早読み行政誌

地域金融機関のカネ余り(2013年1月7日〜1月11日号)

地方行政

【1月7日号】 現状の地域金融機関の実態は、圧倒的なカネ余り状況に置かれている。人口の高齢化は、消費性向の高い世代が減少していることを意味している。住宅を取得したい世代は、20代後半から40代前半だ。自動車、家電などの耐久消費財も60歳未満の世代が主な購買層となる。個人の借り入れニーズは決して高くない。その一方で、概して高齢世帯の方が保有している金融資産は多い。退職金も手にするであろうし、老後に備えて蓄積した金融資産自体も多い。老後を考えると、あまり危ない投資はできない。株式ばかり購入して値下がりしたら、もはや労働収入はないので、大変なことになる。そのため、銀行に預金がどんどん集まることになる。こうして、どんどん預金が流入し、貸出先が見つからない状況が深刻化していく。預金に対する貸出金の比率、預貸率はこの15年間、下がり続けている。特に信用金庫は120兆円もの預金を集めながら、預貸率は50%程度にすぎない。地方銀行、第二地方銀行(旧・相互銀行の総称)も、預貸率は70%強に甘んじている。その結果、地域金融機関は、140兆円以上のカネ余り(預金残高−貸出残高)に陥っているのである(月曜連載「自治体の財務マネジメント戦略」)

【1月10日号】 民主主義を推し進めていく上で欠くことができないのは、住民の意識改革である。「国会議員が地元の葬式に行ったり、祭りを回ったりすべきではない」。その通りだが、現実はなかなか難しい。どうしてだろう。「国会議員が地域のお祭りなんかに顔出しして票稼ぎしなくても、国会でちゃんと国民のために仕事をしてくれさえすれば、私たちは正しく評価して応援するんですから、頑張ってくださいね」と、そこまでは良いのだが、「まあ、うちの祭りだけは別枠で、来年も来てくださいよ」となる。「うちの祭りだけは」「きょうくらいは」、さらに「A議員は気軽に顔出ししてくれたが、B議員は地域の祭りにも来ない。地域の声を聞く気がないのではないか」となってしまう。「政治家は次の世代のことを考え、政治屋は次の選挙のことを考える」という。だから政治屋にはならずに国家・国民のことを考え、働く政治家になるべし。その通りではあるが、実際には目の前の選挙に当選しないことには国家・国民のために働く舞台に登ることができないのである。だから、何をおいても「次の選挙のこと」を考えざるを得ないのが現状だ。特に、現行の小選挙区制度がそのことを際立たせているのではないだろうか。(木曜隔週連載「地域分権制度から考える『国のかたちとコミュニティ』」)

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内外教育

【1月11日号】 労働の種類はいくつあるのだろうか。肉体労働と頭脳労働。もう一つ、感情労働。この感情労働を、米国の社会学者ホックシールドは「顧客をある特定の感情状態にするために、声のトーンや表情、態度を調整することによって自分の感情を管理する仕事」と呼んでいる。現代社会は感情労働にあふれているが、教師の仕事で言えば、子どもたちに対して、保護者に対して、それぞれの感情労働をしている。「人相手の仕事は疲れる」ことになる。連載「モンスターペアレント論を超えて」は、学校での感情労働が変化しているのではないか、と問題提起。人格者として振る舞う中で、自分の感情が枯渇する生きづらさを指摘する。

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厚生福祉

【1月8日号】 妊婦の血液を調べるだけで高い確率で胎児の染色体異常が分かる新型出生前診断について、日本産科婦人科学会が指針案を発表した。安易な中絶や障害者差別につながる恐れがあるとして、実施には慎重な声も強く、これを踏まえて対象者を35歳以上の妊婦などに限定し、実施する医療機関にも十分な遺伝カウンセリング体制などを求めている(「対象の妊婦35歳以上」)。「インタビュールーム」は、介護職員のメンタルヘルスを研究テーマに、実践を通じて介護の人材育成に努める柳澤利之・新潟青陵大学短期大学部准教授。人手不足が問題となっている介護業界において、離職につながるストレスを軽減する方策を伝える。特集「多様化する保育所と経営」12回目は、認定こども園の認可基準を、熊本県を例にとって見る。

【1月11日号】 特集「特定看護師」10回目は、高度実践看護コースの修了生20人を送り出した東京医療保健大学大学院が、修了生をサポートするための事業の一環として行った施設訪問の結果を報告する(「修了生の働いている現場を訪問して」)。いまだ制度化されていない特定看護師の受け入れにあたっての施設側の戸惑いや、体制整備の努力などが分かる内容だ。「ワンコイン健診の現場から」vol.10は、元潜在看護師40人がケアプロで活躍しているという話。潜在看護師とは、結婚、出産、病気などで退職し、資格はあるのに働いていない看護師のことで、全国に55万人いると言われる。ケアプロでの仕事に「予防医療に貢献できてうれしい」「病院の激務と違って長く続けられる」との声が聞かれるばかりか、自ら起業に動き出した潜在看護師もいるそうだ。山形県で大学生が119番通報したのに救急車が出動せず、死亡して発見された事案は、いわゆる「たらい回し」など救急医療をめぐる社会問題も背景に、通報への対応の在り方が注目される。昨年10月に開かれた民事訴訟の第1回口頭弁論の内容を中心に、詳報を伝える(「救急車の不出動めぐり訴訟」)。

