【6月25日号】 消費者に来てもらう集客施設は「商圏」という概念が非常に重要ですが、どうも公務員は商圏の重要性を意識できていないようです。商圏をわかりやすく定義すると、商売が成立するのに必要な「地域の範囲、人口規模」です。例えば、映画館は現在、人口25万人の商圏でビジネスとして成立するといわれています。昔はもっと小さな商圏にも映画館はありましたが、シネマコンプレックス(シネコン)を設置する郊外大型商業施設の台頭と、自宅でDVDを見て満たされる文化の定着により、映画館の商圏は25万人が必要になりました。(中略)百貨店は近い将来、人口50万人商圏でないと成立しない(存続できない)と私は予想しています。また、商圏は「地域の範囲」を意識する必要があります。岐阜市のように人口40万人以上の県庁所在市であっても、名古屋市まで鉄道で18分の範囲にあれば、日用品などを除くと、名古屋商圏に吸収されてしまいます。名古屋市より見劣りする中途半端な高層ビルを建設した岐阜市の箱物行政は「商圏の人口規模」は考えても「商圏の範囲(近隣都市との競合)」を全く意識できていなかったと言わざるを得ません。(月曜連載「施策や施設をつくる前に『顧客を創る』地域再生」より)
【6月28日号】 条例の上書き権に加えて、「法律を超える条例もありではないか」と過激な発言をする市長まで登場する昨今。では「市条例でそれに違反すると懲役刑」なんてのは「あり」なのだろうか。池田市では、平成8年9月定例議会に「五月山景観保全条例」を提案し、全会一致で可決されている。墓地開発から市民の宝である里山の景観を守るために、私有地に対しても一定の制限を設け、それに従わない場合は1年の懲役刑を科するというものである。条例で懲役刑──しからばその条例に基づいて誰が告発し、その告発に基づいて警察や検察が動いてくれるのだろうか。裁判所がその条例に基づいて「1年の懲役を申し渡す」となるのだろうか。今考えてみると何となく危なっかしい話である。「前例主義からの脱却」とは「悪しき前例に従うな」ということであり、「良き前例は多いに見習うべし」というのが私のモットーである。五月山の墓地開発で頭を痛めていた私に「京都市の景観保全条例は懲役刑1年付きですよ」と職員が教えてくれた。これこそ「良き前例」であった。(中略)私は強引に原案をつくらせ議会に臨んだ。(「地域分権制度から考える『国のかたちとコミュ二ティ』」より)
【6月26日号】 「法に関する学習」が新指導要領では目玉の一つになっている。中学校では現代社会を捉える見方や考え方として「対立と合意、効率と公正」を、高校の現代社会では導入で社会の在り方を考察する基盤として「幸福、正義、公正」について理解させるとしている。しかし、こうした概念は生徒にとっても難しく、教員にとってもなかなか扱いづらいのも事実だ。社会科教育が専門の大学教員らでつくる「法に関する教育教材開発研究会」(代表・橋本康弘福井大学准教授)が6月中旬に都内で開いたシンポジウムのもようを詳報した。法の本質を教室でどのように教えるのか。社会科という教科レベルを超える本質的な議論が展開された。
【6月29日号】 2011年度文部科学白書が5月22日の閣議に報告され、公表された。東日本大震災の教訓を教育行政全体の課題と捉えて、政府が目指す「創造的復興」に不可欠な人材育成に取り組む基本的な考え方を示した、というのだが…。しかし、10年度白書と重複する部分が多い。確かに、歴史的災害に見舞われたから当然と言えば、当然のような気もするが、入試センターでの過去最大のトラブルには触れていないなど、都合の悪い事象はあえて報告しないのか、という気にさせる。1ページでコンパクトにまとめた白書の読み方が掲載されている。文科省の姿勢をあなたなら、どう評価しますか?内外教育で判断してみてください。
