早読み行政誌

消費増税「期限未定の執行猶予」(2012年9月3日〜9月7日号)

地方行政

【9月3日号】 まちづくりに食の活用を考える場合、次の違いを認識する必要があります。(1)食の内容・質にこだわりを持つ「農業・飲食業など産業」政策(2)食の内容・質しか目に入らない「食のまちづくり、食のまちおこし」政策。よくある失敗は、①の特定産業政策や食文化を、消費者(市民)志向を認識しないで、その質や数値の高さだけを見て、そのまま「食のまちづくり、食のまちおこし」だと標榜するケースです。数値の高さだけを見て、そのまま「食のまちづくり、食のまちおこし」に使う事例は非常に多い。例えば、人口当たり「家庭消費量日本一とか飲食店数日本一」という数値の高い食材を「机上で(統計で)見つけた」事例です。ここで注目してほしい点は、「消費者(市民)志向の取り組みは成功」している一方で「消費者(市民)の志向を認識しないで、そのまま食のまちおこしに突っ走った取り組みは失敗」している違いです。「消費者(市民)志向の取り組み」の好例は、福岡県久留米市です。焼き鳥店が人口当たり日本一を争うほど多い久留米市は、焼き鳥を核とした「B級グルメの聖地」を標榜しています。他にも、餃子が人口当たり「家庭消費量日本一」に注目した宇都宮市は「餃子のまち」を標榜しています。久留米市と宇都宮市の共通項は、その食材を「地元市民が愛着を持って食べている」ことです。(月曜連載「施策や施設をつくる前に『顧客を創る』地域再生」)

【9月6日号】 「全国初・池田市発」の地域分権制度をスタートさせる条例は、構想から約2年を経て公布された。条例の中には「特別職の報酬削減」のように、成立することですぐに効力を発するものもあるが、制度構築のための条例となるとそう簡単なものではない。ようやく敷かれたレールに列車を乗せて走らせるという作業、そして列車が目的地まで無事に到達するのを根気よくサポートし見届けるという作業は、いずれも大変なものである。地域分権制度を周知徹底するため、条例の公布後にまず手掛けたことは、推進役となる職員への説明会の開催であった。もとより多くの職員は本会議や委員会におけるやりとりを聞いているので、それほど手間がかかることではなかった…はずなのだが、そう簡単な作業ではなかった。基礎自治体にも間違いなく縦割り行政やセクト主義は存在している。担当部署、セクト主義を廃して、全ての職員が何らかの形で関わりを持たなければならない制度が、地域分権制度である。そのことを理解してもらうのは、少々大変なことであった。(木曜隔週連載「地域分権制度から考える『国のかたちとコミュ二ティ』」)

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内外教育

【9月4日号】 3.11をきっかけに原発をどう教えるかが大きな課題になっている。8月中旬に神戸市で開かれた、全日本教職員組合(全教)など26団体による「みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどい—教育研究全国集会2012」の模様をリポートした。文部科学省が事故後に作成した放射線副読本について、公立高校の物理担当の教師は「間違った知識を押し付けようとする恐るべき〝服毒本〟」と告発した。都内の中学校の教師は「やっている内容に確信をもっている訳でもない。誤解を受けても、やり続けたい」と話す。福島から避難してきた生徒もいるという。教育現場の動揺は当然、収まっていない。

【9月7日号】 いじめを経験した子どもたちが、平野博文文科相と面談した。8月31日、霞が関の文科省内で約30分間。面談したのは、東京都北区にあるフリースクール「東京シューレ」高等部の生徒や卒業生ら6人。学校でいじめを受けた経験があり、不登校や自殺を考えたことがあるという子どもたちだ。その子どもたちが大臣に求めたのは、「いじめに遭って学校へ行くことがつらかったら学校を休んでいい」というメッセージの発信だった。席上、平野文科相は子どもたちの要請に応える発言はしなかった。同席した東京シューレ理事長の奥地圭子理事長は「立場上うっかり言えないとは思ったが、命だけは守りたいという思いは伝わってきた」と話した。

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厚生福祉

【9月4日号】 屋内労働者を対象とするジョンソン・エンド・ジョンソン社の調査で、法律や条例による全面禁煙の義務付けに約3分の2の人が賛成との結果が出た。飲食業・宿泊業では業績への悪影響を懸念する声がやや強いものの、これらの業種でも「悪影響がない」とする人が「ある」とする人を上回っており、義務付けに過半数の人が賛成している(「全面禁煙義務付けに64%賛成」)。「インタビュールーム」は、大阪市西成区の「山王こどもセンター」施設長、前島麻美さん。大阪市の市政改革プラン素案に、同センターなど「子どもの家事業」を廃止し学童保育に移行することが盛り込まれたが、学童保育とは異なる存在意義を強調し、存続を訴えている。連載「ワンコイン健診の現場から」6回目は、「パチンコ店でナース服」と題し、健康意識の低い人のたまり場ともいえるパチンコ店での健診事業を紹介。行政にはなかなか難しいユニークな取り組みが効果を上げている。特集「好転したのか、公立病院の経営状況」24回目は、人件費がかかると思われる医師・看護師の増員によって経営を改善する動きについて、具体例を上げて点検する。

