子育て新システム。子育て支援をめぐってはさまざまな意見があり、審議の行方も不透明な中で、政府案の策定に携わった内閣府の村木厚子政策統括官に新システムの狙いなどを語ってもらったインタビュー記事を掲載した。東日本大震災被災者の仮設住宅で4月、死後数日以上経った2遺体が発見された。「孤独死」を防ごうと自治体などがさまざまな取り組みを行う中で、なぜ避けられなかったのか。詳報を掲載。特集「都道府県・政令都市2012年度厚生・労働・環境関係予算」19回目は札幌市、相模原市。
【5月18日号】 スタッフの確保が難しいなど医療資源に乏しい地域で、中核的な役割を果たしている病院は少なくない。厚生労働省は、診療報酬を受け取りやすくすることで地域医療の維持を後押ししようと、こうした地域について今年度から「栄養サポート加算」などの算定要件を緩和する。どの程度の申請があり、どの程度効果が出るかは未知数ながら、朗報だろう。要件緩和の対象となる二次医療圏のリストと合わせ掲載した。特集「好転したのか、公立病院の経営状況」12回目は、公立病院の医業収益および医療費の動向を、総務省や厚労省の資料からひもとく。公立病院以外の公的病院の医業収益や全体の医療費は増えているのに公立病院の収益は減っていること、患者1人1日当たりの診療単価は増えているが患者数の減少がそれを上回ること──などが分かる。「地域を支える」は東日本大震災時に拠点病院の役割を一手に担い、「震災後」に向けて機能強化・充実を図る石巻赤十字病院を紹介。特集「都道府県・政令都市2012年度厚生・労働・環境関係予算」20回目は神奈川県、神戸市。
【5月15日号】 「私の苦心」欄は、「三つの意識」と題し、鳥取県の取り組みを紹介。2012年度が県職員として最後の年度であるという筆者が、新年度を迎えるに当たり、職員に話した事柄が「三つの意識」。それによると、一つは「税務職員としての意識」。税金の仕事は行政の最前線。最前線だからいろいろな弾が飛んでくる。でも、この弾は当たっても死なない。避けることもあるだろうけど前進してほしい。前進するためには覚悟が要る。覚悟を支えるのは自分の後方に善良な納税者がいるという意識と自主財源を担っているという自負心。二つ目は「周りに対する意識」。前後左右(自分の周り=係→課→局)への意識と上下(県行政←→世の中の動向)への意識を持ってほしい。立体的な意識を持つこと(ナビゲーション)で自分の立つべき位置(ポジショニング)が分かる。三つ目は「感謝する気持ち」。最後に「税の業務はやればやるだけ困難を生じる仕事かもしれない。でも、やればやるだけやりがいのある仕事でもあると思う。職員それぞれが『三つの意識』を高め、お互いを励まし合いながら、覚悟を持って最前線に立てるような職場にしなければならないと思っている」と結んでいる。
【5月18日号】 税制をめぐる意見などを載せる「直言苦言」欄では、「もう一つの『歳入庁構想』と題し、政府が消費税増税を担保するため納税環境の整備策として打ち出した「歳入庁」構想に関して提案をしている。政府が4月にまとめた中間報告では、国税庁と日本年金機構の統合、徴収部門のみの部分的統合などの案が提示されたが、当初対象にしていた地方税や国民健康保険料への言及もなく、腰砕けと取られかねない中味になったと指摘。その上で、徴収技術という高度な専門性が歳入庁を考える際の重要なキーワードだとし、歳入庁を総務省の外局とすることを提案。そのメリットとして、地方税の徴収まで含めることもでき、低い徴収率に悩む国保税の滞納整理問題にも解決の糸口が見いだせるなどを挙げている。
【5月14日号】 「日米とも1〜3月期は個人消費が主役」と題し、5月の景気動向と金融情勢に関する記事を掲載した。同記事は「米国の2012年1〜3月期の国内総生産(GDP)は、家計部門に支えられた一方、企業部門は冴えない動きとなった。企業利益は頭打ちの傾向が鮮明になっており、企業部門は不振が続こう。個人消費も、雇用の改善ペースの鈍化や株高局面の修正から先行きが不安だ。今後の成長率は低いものとなろう。日本の1〜3月期GDPは個人消費に支えられ、大きく伸びたとみられる。ただし、エコカー補助金の効果は長く続かないとみられ、本来主役となるべき輸出にも多くを期待できないことから、日本経済は次第に尻すぼみとなる可能性が高い」としている。
【5月17日号】 「どうみる『緩やかな改善』の蓋然性」と題して、欧州、米国、中国、日本の経済が抱える課題について検証した記事を掲載した。同記事は「今日の世界経済を見ると、各国・地域とも、それぞれに難しい問題を抱えている。しかし、国際機関等が示すメーンシナリオでは、13年に向けグローバル経済は緩やかに改善していく姿となっている。そのシナリオの蓋然性をどうみておけばよいのだろうか。以下では、欧州、米国、中国、そして日本について、それぞれが直面する問題の所在とそれらへの対応状況を概観し、それを考えてみたい。その上で、日本経済が今後取り組むべき課題について最後に整理することとしたい」としている。