早読み行政誌

強い気持ちで滞納整理(2012年12月17日〜12月21日号)

地方行政

【12月17日号】 少し前に日本で刊行された書籍に「国家は破綻する」という金融の専門書がある。これは、メリーランド大教授のカーメン・M・ラインハートとハーバード大教授のケネス・S・ロゴフによる、800年間にわたる世界中の国債の債務不履行の研究書である。「国家は破綻する」は邦題で、原題はもっと意味深長である。「This Time is Different」という。すなわち「今度は違う」というのが直訳である。国家は、財務状況が悪化しても環境要因などが今度は違うから大丈夫だと訴えるが、結局はやっぱり破綻してしまう、という意味である。「今度は違う」などということはなく、「いつも同じ結果である」というのが、書名の含意である。すでに金融の世界では、日本国債はいつ暴落するのか(言い換えると、いつ国債の金利は極端に跳ね上がるのか)、あるいはいつ債務不履行に陥るのか、と深刻な議論がなされている。それもそのはずで、普通国債だけで約700兆円、その他に財政投融資特別会計国債が約100兆円、政府短期証券が約100兆円、借入金が約50兆円。1000兆円に迫る政府債務は半端な数字ではない。国税は40兆円台だから、政府債務全体で比べると20倍以上の開きがある。(月曜連載「自治体の財務マネジメント戦略」)

【12月20日号】 国の役割と地方の役割─。言うは簡単なことだが、具体的に見ていくと少なからず入り組んでいて分かりにくい。それに加えて地方は地方で、広域自治体の都道府県と基礎自治体の市町村という二層制となっているから、より複雑だ。民主党の目玉政策の一つ(だった)「子ども手当」は、財源の確保が難しいことに加え、衆参議院のねじれ現象も手伝って、ほぼ掛け声だけに終わって、旧児童手当の拡充というところに落ちついた。しかし、そもそもが「すべての子どもたちに月額2万6000円を渡す」とした子ども手当は、本当に「国が国として行うべき仕事」なのだろうか。子ども手当の財源は国費で、給付事務は基礎自治体の仕事である。生活保護も事務は基礎自治体で、費用の4分の3は国が負担。国民年金は国が運営し、国民健康保険は市町村事業。介護保険や後期高齢者医療、保育所と子育て支援、教育行政等々、国と地方が入り組み合って、ほとんどの事業は市町村の窓口を中心に実施されている。住民に一番近いところに市町村の役所があるのだから、当然といえば当然だ。近接性の原理に則って、仕事・財源・権限のすべてを市町村に渡してしまえばよいのではないか。(木曜隔週連載「地域分権制度から考える『国のかたちとコミュニティ』」)

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内外教育

【12月18日号】 日本の大学は既に全入時代を迎えている。学生の学力低下が指摘され、大学入試の在り方を含めて大学教育全般が論議の対象になっている。独立行政法人大学入試センターと文部科学省が共催して開いたシンポジウムは、米国カリフォルニア州で1960年代に大学の大衆化時代を先取りする形で法制化された高等教育計画(マスタープラン)の事例を紹介しながら、「全入時代」の日本の大学の在り方を探った。そのマスタープランの骨格にある制度はコミュニティーカレッジだ。既に半世紀前になる話だが、その在り方は、日本の大学経営にも参考になる視点を提供しているのが瑞々しい。

【12月21日号】 連載「シュタイナー学校の1年」は4月から各月1回、授業の様子を詳細にリポートしている。来年3月までの予定の連載は、佳境を迎えている。12月に取り上げたのは、音楽の授業。「無音を聴く音楽」だ。学園は体験活動とともに芸術をカリキュラムの大きな柱と位置付けている。「音が生まれる前提の静寂にこそ、動きがあり、軽さがあり、行動するためのエネルギーがある」というのが、教師の音楽観の根底にある。その教師が展開する授業は—。子どもたちが音楽の本質に触れる様子が、とても興味深い。

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厚生福祉

【12月18日号】 大分県立看護科学大学大学院の老年NPコース1期生を順次紹介している特集「特定看護師」、3人目は廣瀬福美さん。立ち上げから関わった高齢者施設で、利用者の健康の維持向上を目指し、スタッフの教育にも取り組んでいる(「生活の場で、高齢者の健康守る」)。iPS細胞を開発した山中伸弥京都大教授に、ノーベル賞が授与された。受賞の意義や式典の様子など関連記事をまとめた(「山中さんにメダル授与」)。「地域を支える」で紹介するのは、鳥取県南部町の住民組織、「東西町地域振興協議会」。高齢化率が高く独居の人も多い地域で、住民自身による見守り・高齢者支援の体制づくりに取り組んでいる。

