早読み行政誌

真紀子文科相、適役かも(2012年10月22日〜10月26日号)

地方行政

【10月22日号】 東日本大震災の復興予算が、被災地以外で行われる事業にも支出されていることが判明し、批判が強まっている。当初は事実関係の究明と対応策の検討に消極的だった政府・民主党も、野党側の攻勢を受けてようやく動きだした。政府が国会に提出した資料で紹介されたのは8省の11事業。1事業を除く全てが今年度第3次補正予算に計上されている。例えば、国土交通省関係では沖縄国道整備に6000万円、法務省関係では被災地における再犯防止施策の充実・強化に3000万円、農林水産省関係では鯨類捕獲調査安定化推進対策に23億円がそれぞれ支出されている。大津波に襲われた東北地方の沿岸部などは、今もさら地のままで復興が進んでいない地域が少なくない。今回指摘された事業についても、所管省庁はさまざまな理由を付けて正当化しているようだが、こうした省庁の抵抗を排して貴重な予算を被災地に集中し、強力に復興を進めるのが政治家の役割ではないか。(内政フォーカス)

【10月25日号】 全国各地の自治体が地域再生ビジョンをつくっている。しかし、地域の特性を考慮した上で具体的なアクションにつながる地域ビジョンをつくるのはなかなか難しい。自治体の職員だけで考えると独り善がり、あるいは総花的で全体像が見えないものになったり、夢を語るだけで終わったりすることも多いようだ。かといって、コンサルタントに任せすぎると、よその地域と代わり映えしない内容になったりもする。そんな中にあって、山梨県富士吉田市の場合はユニークだった。たまたま商工会議所(堀内光一郎会頭)が、創立60周年の記念事業として、青年部(2011年度会長・加々見達也氏)で地域ビジョンづくりに挑戦した。作業は、地元の民間企業の経営者たちが市役所とコンサルタントの支援のもとで行った。調査を11年4月から始め、今年3月にビジョンが完成した。本連載では、その内容を紹介するとともに、地域ビジョンづくりのコツについて考えたい。また、ビジョンを机上の空論に終わらせることなく、具体的なアクションにつなげるためには何が必要か、ビジョンづくりを行う上での留意点についても探ってみたい。(木曜連載「官民連携による『地域ビジョン』のつくり方」)

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内外教育

【10月23日号】 「あの人は文部科学省が実は合っているのではないか。最初が科技庁だったこともあるし」─。あの人とは、田中真紀子文部科学相。発言の主はある霞が関OB。「大臣室から笑い声が絶えない」という証言も内外教育の最近号に掲載されている。文科省三役の定例記者会見・抄録が毎号掲載されているので、役所の中の雰囲気を知るには格好の材料だ。外相時代の官僚とのさまざまなトラブルが記憶にまだまだ生々しいだけに、文科省の役人も様子を見ながらの慎重発進だった。しかし、ここまでの大臣記者会見録を見る限りでは、とりあえず無難なスタートになっている、と見えるのだが。

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厚生福祉

【10月23日号】 特集「多様化する保育所と経営」4回目は、「保育事業の決算、特性と利用者のニーズ」と題し、帝国データバンクや自治体などの調査から、保育事業を展開する企業の決算の状況、経営面での特性、保育所利用者の意見や要望—を取り上げた。行政の補助がなければ採算を取ることが難しいものの、利用者側のニーズは多様化しており、病児保育や延長保育といった付加的なサービスには保育料負担増を容認する人が少なくないなど、保育事業の市場としての特性や可能性がうかがえる。「地域を支える」は、京都の「はあと・フレンズ・ストア」。障害福祉施設で作られる授産品を、一般の消費者にもアピールできるものにしようと、商品の厳選・開発・企業とのコラボなどに取り組んでいる。同様のショップにとっても参考になる内容だろう。「進言」は、国立療養所邑久光明園入所者自治会の屋猛司会長。高齢の入所者の生活を支える介護員も公務員であり、国家公務員削減の対象となることを懸念し、「対象から完全に除外すべきである」と訴えている。当事者ならではのもっともな提言だ。

【10月26日号】 和歌山県のNPO法人が、最先端の脊椎治療技術を全国の医師に伝授するプログラムをスタートさせた。大学医局の枠を超え、NPOが専門医を育成しようという画期的な取り組みだ。和歌山県内の医師不足対策も兼ねるプログラムの詳細を紹介する(特集「日本初、医師の資格取得支援プログラム」)。10月前期の「社説拝見」は、「環境税導入と原発稼働をめぐって」と題し、10月に導入された環境税や高齢者雇用問題、山中伸弥京都大教授のノーベル医学・生理学賞受賞決定などをめぐる各紙の論調を取り上げた。

