【9月10日号】 官民協働で地域再生に取り組む組織を設立すると、事務局を役所に設置する場合が少なくありません。注目すべきは、この取り組み(組織)は効果を出せないで終わることが非常に多いことです。むしろ、民間事業者や市民を落胆させてしまう弊害も多発しています。事務作業だけは得意な役所が事務局を務めるのは文字通り、理にかなっているように見えます。しかし「事務作業だけしかしない」事務局は、メンバーのスキル・意欲を高めることはできず、むしろメンバーのスキル・意欲を後退させてしまうケースも少なくありません。ここに官民協働で事務局を役所に置く地域再生の取り組みが頓挫したり、うまくいかなかったりする理由があります。うまくいかない理由を掘り下げてみましょう。事務局を役所の特定組織に置く場合「事務局ポストが役所ポストと一致」してしまい、次の問題が露呈します。(1)運営が役所ポストの狭い視点に縛られる(2)役所ポストが変わるたびに事務局員が変わり、後任職員は事務作業がさらに事務的になる(3)役所の単年度主義は、長期視点に欠ける(4)事務局に意欲がなく、市民を落胆させる(月曜連載「施策や施設をつくる前に『顧客を創る』地域再生」)
【9月13日】 地方自治体、民間企業を問わず、「スマートシティ」への取り組みが活発になっている。「環境配慮」「低炭素」の実現に対する社会的要請に加えて、東日本大震災の東京電力福島第1原子力発電所の事故に端を発した「地域におけるエネルギーの自立」に対する関心が高まっていることが、この動きを加速させていると考えられる。そもそも、スマートシティとは「スマート=賢い」の意味から、情報通信技術(ICT)を活用することによって、エネルギー消費を効率化、最適化するシステムを導入した都市のことを指す。本稿では、自治体が主導するスマートシティへの取り組みを見ながら、どのようにして自治体としての政策を反映させようとしているかを分析するとともに、必ずしも自治体が地権者でないケースであっても、自治体としての政策を開発事業に反映させていくことができる可能性があることを示唆したい。(特集「スマートシティにおける自治体の取り組みの可能性」)
【9月11日号】 文部科学省が「いじめに関する総合的な取り組み方針」を発表した。大津市の中学生いじめ自殺を受けて、急きょまとめられた。2013年度のいじめ対策関連事業の要求総額は、73億円になった。前年度比27億円という大幅な増え幅になっている。問題はお金を注ぎ込んでも、結果が出ないということがあるかもしれないということだ。いじめ対策はお金で即効性をみせるようなものではないだろう。政治としては、とりあえず「いじめをなくす」「命を守る」という姿勢を世間に印象付ける必要があったのだろう。国が積極的にいじめ対策をやっています—子どもたちの間にこのメッセージが届くのだろうか。
【9月14日号】 日本教育学会のリポート「大学入試が阻む高校の授業改善」が極めて面白い。この学会は8月下旬、名古屋大学東山キャンパスで開かれた。公開シンポのテーマは「高校教育改革の現状と課題」。文部科学省の委託で2010年に「高大接続テスト(仮称)」の報告書をまとめた北星学園大学の佐々木隆生教授は「今の大学入試をそのままにして何とかしようとしても破産する。センター試験には退場していただき、その財産を生かすことが望ましい」として、センター試験を高大接続テストに転換すべきことを提言した。センター試験の不手際は今春も問題になった。確かに、試験が巨大化して、運用で動脈硬化が目立っている。改革のときだろう。
【9月11日号】 児童・生徒に医療の現場を体験してもらうセミナーが各地で開催されている。東京医科大病院が夏休み期間に実施したのもその一つだが、最新の手術支援用ロボット「ダヴィンチ」を体験メニューに加えているのが大きな特徴。普及し始めたばかりのこのシステムを、中学生の体験の様子も交えつつ紹介する(「広がりつつあるロボット手術」)。「地域を支える」は、発達障害のある就学前の子どもに療育を提供する鹿児島県伊佐市の子ども発達支援センター「たんぽぽ」。一人ひとりの個性に応じた早期からのていねいな療育により、地域の保育園に通えるようになるなど成果を上げているという。8月後期の「社説拝見」は「一体改革法成立、課題はこれから」と題し、先送りされた課題を議論する「社会保障改革国民会議」や、生活保護制度改革などをめぐる各紙の論調を取り上げた。