【9月7日号】 巻頭言は堀田力氏の「一緒にいる福祉」。例えば保育所と老人ホームの併設で、子どもとお年寄りが交流することで子どもは成長し、お年寄りは生き生きとする。縦割り社会の弊害に邪魔されながらも、20年以上前から地域で柔軟に行われてきた「共生」の取り組みを、厚生労働省もようやく広めようとしている。法令などの縦割りの壁はすぐには消えないものの、「道を拓くのは現場である」と堀田氏。千葉県浦安市の「子育てサロン」は、周りに知り合いの少ない若い母親が孤立して虐待に走ることを防ぐための取り組みだ。支部社協が中心となって運営することで、行政にはなかなかできない身近な交流の場として若いママたちを支えている(「地域が地域を見守り、虐待を未然に防ぐ」)。「進言」は地域医療再生の試みに関わってきている伊関友伸城西大学教授。全国的に有名になった兵庫県丹波市の「県立柏原病院の小児科を守る会」を例に、地域医療再生に必要なものは何かを提言している。

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税務経理

【9月4日号】 「私の苦心」欄は「地域の県税事務所として」と題して、神奈川県の取り組みを紹介。同県財政は危機的状況にあり、歳入面では税収確保対策、中でも主要税目である個人県民税の納付率の向上、収入未済対策の強化が求められている。そのためには市町と県税事務所の日ごろの連携が重要。平塚市、秦野市など湘南地域圏の3市2町を所管する平塚県税事務所は、相互に協力して税収確保を図る「平塚地区徴収対策連絡協議会」を設置しているが、より効果を上げるため、新たに事務レベルの「研究・検討会」を持ち回り方式で始めた。また、地域の活性化も不可欠。税務行政のチャネルからも事業執行部局の取り組みと連携し、「税の使い道」として、メッセージ力を持って県民に発信する必要がある。こうした取り組みとともに、「道州制や大都市制度など地方自治制度や行政改革の進展により税務環境も変化するが、『地域の県税事務所』として、多層的な連携の下、地域主権の推進と県財政の健全化をしっかりと支えて、存在意義を示していきたい」としている。

【9月7日号】 「私の苦心」欄は「『徴収率100%』〜収納業務永遠のテーマ」と題して、2005年3月末に九つの町村が合併して誕生した岡山県真庭市の取り組みを紹介。良い意味でも悪い意味でも、古い慣習の残る、小さな町村が集まって市となったため、徴税においては、大都市とは違う意味での苦労がある。最初に始めたことは、一にも二にも、旧態依然とした意識を改め、滞納処分中心主義に完全移行を果たすこと。徴税の基本方針として、法令順守、公平性の確保に重点を置き、公平性の確保については、一般の納税者との公平性の確保を第一に考えている。収入も財産もない、生活に困るような人の見極めが重要と考え、悪質な滞納者に対しては、遠慮することなく、滞納処分を実施している。市役所に来た悪質なクレーマーに対しては警察を呼んだこともある。何と言われようと何があろうと、徴税課は滞納者のためにある課ではない。一般の、きちんと納めていただいている納税者のためにある課であり、「徴税課は、職務に忠実であればあるほど、仕事を一生懸命すればするほど、市民というか、一部の市民の嫌われる、恨まれる職場だが、職員は、そのようなことは恐れないで業務に励んでいる」と結んでいる。

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金融財政ビジネス

【9月3日号】 「資産の海外逃避は必要か?」と題し、資産運用における国際分散投資の観点から、日本の財政危機に対応したリスク回避対策について解説した記事を掲載した。同記事は「消費増税法が国会で可決・成立した。これに対するある海外のファンドマネジャーの評価は『期限未定の執行猶予だ』というものだった。その理由は世界一巨額の政府債務残高にあるといい、『(債務残高の)解消に道筋が見えなければ、市場と現実のねじれの解消(国債価格や円相場の暴落)が起きる。これが市場の歴史である』との考え方に立っている。日本の投資家の間でも、日本の来るべき危機を想定して『資産の海外逃避』が起こっている。特に、終戦直後の1946(昭和21)年の混乱期に実施された預金封鎖を知っている人たちは、日本の借金の大きさに不安を感じ、国家破綻が起きた際の対策として財産を海外に移転させている。ただ、筆者自身は、日本が国家破綻するとは考えられず、預金封鎖が起きる可能性はないという立場であり、資産の海外逃避は、ポートフォリオとしての国際分散を除いて必要ないと考えている。その理由は、法制度の違いと国内市場の拡充である。日本の財政危機へのリスク回避対策について、資産運用における国際分散投資の観点から考察してみたい」としている。

【9月6日号】 「米欧諸国で進む金融圧縮」と題し、リーマン・ショック後の世界金融動向について分析した記事を載せた。同記事は「2008年に起きたリーマン・ショックや最近のユーロ圏の債務危機など、一連の国際金融危機を経て、米欧の巨大銀行は自己勘定での投資業務や国際金融業務を縮小させ始めている。というのは、米欧諸国において、国内的には財政政策と金融政策の協調による政府債務の実質負担の軽減が、対外的には開放的なグローバル経済体制の見直しが進展しつつあるためだ」としている。

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