早読み行政誌

百聞は一見にしかず(2012年10月11日〜10月12日号)

地方行政

【10月11日号】 20歳のとき、防衛大学校で国際関係論を専攻していた私は人生初めての外国旅行にドイツを選んだ。卒論のテーマが、戦後西ドイツの再軍備をめぐる主要国の外交交渉だったからだ。その後、26年の自衛官人生において公私含めて30カ国を訪問した。静岡県伊豆市長に就任した当初は、市長として外国の姉妹都市を訪問するつもりはなかったが、カナダ・ネルソン市との交流が35周年を迎えるとあって、31カ国目の旅先がカナダとなった。伊豆市の国外姉妹都市は2市あり、いずれもカナダのブリティッシュコロンビア州。旧修善寺町から引き継いだネルソン市と、旧中伊豆町時代から交流を持つホープ市である。それぞれ人口9000人、7000人と小さなまちで、伊豆への観光誘致も考えにくく、20年以上続いている中学生交流を継続できればそれで十分と考えていた。しかし、古人の教えの通り「百聞は一見にしかず」で、多くのことを学ぶ旅となった。まず驚いたのは、森に聳える木々の大きさだ。旧天城湯ケ島町出身の私としては、樹齢400年、高さ53メートルの「太郎杉」を誇りにしているのだが、カナディアンロッキーの西麓に位置するネルソンに行くと至る所が太郎杉だらけである。かつて、このような大木がほとんど日本に輸出されていたのも、さもありなん。しかし、今はネルソン市内から製材工場が姿を消し、近隣の工場に細々と搬出しているにすぎない。地球規模での経済環境の変化に対応し切れていないのは、日本だけではないことを実感した。(寄稿「カナダ訪問記」)

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内外教育

【10月12日号】 昨年夏の出来事を覚えていらっしゃるだろうか? 教科書採択をめぐる沖縄県八重山地区のトラブルだ。八重山地区は、石垣市、竹富町、与那国町の3つの教育委員会が合同で使う教科書を決めてきた。合同でというのは、同じ教科書を使うということだが、竹富町は東京書籍の社会科教科書を、石垣市と与那国町は育鵬社の採用を主張し、最後まで折り合わなかった。こうした教育委員会ごとの意見の対立はこれまでもあったが、今回改めて文部科学省が「合意形成をあらかじめ定めておくように」との通知を出した。だから何なのか? また、近い将来、同じようなトラブルが起きそうだ。

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厚生福祉

【10月12日号】 厚生労働省は、障害福祉サービスの必要量を判定するための新しいソフトを開発する。従来の区分は高齢者の要介護認定がもとになっており、身体障害はともかく、知的・精神障害の程度を適切に反映していなかった。モデル自治体での試験導入とチェックを経て、14年度から完全導入したいとしている(「障害判定の新ソフトを試験導入」)。認可保育所の待機児童の数が前年度より減少したという。2年連続の減少とはいえ、まだ高止まりの状況が続いている(「待機児童、2年連続で減少」)。「地域を支える」は、岡山県総社市の「障がい者千人雇用センター」。名前通り障害者1000人の雇用を目指して春に発足、この夏に折り返し地点の500人を突破と、着実に成果を挙げている。医師に成り済ました男が健康診断を行っていた事件で、逮捕された男に健診を受けた人は1万8000人にも上るという。ある人物が本当に医師として登録されているかを確認できる厚生労働省のサイトを悪用した形で、健康診断における身分確認の甘さの問題が浮かび上がった(「身分確認甘い健診に固執」)。

【10月5日号】 特集「多様化する保育所と経営」2回目は、「認定子ども園法の改正内容、待機児童問題などを見る」と題し、東京都、千葉県などの保育施設に関する独自の取り組みを紹介するほか、認定こども園法改正をめぐる動きや、待機児童数の現状などを取り上げる。政府が幼保一元化を目指して提出した「総合こども園法」が廃案となり、認定こども園の見直しに落ち着いたのは記憶に新しいが、この改正が抜本的な保育施設充実につながるかといえば疑問視せざるを得ないだろう。「進言」は、野田市障がい者団体連絡会代表の加藤満子さんが、知的障害者の働くふれあい喫茶「つくしんぼ」を紹介。市役所1階ロビーにあるこの喫茶店オープン時など、当事者らの事業を行政が支援しており、野田市の知的障害者福祉では自助・共助・公助がいい形で循環しているという。

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税務経理

【10月12日号】 巻頭の「フォーラム」は、慶応大学法学部教授の片山善博氏が「教育委員会と財政自主権」と題して寄稿。「今に始まったことではないが、教育委員会の評判が芳しくない。いじめと自殺の関係をめぐり大津市教育委員会がやり玉に挙げられているが、ことは大津市にとどまらない。各地で教育委員会の力量や責任能力が問われている」と指摘。その上で、「教育委員会を再生させるには、何はさておいても教育委員に人を得ることだ。首長と議会には、教育現場に山積する課題に果断に取り組む熱意と見識と時間的余裕を持った人を教育委員に選任する責務があることを、この際よく自覚してほしい」とし、課税権はおろか予算編成権すら認められていない教育委員会に対し、「教育委員には教育予算について首長に対してものを言う機会と権利が法律上認められている。この権利を行使している教育委員会が一体どれほどあるだろうか」と疑問を呈している。さらに、「教員の非正規化の進行」を最近気になることの一つとして示した上で、「教育委員会の再生には委員に人を得ることのほかに、教育予算を確保する方策も欠かせない。教育税構想も研究に値するし、少なくとも教育財源の〝ネコババ〟を防止する措置ぐらいは早急に検討されてしかるべきではないか」と問題提起している。

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金融財政ビジネス

【10月11日号】 「減速の恐れ強まる日米経済」と題して、10月の景気動向と金融情勢について解説した記事を掲載した。同記事は「米国では、企業業績の悪化を背景に設備投資が弱含んできている。その影響で、雇用・賃金情勢の改善テンポは緩慢になっており、個人消費の先行きにも陰りが広がっている。今後、米経済の拡大テンポはさらに鈍化していく可能性が高い。世界経済の減速に尖閣諸島をめぐる中国との対立という新たな要素が加わり、日本の輸出は今後低迷する可能性が高い。エコカー補助金制度の終了で、個人消費の失速も不可避となってきている。年後半に向かって、日本経済が失速する恐れも出てきた」としている。

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