【12月3日号】 自治体での仕事を始めてしばらくたったある日、自治体の職員が「金利は長期固定が一番安全だ」と話すのを聞いていて、愕然としたことがある。きっと、上司や先輩からそう教えられたまま、深く考えもせず、ずっとそう思いこんできたのに違いない。現実には、長期固定金利が一番安全だなんてことは、あり得ない。金融市場で金利は頻繁に変動する。変動する市場の中で、自分たちだけが動かないとすると、それが一番危ないことなのかもしれない。良いか悪いかはさておき、自治体は多額の負債を抱えている。都道府県クラスでは、1兆円超す地方債残高があることが多い。金融市場について知らなくて済むはずがない。金融市場の特性や論理を無視して、自治体経営は考えられない。では、金融とは何であろうか。文字通り、お金を融通することではあるが、その本質はリスクの評価、リスクの値付け、リスクの管理にある。つまり、リスクの解明が業務の核心であるということだ。(月曜連載「自治体の財務マネジメント戦略」)
【12月6日号】 大阪府池田市の地域分権制度発足から5年を経て見えてきた具体的効果と、残してきた成果を検証してみる。そしてそのことは即、この制度が抱えている問題点も併せて物語ってくれていることに気付かされることにもなった。地域分権制度で住民にばらまいた(?)お金は5年間で約4億円。「自分たちのまちは自分たちで…」「住民の意識改革」など聞こえはいいが、その成果はどこに、どのように反映されているのか。抽象的表現は幾らでもできるが、具体的に成果を示せといわれるとどうだろうか。4億円の一般財源があれば補助金(7億円)、補助裏としての起債(10.5億円)、そしてそれに見合う一般財源で21億円規模の箱物建設が可能になるはずである。果たして、消えた4億円となってはいないのだろうか。(木曜隔週連載「地域分権制度から考える『国のかたちとコミュニティ』」)
【12月4日号】 師走。1年を締めくくる月であるはずが、選挙シーズンになった。原発や消費税などの陰に隠れて、教育をめぐる政策論争は一般紙でも影が薄い。そこで民主党、自民党の教育政策を比較分析した。自民党は、民主党の輿石東幹事長が日教組出身であることを念頭に「日教組の影響を受けている民主党には、真の教育再生はできない」などと明確に民主党との違いを強調している。違いどころか、対決色が鮮明なものになっている。どちらを選ぶのか。維新をはじめ新しい政党や連合グループが乱立しているからこそ、教育政策という地味だが重要な視点から投票先を考えてみることも意味があるのではないだろうか。
【12月7日号】 医学部の学費は私立だと数千万円にもなる。普通のサラリーマン家庭で負担できる額ではない。「親の財力」によって、子の将来が決まってしまっている。最近の医学部入学者の状況は「ペアレントクラシー」なのだ。一方で、地方の勤務医が足りない。最終面の匿名コラム「ラウンジ」で、筆者は「医師養成には莫大な国費が投入されている。全ての医師に一定期間、地域医療への従事を義務付けるくらいのことがあっていい」と主張する。まさに正論だ。地域医療への貢献を拒むような医師には、国費投入は必要ない。
【12月4日号】 特集「特定看護師」では今号から、大分県立看護科学大学大学院の老年NPコース1期生4人の活動現場を順次紹介していく。1回目は村井恒之さん。透析室などの看護師経験を経て、慢性疾患を抱えて地域で暮らす人を支えるため、訪問看護の質を上げるべく取り組んでいる。「ワンコイン健診の現場から」vol.9は、アジアへの事業展開を視野にオンライン英会話レッスンを受け始めたところ、フィリピン人英会話講師の実に8割が看護師資格を持っていた─とのエピソード。看護師の資格を取っても、劣悪な労働条件と給与の低さからかフィリピン国内では働きたがらず、同国内で看護師が不足する一方、多くの看護師らが失業状態で別の仕事を持っているそうだ。こうした、医療や雇用の問題の解決につながりそうな方向性をも示しているところが興味深い。「インタビュールーム」は福島県立大の山下俊一副学長。放射線による健康被害について、過去の知見から分かっていることと分かっていないことを明確にし、県民の不安軽減に努めている。11月前期の「社説拝見」は、厚生年金基金制度の廃止方針や、持病のある人の運転免許制度、派遣労働の規制強化などをめぐる各紙の論調を紹介した。