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税務経理

【1月8日号】 巻頭の「フォーラム」は、財団法人地方自治研究機構会長の石原信雄氏が「新政権と税制改革」と題して寄稿。安倍新政権に対し、「わが国は、現在内政面でも外交安全保障の面でも多くの課題を抱えており、早速これらの国難な課題への対応を迫られる」とした上で、税制改正に関し、消費税率の引き上げについては、「今回の引き上げ幅は、わが国の財政事情や社会保障制度の今後を考えればいわば最小限度のものといえるので、経済状況を理由に税率引き上げを見送るようなことは絶対避けてほしい」と強調。地方税制の改正に関しては、(1)自動車取得税および自動車重量税の見直しでは、現在でも弱体と批判されている地方税制をさらに弱体化するような改革は避けてほしい(2)地方法人特別税および地方法人特別譲与税制度の見直しは、地方法人課税の在り方を見直すことにより税源の偏在性を是正する方策を講ずることと一体で実施すべきである(3)竹馬に乗っているような不安定な地方交付税制度をより安定したものとするためにも、そのリンク対象となっている所得税等の強化充実が望まれる─としている。新春論文は、慶応大法学部教授の片山善博氏が「地方分権改革と自治体の見識」と題して寄稿。

【1月11日号】 「私の苦心」欄は、「組織力向上による税収確保を目指して」と題し、京都府の取り組みを紹介。京都府と京都市を除く各市町村は、広域連合「京都地方税機構」を設立し、2010年1月から徴収業務を共同化、さらに2012年4月からは法人関係税の課税事務の共同化を開始した。滞納案件は督促状発付と同時に税機構に徴収権限を移管し、各自治体から派遣された税機構職員が、府税や市税等の一体的な滞納整理を行っている。府税を取り巻く状況は厳しく、調定額・収入額が減少傾向にあり、徴収率の向上と税収確保には、税機構の滞納整理に依存するだけではなく、移管件数を減らす取り組みが重要となっている。税務行政の信頼度や納税者の納税意欲を高める必要があるが、そのためには税務職員の対応が大きく影響する。京都府の北部に位置する中丹広域振興局では「迅速な対応」「わかりやすい説明」などの項目を網羅した行動指針を策定し、カードにして全税務職員が携帯している。さらに、地元特産品をモデルにした税PRキャラクターの作成や税に関するキッズコーナーを振興局ホームページに立ち上げるなど、職員の柔軟な発想による提案や改善も進んでいる。同振興局税務室では「職員の高い知識とモチベーションの維持には、目的達成に向けて一丸となって取り組む組織風土づくりも不可欠」としている。

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金融財政ビジネス

【1月7日号】 「かつての輝き薄れるBRICs」と題して、主要新興国の現状と課題について分析した記事を載せた。同記事は「2008年のリーマン・ショック後、世界的な金融危機から世界経済を立ち上がらせる『救世主』となったのが、主要新興国だった。中でもBRICsと呼ばれる中国、インド、ロシア、ブラジルの4カ国は11年まで世界経済の成長エンジンとも言える役割を果たしてきた。しかし、12年に入ってBRICsの経済は変調を来した。10年以降の欧州債務危機を背景に先進国の停滞がBRICsの景気減速をもたらし、それが先進国に跳ね返る『負の連鎖』が作用し始めており、経済運営でも問題を抱えている。さらに、BRICsでは11年までの急速な経済発展の陰で汚職や腐敗がはびこるようになり、各国で政治不信が強まっている。このように、輝きは薄れてきたと言え、13年を迎えてその動向から目が離せないBRICsの現状と課題の分析を試みる」としている。

【1月10日号】 「米国で移民制度改革が浮上」と題して、オバマ米政権の課題となっている移民制度改革について解説した記事を掲載した。同記事は「第2期オバマ米政権の重要課題として、移民制度改革が浮上している。オバマ政権にとって移民制度改革は第1期からの積み残し課題であり、これまで不法移民対策の強化を優先してきた共和党の側でも、大統領選挙でヒスパニック票が離れていった反省から、移民に厳しい党の姿勢を見直す機運がある。高い技能を持つ移民の受け入れの円滑化など、経済的な利点に着目した改革を中心に今後、議会などで議論が盛り上がりそうだ」としている。

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