【10月1日号】 ある一つの事業・施設は、必ず他の部署・事業と密接な繋がりがあります。しかし、自治体の部署間が一つの事業・施設で「繋がりをもつ、連携する」ケースは極めて少ないのが実情です。例えば、「カーブス」など女性専用フィットネスクラブが今、活況を呈しています。衰退する地方都市の街中で、カーブス店内だけは大盛況で、利用後に近隣の商店で仲間と交流の消費に繋がっているという状況を、私は数都市で見ています。自治体職員の多くは、このような「主婦たちの消費動向」とその結果として、わずかだが街中の活性化に寄与している状況を知らないと思います。そんな視野の狭い自治体が、市民から「フィットネスクラブを利用したいから、建設・誘致してくれ」と言われると、市民の健康増進を所轄する部署が、コスト抑制や利便性だけの観点から、地価の安い郊外や住宅地に建設・誘致してしまいます。(月曜連載「施策や施設をつくる前に『顧客を創る』地域再生」)
【10月4日号】 「自分たちのことは自分たちで」となってくると、地域としてはどうしても「親方日の丸」の役所仕事とは違うところを示したくなってくるようだ。地域の防災倉庫を整備するに際して、備品も地域の提案に基づいて予算化し、市の基準、ルールにのっとって市が購入することになる。すると、地域の方から「何でスコップ1本が3万円もするのか」という質問が飛び出した。いきなりのことで面食らったが、「市の基準に基づいて市の登録業者を呼んで見積もり合わせをすると、スコップ1本3万円になる」という職員の説明に対し、地域の方は「そんなもの専門店に行って買えば、ほぼ同等品が1万円で売られている。2万円の無駄遣いになる」というのだ。その通りである。しかし、職員は「財務会計規則」を盾にとってなかなか譲らない。私は定例の部長会議で「3万円のスコップ」の話を持ち出した。「私としては地域の主張の方が正しいと思う。地域の人にお願いして1万円のスコップを購入していただいた方が、スピーディーでしかも費用も安くつくわけだから。そうでないと言うなら、この私にも分かるように説明してほしい。私を説得してみせてくれ」と話した。私の思いをくんでくれたのか、この件については地域に対して防災倉庫の整備のための補助金を支出し、地元で購入してもらうことになった。(木曜隔週連載「地域分権制度から考える『国のかたちとコミュニティ』」)
【10月2日号】 日本の教育は本当にダメなのだろうか? 大津市で起きたいじめ自殺事件を見ていると、そんな気持ちになるかもしれない。それはそれで分かるが、そのような決めつけに対する反論が、この2日号ではないだろうか。手前味噌の宣伝という「おことわり」をあえてした上で、時事通信社教育奨励賞に選ばれた各地の実践リポートは、健全に、したたかに生き残る日本の教育の伝統を示している。どれがどうだ、とは説明しません。読んでください。日本の教育のすごさを。決めつけは、その後にしましょう。
【10月5日号】 時事通信社がモンスターペアレント論の第一人者である、大阪大学大学院教授小野田正利氏と共同で実施した「学校運営上の問題に関するアンケート」の結果が掲載されている。全国の小中高校すべてと、全国の教育委員会のすべてを調査の対象としている。回収率は20%弱。アンケートは自由記述もあったが、全国の2割以上の学校で、学校だけでは解決困難なトラブルを抱えていることが判明した。この深刻な実態をどう受け止めればいいのだろうか。小野田教授が5日号から連続3回にわたって分析する。
【10月2日号】 高齢化に伴い、高齢のてんかん患者が増えているという。子どもの病気と思われがちだが実は高齢での発症が多いことや、全身のけいれん発作を起こさず認知症などと間違えられやすいこと、薬物療法が有効であることなど、赤松直樹産業医科大学准教授の講演を基に要点をまとめた(「増える高齢者のてんかん」)。厚生労働省の2013年度予算概算要求額は、初めて30兆円を突破。「生活・雇用戦略」と「ライフ成長戦略」を二つの柱に、生活保護受給者の就労支援や再生医療の推進などを重要施策として盛り込んでいる。その詳しい内容を紹介した(「生活保護者の自立支援など推進」)。「インタビュールーム」は、若年認知症患者のケアに取り組む藤本直規さん。働き盛りで発症するため社会的な問題も多く、一般への啓発や本人・家族のサポートが必要だと訴えている。「ワンコイン健診の現場から」vol.7は「健康オタクの小学生時代」。長じてからのケアプロ開業につながる、小学生とも思えぬ健康オタクぶりが興味深い。