【12月21日号】 千葉県の亀田総合病院などを抱える亀田グループが、2014年度から3年間の専門課程による看護師養成を目指している。学校開設の準備に奔走する小松俊平氏が、看護師養成をめぐる社会の状況や、政策上の問題点、経営上の問題等について、現場の視点からひも解き、提言する(シリーズ「メディカル・マネジメント最前線 看護師養成の背景、意義および主体─千葉県の状況から考える」)。「地域を支える」は、知的障害者らが働くレストランを運営する社会福祉法人「シンフォニー」。障害者が家に閉じこもってしまわないよう、町に出て活動できる場づくりに取り組んできた、自身も障害者の母である村上和子理事長のバイタリティーに感服する。特集「多様化する保育所と経営」11回目は、保育所設置基準をめぐる札幌市、仙台市、京都市などの条例・条例案を見た後、それに対する市民からの反応(パブリックコメント)と、全国社会福祉協議会の報告書に盛り込まれた現状に焦点を当てる。

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税務経理

【12月18日号】 「わたしの苦心」欄は、「強い気持ちで滞納整理」と題して、甲府市の取り組みを紹介。同市滞納整理課では、「強い気持ち」で取り組んでいく手法として、(1)「教育・労働・納税」は国民の三大義務であり、滞納に伴う延滞金が年14.6%掛かる(2)給与照会等の財産調査をして差し押さえをする(3)インターネット公売もしている—ことなど、滞納処分に関するパンフレットを相談窓口に置いている。また、来庁した相談者とは、分納等の約束を守らないときは滞納処分を執行するという内容の話もしっかりして、現実に素早く差し押さえを行うように業務を進めている。その結果、差し押さえ件数の実績は2009年度201件、2010年度277件、2011年度570件、2012年度の上半期424件、滞納繰越分収納率も2011年度は20.05%にアップし、現年度分収納率も2011年度は96.72%と向上している。滞納者からは「市長室」や「市民相談窓口」に苦情が多いのも事実だが、これは、職員がしっかりと業務を行っている証し。筆者は「これからも職員と運命共同体となり、強い気持ちで滞納整理に取り組む」としている。

【12月21日号】 「わたしの苦心」欄は、「環境改善と申告改善」と題して、沖縄県沖縄市の取り組みを紹介。同市市民税課では、ミスのない正確な課税業務を目指し、今年度から「パンチ入力外部委託」を実施。さらに、今後は「新システム導入」により事務の軽減化を図り職場環境を改善していく。こうした対策案は、職員自ら他市町村との業務手法の違いを認識させ先進市情報を収集し、同市に適した手法を考えさせるようにして、問題発見力・解決力の育成に努めている。健康管理維持と業務外コミュニケーションを深める策としては、課内減量作戦を行っている。例年、税申告会場で苦情内容が最も多いのが「待ち時間が長い」。財政的に厳しい状況の中、自前の対応策として、待ち時間は変わらずとも心理的な面で待ち時間を苦痛と感じさせないようにするため、待合室に借用大型テレビを設置するとともに、子連れの人が多いことも考慮し幼児向けの図書コーナーを設置した。その結果、苦情が激減。同課では「今後もキッズコーナーの設置を予定するなど、市民目線でさらなる申告改善に努めていきたい」としている。

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金融財政ビジネス

【12月17日号】 「誰がIFRS導入を歓迎しているのか」と題して、国際会計基準の動向について解説した記事を掲載した。同記事は「オバマ米大統領が再選された。これまでのオバマ政権の国際会計基準(IFRS)への対応から見て、今後4年間、IFRSをそのままの形で米国企業に適用するシナリオは考えられなくなった。オバマ政権の目は、今や欧州ではなくアジアに向けられている。IFRSを米国企業に適用するとすれば、今後も延々と欧州諸国との間で綱引きを演じ続けなければならない。米国は、いまさらIFRS問題で時間を取られたくないだろう。日本の方はどうか。金融庁企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議が『国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)』を取りまとめたのは今年6月14日(公表は7月2日)だった。そこでは、2009年の『中間報告』(『我が国における国際会計基準の取扱いについて』)が打ち出した『連結先行』論(時間差を設けて個別財務諸表と連結財務諸表の両方にIFRSを適用する案)は影を潜め、IFRSを適用するケースはあっても、連結財務諸表だけにとどめるという『連単分離』論(個別財務諸表には日本の会計基準〈J−GAAP〉を適用)が打ち出された。また、中間報告で打ち出されていた『全ての上場会社に強制適用』というシナリオに関しても、中間的論点整理では直接的な記述はなく、『任意適用の積み上げ』を図ることが謳われた。今年に入ってからのわが国での議論も、米国に劣らず『冷めた』ものになってきている」としている。

【12月20日号 「日本企業のトルコへの関心高まる」と題して、トルコをめぐる最近の情勢について分析した記事を載せた。同記事は「トルコに関しては従来、多くの日本人にとって『遠い国』とのイメージが強かったと思われるが、近年は11の世界遺産に加え、世界的に有名な都市であるイスタンブールなど観光面での人気が上昇しているほか、日本企業の進出先・投資先として関心が高まっている。筆者も今年春に現地を訪問し、同国の経済発展の熱気を肌で感じることができた。本稿では、近年のトルコの経済や産業・企業動向を中心に述べることとする。同国については、より関係が深い欧州諸国との比較の観点から取り上げられることが多いが、筆者はアジア地域を主たる研究対象にしているため、経済状況や投資環境、国際競争力などについてアジアの状況と比較しながら論を進める。日本企業の多くにとっては、より身近なアジア諸国との比較は興味深いのではないかと思われるからである」としている。

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