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税務経理

【10月23日号】 「わたしの苦心」欄は、「ゼロからのスタート」と題して、水戸市の取り組みを紹介。同市の市税収納率はじりじりと下降を続け、2010年度末では県内44団体中40位、特例市中最下位となった。この現状をどうやって打開していくか。2011年度は3月に発生した東日本大震災による2万件以上もの罹災(りさい)家屋への対応が最優先であり、職員は、昼は調査、夜は滞納事案に向かい合うといった日々が続いた。被災した市庁舎の会議室に長テーブルを並べただけの劣悪な執務環境の中で、職員の疲労はピークに達していた。そういった中で、出てきた職員の提案を基にいろんなことを試みた。例えば、部内管理職による臨戸徴収や休日滞納整理など、準備に時間がかかる割には成果が上がらなかったパフォーマンスもやめ、先進都市で効果を上げていた色つき封筒や差押さえのイラストを載せた催告書を活用し、アウトプットからアウトカムを求める滞納整理に転換した。50人を超す職員の意識の方向性を合わせるために、毎朝、ショートトークも続けた。それらの結果、前年度に比べ差押さえ件数は1.9倍、収納率も全税で0.9ポイント増となった。引き続き、「多くの納期内納税者の声なき声に耳を傾けながら、公平・公正の実現と財源の確保に向けて努力していきたい」としている。

【10月26日号】 「わたしの苦心」欄は、「復興後を見据えて」と題して、宮城県の取り組みを紹介。同県は、2009年4月に県と県内25市町村が協働して、「宮城県地方税滞納整理機構」を設置した。2010年度は、引受額16億4000万円のうち徴収額5億3000万円、徴収率は目標とした25%を大きく上回る32.4%を達成。こうした中、昨年3月に発生した東日本大震災は、本県に甚大な被害をもたらした。県をはじめ多くの市町村では復旧復興が最大の課題となり、徴収業務はいったん停止状態となった。しかし、いわゆる「有事」でも税の公平性を確保するためには、滞納者の担税力の確認を徹底し、被災者には徴収猶予などの法に基づく緩和措置を進める一方、非被災者からはしっかり徴収する、是々非々の姿勢が不可欠として、震災後に臨むべき徴収業務の基本的姿勢を確認し合い、滞納整理に取り組むことにした。その結果、2011年度は、大震災による影響で実質的に徴収を開始したのが7月からだったが、引受額13億1000万円のうち6億円を徴収し、徴収率は過去最高の45.5%を達成した。同機構は、2014年度まで3年間存続することとし、県は「この間、大震災からの復興後も見据えて、市町村が単独で高い徴収率が達成できるよう、確かな道筋をつくっていきたい」としている。

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金融財政ビジネス

【10月22日号】 「景気は足元にもたつき感」と題して、身近な社会現象などを基に最近の景気動向を分析した記事を掲載した。同記事は「日本の景気は、足元にもたつき感が出てきた。これまでは、欧州債務危機などで外需は弱いが、内需はそれなりにしっかりしていた。例えば、9月の日銀企業短期経済観測調査(短観)の業況判断指数(DI=『良い』から『悪い』を差し引いた数値)では、外需の影響が大きい大企業製造業はマイナス3と弱いが、内需関連が主体の大企業非製造業はプラス8と底堅い。東日本大震災からの復興需要や元気な高齢者の消費などは景気にとってプラス要因だが、目先は、自国の景気が減速する中『反日』を強めた中国の動きや、エコカー補助金などの政策効果の反動といったマイナス要因から、もたついた景気局面になりそうだ。外需の先行きを見ると、米経済がこれからしっかりしてきそうだ。欧州債務危機も、欧州中央銀行(ECB)の対応などを受けて取りあえず落ち着いている。鉱工業生産指数など国内の統計数値を表面的に捉えると、短い景気後退局面が認定される可能性もゼロではない。しかし、経済統計は2013年に入ると再びしっかりした数字が出てきそうだ。外需の若干の持ち直しが期待でき、内需も消費税率引き上げ前の駆け込み需要が出てくると予想されるため、底堅いだろう」としている。

【10月25日号】 「回復傾向強まるREIT市場」と題して、最近の不動産投資信託(REIT)市場の動向について分析した記事を載せた。同記事は「今年6月以降、REIT市場の回復傾向が顕著になっている。08年のリーマン・ショック以降、REITへの投資から離れていた地方銀行などの国内金融機関が再びREIT市場に戻ってきたほか、オフィスビルなどの実物不動産の市況が好転したことも追い風となっている。REIT市場の回復は当面の間続くと予想されるが、ファイナンス事例の増加などによって、短期的な調整局面が出てくる可能性がある。さらに、投資信託法の改正など、REIT制度の根幹を見直す動きも具体化している」としている。

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