【11月12日号】 あれは、2009年の初夏のころだった。経団連のシンクタンク21世紀政策研究所で公営企業の生産性改善の可能性を模索するプロジェクトを進めていたときだった。ケーススタディーに選んでいたのは水道事業。その損益計算書をずっと眺めて、はたと気づいた。なぜこれほど、金利支払いが多いのか。水道事業の料金収入の15%くらいが利払いに消えている。よくビールの税率(350ミリリットルにつき77円)が高いことが話題になるが、水道料金の金利支払比率もそれ以上に高いように感じられる。そうした事実に気づいてしまうと、自治体と民間企業の金利水準を比較してみたくなる。自治体と同様、社会性のあるサービスを提供している業種を選んだ。電力、ガス、通信、鉄道、不動産開発。比較して初めて分かったのは、確かにバブル期までは自治体の方が調達金利は低い。ところがバブル期が終わって長期的な不景気に陥ってしまうと、これらの民間企業の方が調達金利は低くなっていく。「自治体の調達金利は民間よりも低い」というのが、「神話」だったということに気づいた瞬間でもあった。(月曜連載「自治体の財務マネジメント戦略」)
【11月15日号】 東日本大震災では、停電やサーバーダウンにより、自治体の公式ウェブサイトが機能しなかった。一方で、ツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアがその威力を発揮した。発災直後は電気も止まり、ツイッターどころではなかったかもしれないが、それはテレビなどのメディアも同じであろう。携帯電話やスマートフォンを使って、停電や運休、物資の不足、被害状況、安否確認の情報、ときには「助けて!」という救助要請までが投稿された。報道機関が取材できないミクロの情報を拾うことができ、たくさんの人の役に立った。その様子を知り、新たにツイッターやフェイスブックのアカウントを取得する人も増えた。自治体も次々とツイッターアカウントを取得している。匿名で利用できるツイッターは、情報の信頼性に不安があるが、自治体のツイートは信用できる。市民の期待は大きい。まだ利用していない自治体は、ぜひともツイッターアカウントを取得してほしい。また、最近はフェイスブックの利用者が増えているため、フェイスブックページの作成も急務だ。「あれもこれも利用するのは大変だ」と思われるかもしれないが、市民の利便性を考えると、自治体はさまざまな情報発信の手段を用意すべきである。(木曜隔週連載「続・ソーシャルメディアの活用」)
【11月13日号】 秋田公立美術大学など3大学の不認可を田中真紀子文科相が発表したのは、週末金曜日の2日の閣議後の定例記者会見。混乱の始まりだった。この時点で「不認可」は副大臣にも知らされず、この決定を知らされていたのは森口次官と前川官房長だけだった。週が明けて3大学が猛反撃を開始。メディアを含めてのその反響の大きさに、さすがの真紀子さんも軌道修正を余儀なくされたというのが、真相だろう。その混乱の6日間を内外教育編集部の文科省担当記者が生の言葉をちりばめて再現、検証している。浮き上がるのは、政治家としての問題意識を現状に移し替える力量を持ち合わせていない、寂しい姿だ。
【11月16日号】 いじめを発見し、防止することはできるのか。文部科学省の研究機関である国立教育政策研究所が11月4日、公開シンポジウムを開催した。日曜日にもかかわらず300人以上が詰め掛け、熱心に耳を傾けた。それで、いじめ防止の特効薬は見つかったのか。あるわけもないことが確認された。いじめを生まないためには、早期発見・早期対応ではなく、居場所づくり・絆づくりによる未然防止こそ重要という見解が表明されている。公開シンポの詳細を読んでいただきたい。
【11月13日号】 新たなタイプの肺がん原因遺伝子を発見した間野博行自治医科大教授が、53歳の若さで今年秋の紫綬褒章を受賞した。4年で新薬開発に結びついた画期的な発見だった(「最速4年で画期的な肺がん新薬」)。シリーズ「重要労働関係法の改正とそのポイント」2回目は、高年齢者雇用安定法を取り上げた。年金支給年齢の段階的な引き上げと連動し、原則として希望者全員を65歳まで継続雇用する法律だが、例外となるケースなど、やや複雑で分かりづらいその内容を解説している。「地域を支える」は、静岡県の「ふじのくに地域医療支援センター」。人口あたりの医師数が全国平均よりかなり低い同県が、医師のキャリア形成を支援し、医師確保と地域医療の向上を図ろうとスタートさせた取り組み。他の自治体にも参考になりそうだ。10月後期の「社説拝見」は「高齢化と医療費をめぐって」と題し、高齢者医療費や年金、生活保護などに関する各紙の論調を取り上げた。