【6月26日号】 売れっ子芸能人の親の生活保護受給がいっとき世間をにぎわせたが、現実には親に対する子の扶養義務よりも、子に対する親の扶養義務、すなわち養育費支払いの確保の方が喫緊の課題だという。巻頭言で弁護士の佐野みゆき氏が、離婚後の養育費確保が困難である現状を示した上で、横断的な法改正の必要性を説いている。特集「好転したのか、公立病院の経営状況」17回目は、前回に引き続き地方自治体一般会計からの繰入金がテーマ。繰入金の仕組みや現状を概観した後、小樽市、東京都の個別の状況にスポットを当てる。「進言」は、障害者1000人雇用を目指す岡山県総社市の取り組みについて語っている。障害者雇用では、農業就労を推進する厚生労働省の新たな施策も注目だ。5月後期の「社説拝見」は、大学生の就職率の改善や、生活保護の適正受給、社会保障改革などをめぐる各紙の論調を紹介する。
【6月26日号】 市町村アカデミー紙上研修「地方税総則─基礎から実務まで」は本号で50回目を迎え、納税の猶予制度を詳説。また、東証1部上場企業の2012年3月期決算および日銀の2011年度決算の解説記事を掲載した。「私の苦心」欄は「新たな個人県民税対策の模索を」と題し、長野県長野地方事務所の取り組みを紹介。それによると、「意識改革」の継続、「先手必勝」「創意工夫」を、滞納繰り越し分の8割近くを占める個人県民税徴収対策の土台として力を入れるとともに、「市町村から頼りにされるような県の現地機関として徴収技術の研さんを積み、市町村と県の垣根を越えて『協働』から『融合』へと進化した滞納整理体制を構築していきたい」としている。
【6月25日号】 「IFRS、受け入れ難しいオバマ政権」と題して、米国での国際会計基準(IFRS)の動向について解説した記事を掲載した。同記事は「IFRSは数年前まで、世界中の企業が採用する『世界でただ一組の高品質で、グローバルな会計基準』として資本主義経済圏を席巻する勢いがあった。しかし、米国が製造業の復活と輸出倍増を図ろうとしている中、果たしてIFRSのような『企業売買のための会計』『企業解体の儲けを計算するための会計』を、同国の産業界が歓迎するだろうか。1年ほど前に日本が『IFRS再考』に舵を切った原因の一つ、それも最も影響のあった原因が、産業界(特に製造業)からの『要望』(『わが国のIFRS対応に関する要望』2011年5月25日)だったことからすると、米国でIFRSを強制適用(アドプション)でもしようものなら産業界から同様の反発が生まれることは想像に難くない。金融立国といっても儲けるのは金融界の一部であり、大多数の国民はその『おこぼれ』にもあずかれないのである。IFRSは金融界の住人が求める会計ルールであったとしても、輸出の拡大にも雇用の増加にもつながらない。オバマ米大統領が進める経済政策からすれば、受け入れられるものではないだろう」としている。
【6月28日号】 「雇用や設備投資に悪影響」と題して、人口減少と経済停滞の関係について分析した記事を掲載した。同記事は「人口の減少が、日本経済を停滞させる原因になっている。日本全国津々浦々を歩くと、住民の減少が地域経済を疲弊させている状況はあちこちで確認できる。人口の減少が及ぼす悪影響については論をまたないだろう。また、経済が疲弊することにより地域の人口移動が起き、人口減少の悪影響がネガティブ・フィードバックを起こしていることも見逃せない。各地域の年代別人口のデータを見ると、20歳代前半での移動が多く、これは進学や就職の際に地元を離れるケースが多いことによる。『地元で就職したいが、生活していける仕事が乏しい』『地元に雇用吸収力のある職場が見当たらない』などの事情が、中・長期のタイムスパンでみて、各地域の人口減少の趨勢を生み出している。日本全体では出生率の低下が問題となっているが、そうした視点ばかりでは、人口減少と経済停滞の悪循環が現象面で表れていることをリアリティーを持って分析できない。本稿では、人口減少と経済停滞の関係を、成長理論をベースにしながら明らかにしていく。難しい理屈や複雑な計算式を用いることなく、『直感』を生かしながら説明に徹していきたい」としている。