早読み行政誌

偽善的キャッチフレーズのウソ(2012年10月15日〜10月19日号)

地方行政

【10月15日号】 自治体が策定する計画書は、「市民の誰もが○○できる町」など、あたかも「市民全員を幸せにすると公約する」ようなキャッチフレーズが多用されます。自治体の偽善的なキャッチフレーズに、それこそ市民の誰もが、「そんな実現できないウソをつくな!」と感じています。おそらく、自治体職員自身も「ウソをついている自覚がある」はずです。自治体が本気で市民と協働したいと思うなら、このような「ウソ、偽善的なキャッチフレーズ」を言うのは、もうやめましょう。では、どのように市民に伝えるか?例えば次のように伝えてみましょう。「こういう市民ニーズがあるから、こういうことは必ずやります。しかし、こんな市民ニーズまでは満たせないから、こんなことは市民の創造的活動で補完してください。自治体職員は、知恵を出します、ボランティアで活動に参加します。それでも市民が幸せになれないことに初めて自治体が金(補助金)を出します」(月曜連載「施策や施設をつくる前に『顧客を創る』地域再生」)

【10月18日号】 池田市の地域分権制度の発足から約2年を経た平成21年、名古屋市では河村たかし市長を先頭に「名古屋市民が地域のことを自ら決定する仕組み」として、地域委員会制度の創設に向けた検討が開始された。「〝日本一住民自治が行き渡った街〟ナゴヤ」へとスタートを切ったのである。「地方分権時代の新しい自治の仕組みを考えると、当然、行き着くところは皆同じ」。そう思った。ただし、名古屋市の場合は、市長と議会との極度な緊張関係もあって、とりあえず8行政区8小学校区のモデル地域でのスタートになった。モデルであろうが試行であろうが、前に進むことは良いことである。平成23年7月、池田市で名古屋市の地域委員会との合同シンポジウムを開催した。池田市の地域コミュニティ推進協議会の役員同様、それぞれ課せられた仕事に喜々として取り組んでおられることをうかがい知ることができた。普通なら、名古屋市地域委員会に関する条例のようなものが議会に提案され、賛成多数で可決・成立、モデル実施によって効果を確認し、約260の全小学校区で地域委員会が設立される──となるところであろう。しかし、名古屋市ではいまだに条例の提案に至っていないようだ。最大の理由は、やはり議会との極度の緊張関係だろう。(木曜隔週連載「地域分権制度から考える『国のかたちとコミュニティ』」)

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内外教育

【10月16日号】 大学入試センター試験の限界や機能不全が指摘されている。大学全入時代を迎えて、大学教育への円滑な接続を目指し、新しい試験制度を模索する動きがある。その主体はやはり、独立行政法人大学入試センター。同センターの入学者選抜機構が、都内で「新しい試験の開発」をテーマにしたセミナーを開催した。学力担保のための新しい試験の構想として「高大接続テスト(仮称)」が提唱され、2010年9月に報告書が中教審に既に提出されている。「高大接続テスト」のようにセンター試験に代わる大規模な試験構築を目指すのか、それとも低学力層や試験利用しない層を対象とする部分改修をするのか、議論が煮詰まるまでにはもう少し時間を要するかもしれない。

【10月19日号】 ベネッセ教育研究開発センターが大学生の保護者6000人を対象に実施した「大学生の保護者に関する調査」の分析結果が、掲載されている。大学生になっても保護者は就職情報を熱心に収集して子どもにアドバイスする姿が浮き彫りになっているという。進路選択の関与が続けば、子どもの自立に心配、とさえ分析結果は言及している。子どもに海外留学はさせたいが、「海外で活躍してほしい」は少なく、親の姿勢は内向きだ。日本からの留学生の減少は、子どもの判断ではなく、この親の内向き姿勢が根本原因なのかもしれない。

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厚生福祉

【10月16日号】 内閣改造で小宮山洋子厚生労働相が交代し、三井辨雄氏が着任した。社会保障制度改革をはじめ難問が山積みの中、新大臣の手腕が注目される。「新閣僚インタビュー」を掲載。「地域を支える」は、金沢市・石引商店街の「まかせまっし隊」。高齢者らの買い物代行や弁当配達など、福祉と結びついた地域密着型の小規模ビジネスだ。商店街活性化にも寄与しているという取り組みをレポートする。特集「多様化する保育所と経営」3回目は、「保育事業経営の現状と課題」と題し、保育サービスが「福祉」から「産業」へと変化していく中で、経営の実態がどうなっているかに焦点を当てる。新産業分野として市場から注目されてはいるものの、まだ行政の補助がなければ厳しいのが実情のようだ。