【11月16日号】 巻頭言は増田未知子氏の「認知症予防学会によせて」。認知症の一次・二次予防を目指す「スリーA方式」考案者である同氏のもとに、同方式に関する問い合わせが相次いだという。自身は出席していないが、同学会で何人もの人が発表したためインパクトが大きかったのだろうといい、厚生労働省は予防のマニュアルをウォーキングのみで示しているが多種類の予防法を認めてもらいたいと訴えている。「地域を支える」は那覇市の特別養護老人ホーム「大名」。「地域とともに歩む」を理念に掲げ、地域住民との交流事業に積極的に取り組んでいる姿を紹介する。特集「多様化する保育所と経営」7回目は、保育所運営に関する国の基準や認可要件に、各自治体がどのように対処してきたかに焦点を当て、千葉県、横浜市、さいたま市の例を取り上げた。国の最低基準をそのまま適用している部分もあれば、それぞれ独自に、より手厚い、またはきめ細かい規定を置いている部分もあることが分かる。
【11月13日号】 巻頭の「フォーラム」は、元自治省税務局長の滝実氏が「地方消費税至上主義の発想」と題して寄稿。「地方交付税を廃止して地方消費税に一本化すべきだとする地方消費税至上主義の発想がある」と前置きした上で、この構想を検証。「今、何故、地方消費税なのか。今後3年間で消費税が10%になれば消費税総額は25兆円になり、地方交付税17兆円と今後3年間で拡大される予定の地方消費税3.85兆円とを合わせて取り込むのに十分な金額になる。なかなか見事な計算が成り立つ」とした上で、「しかし、これが問題になる。地方消費税は地方交付税の交付団体であろうとなかろうと地域の消費額に応じて配分されている。その結果、これまでの地方交付税の不交付団体にも地方交付税財源が配分されることになる」「小泉内閣が打ち出した『三位一体の地方財政改革』で多くの地方団体は財政赤字に苦労した。それでもこの改革によって義務教育国庫負担金等の一部を地方交付税に取り込み、地方財源の調整機能を前進させたことは評価できる。それに反し、地方交付税を地方消費税に取り込む発想は、せっかくの改革を揺り戻そうとする地方交付税不交付団体の立場からの発想のように見受けられる」などと指摘している。
【11月16日号】 巻頭の「フォーラム」は、弁護士の阿部泰隆氏が「政治主導の法治国家違反」と題して寄稿。「政治主導とは、政治家個人が独善的に判断するのではなく、国民の支持を得たマニフェスト(政権公約)に従って、政権として、官僚機構をしっかり使って、適切に指導するべきものである」とした上で、先の文部科学省を舞台にした大学の設置認可をめぐるドタバタ劇を取り上げている。「政治家といえども、国家運営の基本原理である法治行政の原理に従うことはイロハのイである」「大臣は、多すぎる大学の質を問題としているようだが、それなら、大学設置基準が、基準を満たせば大学の濫設を許容して、自由競争に任せるとしていることが問題であるから、設置基準を見直さなければならない」「また、新設を抑制するだけではなく、既存の大学の教育体制をも厳しく監視する仕組みをどうつくるかが課題となる」などと指摘。最後に「大臣は答申に従う義務はなく、認可権を有するが、それは法治行政の原則に従って行使されなければならない。文科省が定めて天下に公示した設置基準に従った審議会の答申を無視することは、自ら定めた基準を無視する違法がある」「大臣は、最終的には批判に抵抗できず認可するとして片付け、問題を提起できたなどと言っていたが、法治行政を知らない者は、公務員なら能力不足で分限免職である。政治家最低基準試験が欲しい」と結んでいる
【11月12日号】 「深刻化する日米の景気」と題して、11月の景気動向と金融情勢について分析した記事を掲載した。同記事は「米国の企業業績は悪化に向かい始めている。設備投資は既に弱含んでおり、株価も調整局面を迎えよう。加えて、雇用・賃金情勢の改善テンポも再び鈍化に向かうだろう。住宅投資は改善し始めているが、牽引車としては力不足だ。主役不在で同国の経済成長率は再び鈍化に向かうと見込まれる。日本経済については、米国、中国向けを筆頭に、輸出が先行き減少傾向を強めていくとみられる。個人消費も、賃金情勢が冴えない中、新車購入需要を大きく先食いしてしまったため、失速の恐れが生じている。柱となる項目が見当たらず、既に景気後退に陥っている可能性が高い」としている。
【11月15日号】 「新興・開発途上国の成長力に活路を」と題して、世界経済が抱える下振れリスクについて解説した記事を載せた。同記事は「世界経済の下振れリスクが懸念されている。欧州の国家(ソブリン)債務問題と米国のいわゆる『財政の崖』が不確実性を増大させている。欧州のソブリン債務問題は、出口が見えない負の循環を孕む。この不確実性と負の循環の根源は過剰な金融化である。しかし皮肉なことに、先進国では危機に対応するため超金融緩和が進んでいる。他方、新興・開発途上国は外的ショックに対する回復力を強化しているが、世界的な超金融緩和がバブルを引き起こさないよう注意が必要である。日本を含む先進国は、貯蓄と投資が主導する成長へ向けた新興・開発途上国の『グローバル・リバランス(世界の経常収支不均衡の是正)』への取り組みを後押ししつつ、そのダイナミズムと成長力に活路を見いだすべきである」としている。