【12月10日号】 日本の自治体にはCFOはいない。では、誰が財務責任者なのかというと、よく分からない状況にある。明確に分かるのは、地方債を発行する際の起案責任者は誰かということである。東京都という例外を除くと、基本的には総務部局の中の公債グループなどと呼ばれる係の長ということになる。公債グループ長は、知事・市長、副知事・副市長、総務部長、財政課長の次の層のポジションである。上から数えて5層目である。公債グループ長は、もちろん自治体経営に大きな影響力を与えているわけではない。地方債の発行額、発行方法の立案をすることがあっても、予算編成に大きな影響を及ぼすことはない。そもそも首長からみても自分の右腕という存在では決してない。海外の自治体CFOでも、企業のCFOでも、最大の役割は、お金という経営資源には限りがあるということを深く認識して、事業の絞り込みを行うことである。首長と、公債グループ長の間に何階層もあるような地位の違いがあれば、公債グループ長が首長に何かもの申すことはできない。その結果、どうしても予算は膨張しがちとなる。冷静な視点で、将来のことを省みない無謀な計画を抑える仕組みが、日本の自治体には備わっていないということでもある。(月曜連載「自治体の財務マネジメント戦略」)
【12月13日号】 「ある自治体」のガイドラインでは、ツイッター、フェイスブック共に、「情報の発信については、原則として広報課長の決裁を必要とする」と定められている。以下の行為も、「特に広報課長が必要と認める」場合のみ、行ってよいもので、原則として禁止されている。▽ツイッターにおけるリプライ、リツイート、フォロー▽フェイスブックページ、アカウントへのコメント、返信コメント、シェア、「いいね!」機能の使用─。つまり、一切のコミュニケーションを禁止していると言えるだろう。この自治体のガイドラインは、フェイスブックで評判になっていたが、筆者が目にした限りでは、次のような否定的な意見ばかりだった。「課長、『いいね!』してよろしいでしょうか。……うむ、よろしいぞよ……なんて、いちいちやるのかね」「ディフェンシブ過ぎて、ソーシャルメディアの双方向性をつぶしちゃうガイドラインですね」「それじゃあ、ホームページと何が違うんだろう。そこまでして、ツイッターやフェイスブックを使わなくていいんじゃない?」「なんでも課長決裁にすると、ソーシャルメディアを使いこなせないことが、課長の責任になってしまいますね」─。やはり、上司の許可を得ることや、決裁という手続きを踏むことは、ソーシャルメディアには不向きなのではないだろうか。(木曜隔週連載「続・ソーシャルメディアの活用」)
【12月11日号】 2013年度から高校の英語の授業は「英語で行うことを基本とする」と指導要領が定めている。英語教師の本当の実力が問われることになるが、連載「視学官・教育課程調査官の講義ノート」では「英語で教える12のポイント」として授業づくりの要諦を簡潔に分かりやすくまとめている。詳細については、読まれることをお勧めするが、一番先に挙げられているポイントは教師と生徒との親和関係をつくることだ。親和関係をつくることによって、教室から過度の緊張をなくし、誤りが受け入れられる雰囲気が生まれる、というのだ。なるほど、ポイントを突いている。
【12月14日号】 国立教育政策研究所など世界の教育機関が加入する「国際教育到達度評価学会(IEA、本部アムステルダム)」は、2011年に実施された小学校4年生と中学校2年生を対象にした「国際数学・理科教育動向調査」の結果を公表した。3ページにわたって詳報が報告されている。小学校は4年前の前回調査に比べて平均得点が上昇した。習熟度の低い児童の割合が減少し、高い児童の割合が増加した。中学は前回と比べてほぼ横ばいで推移した。理数学力の低下傾向に歯止めが掛かったとされる前回調査からさらに、改善傾向を示している。
【12月11日号】 大分県立看護科学大学大学院の老年NPコース1期生を順次紹介している特集「特定看護師」、2人目は塩月成則さん。地域に密着した病院で、糖尿病などの入院患者30〜35人を副担当として受け持ち、診療や学びにいそしむ日々だ(「看護師の経験、診療に生かす」)。建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、肺がんや中皮腫を患った元労働者らの訴訟で、東京地裁は国の対策が不十分だったとして賠償を命じた。同種の訴訟で、大阪高裁や横浜地裁は国の責任を否定しており、判断が分かれている。関連記事をまとめた(「『規制措置は不十分』、国の責任認める」)。「進言」は、発達障害や知的障害のある人の就労支援を行うNPO法人家族支援フォーラム理事長の米田順哉氏。障害者が「働く」ということの意味を、経済的自立以外の観点から伝えている。11月後期の「社説拝見」は、「総選挙控え、各党に政策問う」と題し、選挙公約の社会保障政策や原子力政策などをめぐる各紙の論調を紹介する。