【12月7日号】 特集「多様化する保育所と経営」9回目は、国の面積基準とその解釈、さらに2011年に制度化された「条例委任」にスポットを当てる。前回取り上げた愛知県碧南市の幼児死亡事故の背景の一つとして、この分かりづらく解釈が分かれる面積基準があるようだ。「進言」は佐賀県障害福祉課長の宮原弘行氏。佐賀県では発達支援の早期発見・早期療育を中心とする支援システムに全国に先駆けて着手、「佐賀県モデル」として他県から多くの視察を受け入れているという。これまでの取り組みで見えてきた課題を踏まえ、新たなモデルの構築を目指している。遅れに遅れていた社会保障制度改革国民会議がようやく始動した。来年8月21日までに結論を出す予定だが、与野党間で見解の隔たりが大きい高齢者医療や年金制度について短い期間でどこまで実効的な形で意見集約できるか、注目される。
【12月4日号】 巻頭の「フォーラム」は、東大名誉教授の神野直彦氏が「無意味な二重課税論」と題して寄稿。「消費税および地方消費税の増税が日程に上ると、自動車取得税、自動車重量税、ゴルフ場利用税などの廃税や減税が大合唱となっている。その理由は、消費税と地方消費税という一般消費税がこうした租税と二重課税だという点にある」とした上で、「租税分類上、相違する自動車取得税やゴルフ場利用税を、一般消費税と二重課税だというのは暴論である。そうした二重課税論に立つと、複税制度は成り立たなくなる。所得を分配された時に所得税が課税され、所得を支出した時に消費税が課税されるのは、二重課税だということになってしまう。というよりも、子供たちが口にするミルクも、飢えを凌(しの)ぐ食餌(しょくじ)も負担が重くなる時に、自動車やゴルフの遊興への負担を重くしないことは正義に反する」と指摘。さらに、「今回の課税は社会保障の財源を充実するための増税であることを忘れてはならない。そのためにミルクや食餌の負担増にも国民が耐えているのに、一部の企業のみが負担を回避することは容認すべきでない。自動車取得税も自動車重量税も環境関連税制として位置付けられ世界的には重くしていくことが、租税政策の流れ。負担を軽減する根拠には乏しいと言わざるを得ない」としている。
【12月7日号】 「わたしの苦心」欄は「徴収の心構え」と題して、奈良県橿原市の取り組みを紹介。1990年代初め、同市では増え続ける未収金に対し、「収納率の向上・税収確保」をモットーに、一斉電話催告や夜間・休日訪問徴収などのいわゆるローラー作戦や、庁内の管理職と他課職員を動員した特別徴収を実施してきた。しかし滞納整理は、個票をはじめ全てが紙ベースで行われていたため決して効率的とは言えなかった。このため、電算システムによる滞納管理システムの導入を目指すとともに、新たな滞納者を増やさないため(1)「現年度課税分の優先徴収」を中心とした滞納整理(2)債権を中心とした効果的な差し押さえの実施(3)不良債権の積極的な執行停止処理(4)徴収職員の育成—を基本方針として、収納率向上と税収確保に努めてきた。同市収税課では「現時点では、基本方針も職員に浸透し、徴収率が向上するとともに、職員も一人ひとりが滞納を許さない『正義感・責任感・行動力』のある人材に日々成長している。『滞納整理は人なり、人材育成が最短の道なり』を忘れず、今後も邁進(まいしん)していきたい」としている。
【12月3日号】 「法律改正の必要性や実現の可能性を探る」と題して、日銀に対して政治が要求すると想定される政策について解説した記事を掲載した。同記事は「日銀に対する政治からの圧力が強まっている。こうした圧力が具体化する姿として7種類の政策を想定し、法律改正の必要性や、想定した政策の実現の可能性自体を探ってみよう。一方、日銀の自己資本比率の低迷ぶりを見ると、無制限に金融緩和を求めることにも限界がありそうだ。日銀の自己資本のさらなる毀損を避けながら、デフレ脱却に向けて政府と日銀が連携する策として『資産買い入れ等の基金』のオフバランス化が考えられる。これに関しては、英国の資産買い取りファシリティー(APF)が参考になると思われる」としている。
【12月6日号】 「かつての『経済計画』復活を」と題して、日本にとって大きな課題である成長政策について解説した記事を載せた。同記事は「日本経済には二つの大きな課題がある。一つは、財政の維持可能性を確保することであり、もう一つは経済成長率を引き上げていくことである。本稿では、後者の成長政策について考えてみたい。日本が成長政策を特に必要としているのは、これまでの日本の経済成長パフォーマンスがあまりにも悪いからだ。近年の日本の実質成長率は主要先進国と比べて相当低い。名目成長率はデフレが影響しているため、もっと悲惨である。こうして長期的に低い成長率を続けているということは、数々の成長のメリットを国民が享受する度合いが相対的に小さいということである」としている。