【8月6日号】 人は「あそこに行けば誰か知り合いや仲間がいるという、交流への期待感」を持って、行く場所と時間帯を考えます。この傾向は、高齢者と幼児に顕著に見られます。なぜなら、職場や学校という嫌でも毎日通う「習慣性と滞留性を兼ね備えた溜まり場」を持てない立場にいるからです。そう、溜まり場には「習慣性、滞留性」が必要です。高齢者(大人)になると、溜まり場に来る「言い訳」も必要になります。この交流に必要な三つの要素「習慣性、滞留性、言い訳」を、私たち現役世代は気づけないでいます。この「気づき(利用者配慮)」が「自治体が建設する交流センター」には決定的に欠けています。ここに「中身(テナント構成)はほとんど同じ」なのに「利用者満足度、利用者数」に雲泥の差がつく理由があります。自治体が交流拠点の建設・運営をうまくできていなくても、幼児は溜まり場に困っていません。なぜなら、幼児は「プライド(言い訳)」を気にしません。遊ぶことが「習慣(本分)」だと誰もが認識できます。その遊び場は「滞留」できるよう建設・設計することが容易だから、公園など遊び場は自然に「溜まり場」となります。しかし、交流拠点の建設・運営がうまくできていない状況で高齢者は、溜まり場の3要素「習慣性、滞留性、言い訳」を自分で見つける必要があります。(月曜連載「施策や施設をつくる前に『顧客を創る』地域再生」)
【8月9日号】 情報を正確に、迅速に伝えるには、新聞など報道文の基準の方が適切であると考える。自治体の中でも広報担当セクションは、公用文ではなく、新聞社の報道文を基にした「広報文」のルールで文章を書いていることが多い。しかし、それ以外の職員は、そのようなルールの存在すら知らない。職員は、法令文、公用文、広報文を使い分けることが必要だが、その意識がない。紙媒体の広報紙は広報担当セクションが担当しているが、ウェブページについては、各担当に委ねられていることが多い。すべての文章を広報課が編集・校正することは不可能であるため、ノーチェックの文章がそのまま住民に伝えられているのが現状である。このことも、分かりやすく伝えることができない原因の一つであろう。また、自治体職員のキャリアスパイラルも問題をはらんでいる。一般的には3〜5年程度で異動するので、そのたびに担当する業務が大きく変わる。民間企業で言えば、経理、営業、企画、人事といった職務内容の変化だけでなく、販売する商品やサービスが全く違ったものになるのと同じである。(木曜隔週連載「文章表現の適切さが自治体サイトに与える影響」)
【8月7日号】 「民主主義社会は何でも自分で考えて決めなければならず、面倒くさくて疲れる社会。大人も子どもも考える人にならなければならないが、その面倒くさいことをする余裕が社会から失われている。子どもの世界ではそれがいじめという形で現れている」。湯浅誠反貧困ネットワーク事務局長が7月末、福井市で開かれたNIE(教育に新聞を)全国大会の特別講演でこう指摘した。新聞を読んで「考える人」になれるのか。教育の中で新聞がどう活用されるかだ。大会の様子を2ページにわたってリポートした。
8月10日号 個人情報保護法が施行されてから7年が過ぎた。今春、京都府亀岡市で集団登校の児童の列に車が突っ込み、小学生ら10人が死傷した事故で、被害者側に謝罪したいという加害少年の親族の申し出に、教頭が学校の調査票にあった携帯電話番号を教えていたことが発覚、書類送検された。個人情報の第三者への公表について、同法は同意を原則としているからだ。では、学校で第三者への公表を拒む保護者がいた場合、緊急連絡のための名簿も作成できないのか? 社会の公共性を分断する側面を持つ法律である。この法律下で、先生はどう対応すればいいのか? 日本女子大で開かれたワークショップの模様を伝えるリポートが、それへの解答だ。
【8月7日号】 iPadを全ての救急車に配備し、救急搬送状況をリアルタイムで把握できるようにした佐賀県の「医療機関情報・救急医療情報システム」(99さがネット)が注目されている。救急搬送時間を短縮させるなどの成果を挙げ、春にはモバイル関連メーカーなどでつくる団体の最高賞を受賞。他の県も導入または導入を検討するなど広がりを見せている。そのシステムの具体的な内容や開発の経緯、課題などを取材した(特集「iPadでたらい回しを防げ」)。「地域を支える」は、横浜市福祉サービス協会によるデイサービスのレシピ本刊行の話題。厨房スタッフが日々工夫をこらしたオリジナルメニューは、栄養バランスはもちろん味や見た目にもこだわったもので、「栄養が大事で味は二の次」といったデイサービスの食事への“偏見”を払拭する内容だ。