【12月14日】 特集「多様化する保育所と経営」10回目は、「条例委任」を受けて各都道府県がどのような基準を条例で定めたか、あるいは定めようとしているかに焦点をあて、東京都、秋田県、兵庫県、大阪市などの具体例を取り上げた。中でも大阪市は、何かと話題の橋下市長が国よりも低い面積基準を容認する方針を示し、物議を醸している。日本年金機構は、年金記録問題への対応として「ねんきんネット」の機能を強化する。自分が保険料を支払った期間や、将来受け取る見込み額などが確認できる現行の機能に加え、持ち主が分からない記録を事業所名などから検索できるようにする(「ネット使った対応強化」)。「インタビュールーム」は、和歌山県太地町社会福祉協議会事務局長の岡本研氏。同町は、お年寄りが家に閉じこもりがちにならないよう、「町全体が老人ホーム」との構想を掲げており、休憩用ベンチや多目的トイレを整備するなど高齢者に優しい町づくりに取り組んでいる。当たり前のようでなかなかない発想だ。
【12月11日号】 巻頭の「フォーラム」は、慶応大学法学部教授の片山善博氏が「石原都政と税の思い出」と題して寄稿。「石原慎太郎東京都知事が突然辞任表明をした直後、筆者はあるマスコミから『石原都政を一言で総括したらどうなるか』と尋ねられたが、それには答えなかった。とても一言で総括することなどできなかったからだ」。鳥取県知事時代を含め、都が打ち出したホテル税構想をめぐる論争や、都が銀行を対象に導入した事業税の外形標準課税をめぐる議論などを紹介。さらにこんな話も。「鳥取県知事在任中、県内で軽油引取税の巨額脱税事犯の端緒が見つかったことがある。強制調査に踏み切ることにしたのだが、いかんせん軽油引取税の強制調査を経験した職員が一人もいない。そこで東京都に協力を要請し、専門職員の派遣を仰いで県税職員の研修に当たるなどしてもらった。そのおかげもあって、困難な強制調査も首尾よく終えることができた。ホテル税論争をやり合った後で、東京都と鳥取県とが微妙な間柄にあっただけに、広い心で協力を惜しまなかった主税局の皆さんには頭の下がる思いだった」
【12月14日号】 巻頭の「フォーラム」は、一橋大学名誉教授の石弘光氏が「スタートした地球温暖化対策税」と題して寄稿。化石燃料を課税ベースに、そこから発生する二酸化炭素(CO2)削減を目的としていた地球温暖化対策税が10月から導入された。同税は、石油石炭税に上乗せされて課税される。税率は2014年4月、さらには2016年4月の2段階で引き上げが予定されている。「長年求められてきた環境税がやっとスタートしたが、地球温暖化対策としては第一歩にすぎない」とした上で、「この税収は、石油石炭税と同じように一般会計税収であるが、原則としてエネルギー特別会計に繰り入れられ、CO2抑制につながる施策に使用される。どうも財源確保の狙いが濃厚で、本来の税負担増で使用を控えさせCO2排出を抑えるという狙いは二義的のようである。環境税に名を借りた財源あさりともいわれかねない」「そもそも東京電力福島原発の事故以来、電気料金の値上げがあり、視点を変えれば、これ自体ある種の環境税の役割を果たすことになる。この地球温暖化対策税の導入はタイミングが悪く、全体としてその意味付けに苦慮しそうである」と結んでいる。
【12月10日号】 「米経済の先行きは不透明」と題して、12月の景気動向と金融情勢について解説した記事を掲載した。同記事は「実質GDP(国内総生産)の速報値段階で堅調とみられていた7〜9月期の米国の個人消費は、改定値が公表されたことにより、弱含んでいたことが明らかになった。もう一本の柱である設備投資も減少に転じている。『財政の崖』を控え、米経済の先行きに不透明感が漂っている。日本経済は景気後退局面に入った可能性が高い。海外景気の減速が続き、純輸出は当分プラス化が望めず、エコカー補助金制度の打ち切りや雇用・賃金情勢の悪化から個人消費も失速している。公的需要のプラス寄与は次第に縮小に向かうとみられ、日本の景気は当面悪化に歯止めがかかりそうにない」としている。
【12月13日号】 「国内景気、来年持ち直しへ」と題して、身近な社会現象などを基に最近の景気動向を分析した記事を載せた。同記事は「11月6日に発表された9月の景気動向指数(CI)の景気判断が『2〜3カ月前に景気の山があった可能性がある』という形で下方修正されたことや、同月12日に発表された7〜9月期の実質GDP(国内総生産)速報値が前期比年率3・5%の減少となったことなどから、にわかに景気後退説が広まった。しかし、11月30日に発表された10月の鉱工業生産指数速報値が前月比1・8%増と4カ月ぶりに増加に転じたことや、生産関連統計が2013年6月に基準の改定を迎えることなどにより、12年3月ごろを山とする景気後退説の根拠が揺らぐ可能性があろう。また、米国での住宅部門の改善、為替相場が1ドル=80円台に戻ったことなど、環境が改善する兆しも出てきていることから、万一景気後退局面が到来したとしても、極めて短期間で終了し、13年は景気が持ち直す可能性が大きいとみられる」としている。