【10月5日号】 特集「多様化する保育所と経営」2回目は、「認定子ども園法の改正内容、待機児童問題などを見る」と題し、東京都、千葉県などの保育施設に関する独自の取り組みを紹介するほか、認定こども園法改正をめぐる動きや、待機児童数の現状などを取り上げる。政府が幼保一元化を目指して提出した「総合こども園法」が廃案となり、認定こども園の見直しに落ち着いたのは記憶に新しいが、この改正が抜本的な保育施設充実につながるかといえば疑問視せざるを得ないだろう。「進言」は、野田市障がい者団体連絡会代表の加藤満子さんが、知的障害者の働くふれあい喫茶「つくしんぼ」を紹介。市役所1階ロビーにあるこの喫茶店オープン時など、当事者らの事業を行政が支援しており、野田市の知的障害者福祉では自助・共助・公助がいい形で循環しているという。
【10月2日号】 巻頭の「フォーラム」は、東大名誉教授の神野直彦氏が「租税の常識を再検討する」と題して寄稿。消費税増税を盛り込んだ社会保障・税一体改革法の成立を受け、「1990年代以降の日本の租税政策が減税基調をとり続けたことを考えると、画期的な租税政策の転換であることは間違いない。しかし、こうした租税政策の転換期には、租税にかかわる『常識』を疑ってみる必要がある」と指摘。日本の租税負担率と経済協力開発機構(OECD)諸国の租税負担率(平均)を国内総生産(GDP)比で比較して「常識」を検証。「そもそも日本は租税負担率が国際的に見ても異常に低かったのに、減税基調の租税政策を展開して、異常さを強めてしまった」「一方で日本の法人所得課税の負担は高すぎるというのが常識である。そのため日本では法人課税の減税が展開される」「個人所得課税の負担率は、日本はOECD諸国平均のほぼ半分にすぎない」「個別消費税の負担率もOECD諸国に比べて著しく低いことも忘れてはならない」。その上で「そうだとすれば、消費税の増税だけを目指すのではなく、課税の公平を担保するためにも所得税の増税が必要なことは明らかである。しかも、消費税を増税するからといって、ただでさえ低い自動車関係税をはじめとする個別消費税を減税する根拠は乏しいと言わざるを得ない」としている。
【10月5日号】 「わたしの苦心」欄は、「市税等の滞納対策」と題して、「ほたるいかのまち」として知られる富山県滑川市の取り組みを紹介。同市では2011年3月、市の財政運営指針というべき「健全な財政に関する条例」を制定。その一環として、同年4月に市税等徴収対策室を設置した。リーマン・ショックの影響で経済状況が悪化し、右肩下がりが続く税、保険料等の収納額、率への対応などが狙いで、担当業務は税と保険料の過年度分の長期・高額の滞納整理。スタッフは税務課の若手職員2人が兼務し、ほかに銀行を定年退職した嘱託職員2人。銀行マンとして長年の経験がある2人には、徴収の即戦力となってもらい、言わば自分の子供のような若い職員を同行することによって、相手の話を聞くことの重要性など徴収をはじめいろんな指導もしてもらっている。これらの取り組みにより、2011年度の滞納分の徴収額は前年度比約1800万円増となった。「今後も金融機関OBを徴収専門職とした滞納整理方法を継続し、上下水道料、住宅使用料、保育料など他の債権の徴収にも拡大していかなければならない。また、徴収への早い対応と正規職員による後継者づくりが非常に大事であり、『継続は力』をモットーに、公平性と財源の確保を目指していきたい」としている。
【10月1日号】 「新たな収益機会の確保が必要」と題して、金融緩和が進む下で日米欧の金融機関が取るべき対応について解説した記事を掲載した。同記事は「世界的に実体経済の減速感が強まっているのに対応して、日米欧の中央銀行は金融緩和を相次いで強化している。金融市場はこれら一連の対応策を好感して、徐々に金融財政危機拡大への懸念は後退しているようだ。しかし、金融政策は経済安定化の必要条件にすぎず、その効果は従来よりも低下している可能性がある。また、各国の財政赤字の拡大も止まらず、金融財政危機への出口戦略は未だに展望できていないのが現状だ。そうした中で、日米欧の金融機関による資金運用を見ると、期待収益率が低下しているだけに、これらの金融機関は新たな収益機会を求めざるを得なくなっている」としている。
【10月4日号】 「歴史的転換期迎えた世界と日本」と題して、中国の膨張主義と欧米主導の時代が終焉を迎えつつある世界の現状について分析した記事を載せた。同記事は「日本と中国、韓国、ロシア3国との間にある領土をめぐる緊張と対立は、地殻変動を起こしつつある現在の国際情勢の中で捉えるならば、決して特殊な事態ではない。昨年の東日本大震災とそれに伴う大津波、東京電力福島第1原発事故で、日本列島が活発化し始めた本物の地殻変動の真上にあることを日本人は思い知らされたわけだが、21世紀に入って、歴史的とも言える大きな転換期に差し掛かった国際政治の荒波もまた、われわれ日本人に大きな試練を与えている。日本を取り巻く、あるいは日本が影響を受ける可能性のある国際情勢の変化に着目しながら、2カ月に1回の割合で重要なテーマを取り上げ、問題点や今後の展望について考えていきたい」としている。