【9月14日号】 東日本大震災から1年半が経過したが、被災地の子どもたちの心の傷は癒えず、行動に異変が起きているという。一見大丈夫そうな子も要注意だと専門家は指摘している(特集 東日本大震災「子どもに残る心の傷」)。「地域を支える」は、病院内に屋台形式のカフェをオープンさせた徳島赤十字病院。カロリーなど栄養面に気を配りながらも味や素材にこだわったカフェは、患者・家族に好評なだけでなく、働く栄養士らのモティベーションアップにもつながり、院内の雰囲気を良くしているという。特集「好転したのか、公立病院の経営状況」最終回は、「公立病院は『豪華』なのか」と題し、公立病院の建設費にスポットをあてた。「建設費が高過ぎる」との批判も受けるが、なぜ高くなるのか、またその経営への影響などを点検する。
【9月11日号】 「私の苦心」欄は「信頼される税務行政に向けて」と題して、三重県桑名市の取り組みを紹介。同市の2010年度の市税徴収率は92.02%(現年度課税分98.24%、滞納繰越分17.47%)で、2004年度以降上昇傾向にあり、滞納繰越額は減少している。2004年4月に設立された三重地方税管理回収機構への職員派遣を契機として徴収方法を「訪問徴収」から「面談・調査・滞納処分」に改めたことや、滞納整理支援システムを活用した徴収職員の努力によるものだ。課税面では、現在個人住民税の特別徴収の促進に県と共同して取り組んでおり、固定資産税では死亡者課税の解消に向け、相続財産管理人の選任を弁護士等と協議し進めるなど収納率の向上につながる取り組みを進めている。市税の窓口は、税務以外の行政面でも住民との距離が近く、納税は行政運営に対する信頼の側面もあり、効率性と併せ組織の充実が大切。「正規職員と専門知識を有する再任用職員をバランス良く計画的に配置することや、研修や経験により職員のスキルをさらに高めることで多様化する住民要望に対応できる体制をとり、市民からさらに信頼される税務行政にしたい」としている。
【9月14日号】 「私の苦心」欄は「灯台下暗し、雑談にヒントあり」と題して、人口は13万人ながら、面積は北海道内1位、延長は110キロと箱根駅伝に相当する距離がある北見市の取り組みを紹介。同市は、2006年3月に1市3町が合併して発足したが、特殊高額案件が引き継がれて滞納繰越調定額が一挙に5割増となり、また、ガス事故や夏場に長期断続的な断水が重なり、市民に対し催告や処分ができない時期が続いた結果、一挙に滞納件数が増加した。このため、(1)収納率の向上(2)組織体制の見直し(3)賦課側とのコミュニケーション(4)徴収システムの整備充実(5)職員の意識・待遇の向上—の五つの目標を設定。課内体制の変更については、係数の見直しや調査の集約化など有効と思われる策を基に検討を進め、2011年6月に体制変更した。収納率の向上、処分数の倍増、債権の拡大に結び付くなど成果を上げているが、引き続き、長期滞納案件や業務量の偏り、賦課側とのあつれきなど課題は山積。「組織の再調整を目指し、気軽に知恵を出し合える職場づくりに気遣いながら、今後も組織一丸となって取り組んでいきたい」としている。
【9月10日号】 「先行き減速が不可避の日米経済」と題し、9月の景気動向と金融情勢について解説した記事を掲載した。同記事は「ここに来て、米企業の業績にも海外景気減速の影響が及び始めてきた。企業業績の悪化は雇用情勢の改善テンポの鈍化、株価の下落という経路で個人消費に波及、設備投資にも抑制圧力が働く。景気を牽引するはずの2本柱の低迷を背景に、今年後半の米経済は一層減速しよう。日本では、エコカー補助金制度による押し上げ効果が消滅するとみられることから、個人消費に失速懸念がある。海外景気の減速から純輸出にも多くを期待できない状況で、日本経済も年後半に向かってさらに減速することが不可避だろう」としている。
【9月13日号】 「解決の糸口見えないシリア情勢」と題し、内戦が続くシリアの情勢について分析した記事を載せた。同記事は「『アラブの春』と呼ばれる一連の民主化運動の影響を受けて昨年3月中旬にシリアの主要都市で起こった反政府デモを発端とするアサド大統領の強権政治への抗議行動は内戦に発展、いまだに解決の糸口が見えない。反体制派と政府軍の戦闘は一進一退を繰り返し、反体制派の結束も定かではない。一方、周辺諸国や米欧各国の思惑もさまざまで、関係する組織や政府などによる合意の下で内戦が終結する見通しもまったくない。中東地域全体の大きな混乱につながりかねないシリアの内戦は、『袋小路』に陥っている」としている。