【8月10日号】 東日本大震災の被災地で、認知症が深刻化している。環境の変化が大きな要因だという。民間団体「石巻医療圏健康・生活復興協議会」の調査などを基に、被災地の現状を伝える(特集「被災地で深刻化する認知症」。「インタビュールーム」は、人口あたりの医師数が全国46位という茨城県で、地域医療に携わる若手医師らをサポートする「茨城県地域医療支援センター」のキャリアコーディネーター、小島寛さん。特集「特定看護師」4回目は、日本で最初にNP養成に乗り出した大分県立看護科学大学のプライマリケア領域のNP養成教育の内容を紹介する。7月前期の「社説拝見」は、「最低賃金引き上げをめぐって」と題し、最低賃金改定や水俣病の救済期限切れ問題、年金問題などをめぐる各紙の論調を取り上げた。
【8月7日号】 巻頭の「フォーラム」は、東大名誉教授の神野直彦氏が「所得税の解体から補強へ」と題して寄稿。「先進諸国の中で、所得税中心税制が限界に突き当たった時に、デンマークなど租税負担率の高いスカンジナビア諸国は、所得税の応能的公平性を守りながら、所得捕捉における公平性の限界と税収調達能力における限界を、付加価値税によって補強し、補強による増収は教育・医療・福祉という対人社会サービスの増強に充当した」ことなどを紹介。その上で、「米国は対人社会サービスを充実させずに『小さな政府』を目指した。しかし、『小さな政府』にすると、格差や貧困があふれ出るため、所得税中心税制を維持し、付加価値税を導入しなかったのである。日本は米国同様に『小さな政府』を目指しながら、所得税解体戦略を採用した。つまり、所得税を補強するのではなく、所得税の公平性と税収調達能力を解体しながら、付加価値税つまり消費税を補強した。結果は悲劇的であった。『失われた20年』を経験したからである。社会保障・税一体改革は所得税解体戦略から所得税補強戦略に舵(かじ)を切り直す、ラストチャンスだといってよい」としている。「私の苦心」欄は、「『希望ある復興』のために」と題して、福島市の取り組みを紹介。
【8月10日号】 巻頭の「フォーラム」は、慶応大法学部教授の片山善博氏が「税条例を分かりやすく」と題して寄稿。「税は住民に理解しやすく、分かりやすいものでなければならないが、その税負担を決めるもととなる税条例が実に分かりにくいという声をしばしば耳にする。おそらく自治体は、地方税法が原則を本則に規定し、時限的特例を本法付則に規定しているので、その方式を踏襲しているだけなのであろう。しかし、自治体に地方税の大枠を示す地方税法と、具体的に個々の納税者に対する課税の根拠となる税条例とではおのずと規定の仕方が違ってしかるべきだ。税条例は納税者にとって分かりやすいものでなければならない」とした上、鳥取県知事在任中にこうした考え方の下に県税条例を全面的に書き換えたことを紹介し、「県税のことであれば、納税者が条例の本則の該当箇所さえ見れば、付則など他の箇所を見なくても一覧できるように整理されている。法制担当者の努力と工夫のたまものだが、この税条例簡素化モデルはどこにでも応用できる」としている。「わたしの苦心」欄は、「納税意識の改革に向けて」と題して、兵庫県尼崎市の取り組みを紹介している。
【8月6日号】 「海外情勢や名目成長率が影響」と題し、日本株が低迷を続けている要因について分析した記事を掲載した。同記事は「国内経済が堅調な動きを示す一方で、日本株の低迷が続いている。短期の動きを見ると『テールリスク』としての欧州債務危機と世界経済の減速がその要因である。加えて、円高も関係するため、日本株は相対的にかなり不利な状況だ。短期的な動向は海外の情勢に大きく依存しており、とりわけ欧州債務危機の帰趨と米国や中国の経済がいつ底入れするかが鍵となる。長期的な視点からすると、名目成長率の低迷が日本株の現状につながっており、プラス成長を続ける海外の株価に対して大きく出遅れている。また、従来長期的な視点で株式投資を行い、継続保有してきた国内投資家が株式を保有しづらくなっていることも、日本株の長期低迷の一因になっている。政策対応によるトップダウン型の経済成長は実を結んでおらず、今後も期待し難いが、企業サイドにもまだやれることはある。市場を創造する試みである。個々の日本企業による成功の積み上げによって、ボトムアップ型の成長サイクルが描けるかどうかが今後の日本株浮上の鍵であり、企業の底力が今問われている」としている。
【8月9・13日号】 「個人消費の先行きに陰り」と題し、日米の経済動向について分析した記事を載せた。同記事は「米国の企業業績は既に減益基調に陥った。これを受けて雇用情勢の改善テンポが鈍化し、消費者マインドは低迷している。株価にも影響が及ぶのは避けられず、これまでの景気の牽引車である個人消費の先行きに陰りが広がっている。日本でもエコカー補助金制度の予算が8月中にも底を突くとみられており、その後の個人消費の失速が不可避となってきている。輸出・設備投資には多くを期待できず、住宅投資、公的需要が下支えはするものの、景気の先行き減速は必至だ」としている。