【6月7日号】 地方自治体は、市民に最も身近な行政組織であり、発信する情報が市民生活に与える影響は大きい。しかし、自治体のウェブサイトは分かりにくいと評されることが多く、その結果、市民に不快感を与えるだけではなく、生命と財産に損害を与える恐れもある。自治体サイトの分かりにくさは、(1)情報の見つけにくさ(2)情報の網羅性の低さ(3)文章表現の分かりにくさ──といった問題がある。情報の見つけにくさのうち、アクセシビリティについての取り組みが始まっているものの、ユーザビリティ、情報の網羅性の低さについてはほとんど認識されていない。文章表現の分かりにくさについては、公用文・法令文に関する規定があるのみで、学術的見解や企業による取り組みとは視点が異なる。そこで、自治体サイトを分かりやすくするための文章表現について考察し、「自治体サイトが分かりにくい要因として、サイト構造などの要素以外に、文章の分かりにくさの影響もある」という仮説を立てた。仮説検証のため、学術的見解と企業の取り組みを取り入れ、自治体文章を理解しやすく改善するガイドラインを作成し、ガイドラインに沿って文章を書き換えたウェブサイトを使って実験を行った。(木曜隔週連載「文章表現の適切さが自治体サイトに与える影響」より)
【6月5日号】 小学校5、6年生で外国語活動が正式に始まったのは2011年度から。1年余を経過したのだが、学校現場で指導に当たる教師や校長、教育委員会はどのようにこれまでの活動をみているのか。そんな現場の自己評価を問うた調査を日本英語検定協会が試みた。大枠は「半数以上が狙い通りの効果を上げていると感じているが、課題や不安も残る」というものだった。あれだけ議論を呼んだ小学校への外国語導入だったのだから、文科省主導での本格的な検証は必要だ。とりあえずの傾向は読み取れる参考調査として読むことができる。
【6月8日号】 通常学級に在籍したまま通級指導教室で専門的な支援を受ける児童・生徒は6万5360人と過去最多を更新した。通級指導はここ数年、5000人を超すペースで増加している。これに対応する担当教員も過去3年間で2割以上増えているが、実態は支援が必要な児童・生徒の増加にやっと追い付いているのが現状だ。その支援の質はどうなっているのか。文部科学省が発表した2011年度特別支援教育調査を基に特別支援の現場を読み解いてみた。
【6月5日号】 新型インフルエンザへの対策を定めた特別措置法が4月末に成立した。集会の中止など私人の権利を制限する内容を含み、一部の医療関係者や法律家らからは反対論も上がっている。特集「新型インフルエンザ」では、(上)(下)2回にわたり、この特措法の問題点や意義などを検証する。「地域を支える」は、知的障害児童に一般の企業で働く体験をさせる和歌山自立支援センターの取り組みを紹介する。5月前期の「社説拝見」は、「超高齢社会を考える」と題し、高齢化社会対策や生活保護、子ども・子育て法案、原発ゼロなどをめぐる各紙の論調を取り上げた。
【6月8日号】 特集「2012年世界禁煙デー たばこ対策、新たな段階へ」は、厚生労働省などが開催したシンポジウムのもようを紹介。厚労省の禁煙週間のキャッチフレーズ「命を守る政策を!」をテーマに、国や自治体による受動喫煙防止の取り組みなどをめぐりディスカッションがなされた。その中で、世界保健機関(WHO)の今年の禁煙デーの標語「たばこ産業の干渉を阻止しよう」とそのCMは、マイルドな標語・対策しかとってこなかった日本にとってかなりインパクトあるものだった。「地域を支える」は、独り暮らしの高齢者の安否を確認する山口市社会福祉協議会阿知須支部の「友愛訪問」を紹介。独り暮らしの高齢者が増加し、「孤立死」が問題となる中で、一つの参考になりそうだ。
【6月5日号】 巻頭の「フォーラム」は、慶応大法学部教授の片山善博氏が「税の使いみちを振り返る」と題して寄稿。4月に京都府亀岡市で起こった痛ましい交通事故を引き合いに、「全国の自治体関係者にも、この事故を他人事だと片づけることなく、税の使いみちを間違えないようにとの戒めにしてほしい」とした上で、景気対策としての公共事業の陰で、「市街地の生活道路に歩道を設ける工事などは手つかずのまま残され、逆に人があまり住んでいない農山村部では用地買収も比較的容易なので予算化され、皮肉なことにこうした道路は道幅も広く、歩道もガードレールも整備されている。歩行者などめったに見かけないというのに」と指摘。「膨大な財政資金が必ずしも優先度の高くない箇所に充てられ、結果として全国各地に危険な生活道路が数多く残されている現状は、どうみても税の使いみちを間違えていたというほかない」と結んでいる。
【6月8日号】 「フォーラム」は、四国大特命教授の牛嶋正氏が「生活保護制度と年金改革」と題して寄稿。厚生労働省が発表した2011年度の生活保護受給者数を基に、増加し続けている同受給者の伸びは「国全体として所得格差が広がっていることを表すとともに、わが国社会の不安定要因の拡大として捉えねばならない」とした上で、「高齢者における生活保護受給者の増大は、低年金・無年金者の増大・拡大を意味する」と強調。政府・民主党が考えている、年金制度を一元化し、月額7万円を支給する「最低保障年金」を創設しても「低年金・無年金者の拡大を防ぐことはできないだろう」と指摘し、「年金給付額が一律の年金制度の下で、最低限度の生活が保障されることになれば、誰もが生活設計を立てることが容易になり、現行の年金制度で問題とされている年金制度への不信・不安も解消され、制度の持続可能性は増大に向かうことになるだろう」としている。
【6月7日号】 「軽減税率は逆進性対策にならず」と題して、消費増税の論点の1つである軽減税率の問題について解説した記事を掲載した。同記事は「社会保障と税の一体改革関連法案について、国会で審議が始まった。年金、医療保険、介護保険、子育て支援のそれぞれについて論点は数多くあるが、人々の関心が最も強いのは消費税率の引き上げ問題だろう。社会保障制度の持続性を回復させつつ、悪化が著しい財政の問題を解決していくには、効率的な社会保障制度の再構築と一定の国民負担増が不可欠である。ただ、消費税率の引き上げについて与党内ですら激しい意見の対立が続いている上、国会では衆参両院で多数派が異なっている。野田佳彦首相が『政治生命を懸けている』という一体改革がどのような結論となるか、予断を許さない状況にある」としている。