【10月19日号】 あらゆる細胞になれる人工多能性幹細胞(iPS細胞)を開発した山中伸弥京都大教授のノーベル医学・生理学賞受賞が決まった。いつか必ず取ると見られていたものの、開発から6年でのスピード受賞。記者会見で「医学への本当の貢献をこれから実現させなければ」と語った言葉に表されるように、今後の再生医療への応用にますます期待がかかる。関連記事をまとめた(「山中氏にノーベル医学・生理学賞」)。「インタビュールーム」は、秋田県健康福祉部健康推進課長の成田公哉さん。自殺率が17年連続全国1位となっている同県だが、さまざまな取り組みの結果、自殺者数は緩やかな減少を見せている。自殺防止対策にかける思いや、その内容について尋ねた。日本年金機構が、地域ごとに公的年金制度への理解促進に向けた事業などを推進するための有識者会議の設置を決定。全国に先駆けて先月、香川県で第一回会議が開かれた。今後、四国4県のほか、九州などでも設置するという。会議の模様を報告する(「地域年金事業運営調整会議がスタート」)。9月後期の「社説拝見」は「『原発ゼロ』閣議決定見送りを論じる」と題し、原発ゼロを目指す方針を掲げながら閣議決定に盛り込まなかった政府対応などをめぐる各紙の論調を紹介する。

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税務経理

【10月16日号】 「わたしの苦心」欄は、「新しいマネジメントへの挑戦」と題して、東京都国分寺市の取り組みを紹介。それによると、同市の市税収入額(決算ベース)は2011年度約217億円(うち現年課税約215億円)で、納期内納付、現年納付に力を入れてきた結果、現年徴収率は99.14%と東京都内26市の中では2008年度以来4年連続で第1位を続けている。徴収率向上には、納税者の意識に加えて、職員の迅速性、完遂能力、納税課一丸の精神、高いモチベーションが欠かせない。大切なのは、いかに「最小の経費で最大の効果」を達成するか。その一方で、この先徴収率がガタッと落ちてしまうのではというプレッシャーは計り知れないものがある。滞納繰越案件は「困難滞納」や「極めて困難滞納」しか残っていないからだ。滞納繰越案件は、時間をかけて取り組む必要があり、滞納処分・進行管理を一層強化しなければならない。他方、現年徴収は、相談・折衝により、「早期発見」「早期着手」「早期完結」を実現する国分寺市型徴収手法の完成を目指す、としている。

【10月19日号】 巻頭の「フォーラム」は、一橋大学名誉教授の石弘光氏が「消費税の価格転嫁」と題して寄稿。「消費税増税の実施に関しては、マクロ・ミクロ両面にわたって幾つかの問題点が指摘されている」とし、消費税の価格への転嫁の問題を取り上げた。それによると、取引の過程で売り手と買い手の交渉力の差により、価格値上げによる転嫁が難しい状況が生じ得る。これまで消費税の創設あるいは税率引き上げに際し、中小事業者が反対する最大の理由は転嫁が円滑にできないということだった。消費税の価格転嫁に関し、税額を価格の中でどう表示するかの問題も関わってくる。最後に、「転嫁が円滑に行われるためには、やはり行政による指導が必要」とした上で、政府はこれまでの消費税増税の折に、円滑かつ適正に価格転嫁に向け、ガイドラインを作成しさまざまな試みをしてきたと指摘。「優越的地位の乱用の防止のためのガイドライン」により、仕入価格の一方的設定や値引き、受領拒否・納期の延長、手伝店員の強要などを禁止したほか、独禁法や下請法を運用し円滑に転嫁ができるように支援したり、各種の予算・税制措置、金融支援をしたりしている点を挙げ、今回もこれと同じような措置を取ることの必要性を強調している。

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金融財政ビジネス

【10月15日号】 「途上国の農民と結び付く多国籍企業」と題して、穀物相場の世界的な高騰に対応した多国籍企業の戦略とそれに伴う課題について分析した記事を掲載した。同記事は「今年の夏は北半球を中心に異常気象に見舞われ、旱魃の影響で米国やロシア、ウクライナを中心にトウモロコシ、大豆、小麦など主要穀物の生産が大きく落ち込み、食糧価格に波及した。2007〜08年以来の世界的な食糧危機の再来を懸念する向きもある。また、価格が高騰しても需要が減らないという状況が生じており、世界の食糧需給構造は変化しつつある。需給が均衡する価格の水準が上昇したのである。こうした中、スイス食品大手ネスレや米ファストフード大手マクドナルドなど食品関連の多国籍企業は食糧を確保するため、開発途上国の小規模な自作農との関係を強化しつつある。具体的には、農業の専門知識を提供したり、インフラ整備を後押ししたりしているが、環境破壊などさまざまな問題も指摘されている。一方、世界最大の農業国・米国では『工場型農業』が推進され、食の安全が脅かされているとの懸念も生じている」としている。

【10月18日号】 「『見えない負担』がますます増加」と題して、社会保障と税の一体改革によって生じる家計の将来負担について分析した記事を載せた。同記事は「今後十数年かけて、私たちは巨額の負担を背負っていかなくてはならない。特に、社会保険料がその中核になるだろう。一方、負担の一つである消費増税は、国民にとって最も見えやすいからこそ、政治問題化して議論に上がりにくい。裏を返せば、社会保険料は『見えない負担増』であるため、政治的には注目されにくく、逆に私たちの懐に静かに忍び寄ってくるものであると言えよう」としている。

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