早読み行政誌

公立病院の見事な復活再生 (2012年7月9日〜7月13日号)

地方行政

【7月9日号】 前回、百貨店など大型商業施設が地方都市で撤退あるいは「大幅な減床、徹底した日常化のリニューアル」を加速させている動向を詳解しました。この動向と事情は、地方都市の街中スーパーにも見られます。街中スーパーも「物を売るだけでは存続が困難」な事情に変わりはなく、街中スーパーが「市民の憩いの場」に進化して存続を図る動向を今回は考察します。大分県豊後高田市に商店街活性化の成功事例として有名な「レトロ商店街」があります。同商店街は、ほとんどの成功事例集に「年間20万人の観光客が訪れる」と喧伝されています。本稿の論点は「観光客が本当に今も来ているか」ではなく、レトロ商店街が「地元市民の溜まり場、買い物の場」になっているかです。アニメのキャラクター銅像が多数あることで有名な鳥取県境港市の「水木しげるロード」には、年間100万人以上の「観光客が訪れる」そうです。しかし、取扱商品も土産物中心の「観光客向け」で、「地元市民が買う日常品はほとんどない」といいます。つまり、商店街が観光客相手に「非日常化」したことで、地元市民はそこに行けなくなってしまったのです。さて、豊後高田市のレトロ商店街はどうでしょうか? 2011年8月27日(土)、レトロ商店街へ行きました。夏休み中の土曜日午後、観光には絶好の時期です。約2時間滞在しましたが、観光客はまばらでした。地元市民が日常の買い物をする姿は皆無でした。(施策や施設をつくる前に「顧客を創る」地域再生)

【7月12日号】 時事通信社は、都道府県と政令市、県庁所在市、中核市を対象に2012年度当初時点の各種基金の積み立て・取り崩し状況を調査した。都道府県の11年度末各種基金残高は前年度比1・0%減となる見込みで、小幅の減少にとどまった。政令市や県庁所在市など他の団体では残高が増える見通しで、全体的に回復傾向を示している。都道府県の12年度末残高(熊本県は骨格予算)は21・5%減の見込み。12年度当初時点では、歳出面では社会保障関係費の増大を織り込む一方、歳入面では税収額を厳しく見積もる自治体が多い。こうした中、東日本大震災を教訓にした防災対策などで投資的経費を伸ばし、基金を取り崩して財源に充てる自治体も出てきた。10年度以降、交付税を含む地方財政計画は高い水準で確保され、三位一体改革で揺れた数年前に比べ、交付税総額も予見しやすくなっている。こうした地方財政をめぐる情勢の変化を背景に、自治体が安定した財政運営に着手できるようになった状況もうかがえる。(自治体の各種基金調べ)

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内外教育

【7月10日号】 勉強しない日本の大学生—。今に始まったことではない。再び問題になっている。トップクラスのある国立大学総長から「俺たちの時代より、今の学生の方が勉強している」と評価する声を聞いたことがあるのだが、統計数字を見るとやはり日本の大学生は諸外国より学習時間数は少ない。ベネッセ教育開発センターが東京と大阪で、「主体的な学びへ導く授業とは」をテーマにシンポジウムを6月末から7月初めにかけて開催した。両方の会場ともに大学教員や職員ら約300人が集まり、関心の高さをうかがわせた。周囲の関心が高くとも、学生そのものに高校から大学への学びの転換を意識できなければ意味はあり得ないのかもしれないが。シンポでのやりとりが興味深い。

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厚生福祉

【7月10日号】 神奈川県大和市立病院の2011年度決算が、21年ぶりに最終黒字となる見通しとなった。07年度の約11億円という過去最悪の赤字から立て直しての見事な復活再生。公立病院の経営改善例は他にもあるが、大和市が採ったのは奇策・秘策ではなく、そこで働く人を大事にする極めて地道な手法だった(シリーズ「公立病院の経営改善 市立病院、21年ぶりの黒字見込みに」)。強制わいせつ事件の被害者が10歳少女の場合、果たして告訴能力は認められるのか。幼さを理由に告訴能力を認めなかった富山地裁判決に対し、控訴審の名古屋高裁金沢支部は一転してこれを認め、審理を地裁に差し戻した。子どもが被害者になる性犯罪が後を絶たない中で、被害の重大性に鑑み、子どもの訴えを重視した判断といえる(「10歳少女の告訴能力認める」)。

【7月13日号】 アスベスト(石綿)被害が広がる中で、アスベストによる悪性中皮腫の有効な治療法を確立しようと、「日本中皮腫研究機構」が発足した。悪性中皮腫は症例も治療に携わる医師も少なく、確実な治療法がないのが現状。理事長を務める中野孝司・兵庫医科大主任教授に今後の運営などを尋ねた(インタビュー「研究者結集し治療法確立を」)。特集「好転したのか、公立病院の経営状況」19回目は、引き続き一般会計からの繰入金をテーマに、公立病院の会計制度の見直しについて見ていく。「インタビュールーム」は、全国初の県立病院を拠点とする性暴力被害者支援について、佐賀県DV総合対策センター所長の原健一氏に尋ねた。「海外トピックス」では、世界で初めて全国民を対象とする精神疾患検診に乗り出す韓国などの話題を紹介。

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税務経理

【7月10日号】 私の苦心は、「債権管理への取り組み」と題して、静岡県藤枝市の取り組みを紹介。それによると、同市は債権回収対策室を設置し、2010年度から税および税以外の債権を合わせて徴収する一元的徴収を開始。職員のモチベーションを確保するため、組織目標として徴収等効果目標額を設定している。2011年度は移管件数622件、移管総額4億210万円に対し、1億5528万円の事業効果額を挙げた。収入未済額の指標は、税を含む主要15債権(市税、国民健康保険税、後期高齢者医療保険料など)の合計収入未済額とし、11年度の収入未済合計額は33億3000万円(2009年度約35億円)と順調に減少している。また、税外職員への研修・指導により、税以外の債権担当課で差し押さえを行うなどの効果も表れている。同市では「職員個々の経験・知識に頼るだけでなく、職員研修などにより組織として徴収力を強化し、収入の確保、収入未済額の削減を計画的に行うため、効果的に事業を推進していきたい」としている。

【7月13日号】 私の苦心は、「自動車税の徴収は全員参加で」と題して、大分県の取り組みを紹介。自動車関連産業の集積地域である中津市、宇佐市、豊後高田市の3市を所管する中津県税事務所は、自動車税の徴収率アップと収入未済額圧縮のため、2011年度は収入未済額の大幅な圧縮を目指すこととし、マンパワーの充実方策として、▽形だけの徴収参加者をつくらず、全員参加で行う▽職責や経験にかかわらず、全職員が同一歩調で滞納整理を進める▽徴収業務が不慣れな人にも成果の出やすい仕組みをつくる▽成果を実感し、次のやる気につなげる仕組みをつくる—などを盛り込んだ全員参加が可能な徴収計画を策定して、取り組んだ。その結果、現年度分徴収率は前年度比0.54ポイントアップの99.52%、滞納繰越分を合わせた徴収率でも1.03ポイントアップの98.20%と改善した。同県税事務所では「皆よく、少しの時間を見つけ、電話催告、臨戸に取り組んでくれ、全員参加により大きな成果を得られた」としている。

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金融財政ビジネス

【7月9日号】 「日米共に景気は先行き減速」と題して、7月の景気動向と金融情勢についてまとめた記事を掲載した。同記事は「米国の企業利益は1〜3月期に前期比マイナスに転じた。企業業績の減速は、雇用・賃金の抑制ばかりでなく、株価の不振というルートからも個人消費に負の影響を及ぼす。既に減速している設備投資に加え、個人消費も減速に向かうことから、同国の経済成長率は先行き鈍化するとみられる。日本においても、エコカー補助金効果が早晩失われることから、個人消費は景気の牽引役を降りることになる。復興需要により公共投資、住宅投資はある程度の伸びを続けるとみられるが、力不足だ。日本経済も先行き伸びが大きく鈍化していこう」としている。

【7月12日号】 「今、なぜ高橋是清の財政政策か」と題し、高橋是清蔵相が戦前に実施した日銀による国債引き受け政策について、歴史的な背景を交えながら検証した記事を掲載した。同記事は「わが国では、デフレ的な停滞が長く続く中で、戦前の『高橋財政』が話題に上ることが多くなった。高橋是清は、1913年に発足した第1次山本権兵衛内閣での蔵相就任以来7代の内閣で蔵相を務めたが、そのうち特に犬養毅、斎藤実、岡田啓介と続く3代の内閣で実施した財政運営(31年12月〜36年2月)が、一般に高橋財政と呼ばれている。当時の財政運営について、いわゆるケインズ的政策が成功したという評価がある半面、激しいインフレをもたらしたとする批判的な見方も強い」としている。

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