【1月17日号】 2011年3月11日の東日本大震災で、岩手県沿岸部の市町村に壊滅的な被害があった。当時、岩手県の市町村課に所属していた佐々木琢磨氏に話を聞いた。震災当日は、定期人事異動の内示日だった。誰がどこへ異動するという話題で持ち切りの県庁を、突然、激しい揺れが襲った。いったん停電したものの、すぐに非常用発電装置が稼働し、復電した。市町村課では、県内の市町村の安否を確認すべく、電話をかけ始めた。しかし、沿岸部の市町村と連絡が取れない。民放のテレビ局が設置した定点カメラで、宮古市の様子は知ることができた。津波が防潮堤を越えて市街地に入ってくるところを見て、甚大な被害が出ることが予想されたが、それ以外の情報はなかなか入手できなかった。企業に借りた衛星携帯を配布してから、ようやく連絡が取れるようになってきたが、停電により使えない自治体もあった。情報の伝達ルートにも問題があった。佐々木氏によれば、市町村から情報を収集するだけで、市町村に対するフィードバックができなかったという。例えば、「インスリンと毛布が必要だ」と言われ、それを県の災対本部に伝えたが、その市町村に「インスリンは命にかかわるものだ。いつ来るのか」などと聞かれても、答えることができなかった。なぜならば、物資の調達・配布は、市町村課とは別の課が担当していたからだ。同じ県庁内であっても、その情報は伝わってこない。つまり、市町村の担当者→県の市町村課→県の災対本部→県の物資調達・配布の担当課→市町村の各避難所…という、一方通行の情報伝達ルートができてしまっていたのだ。(特集「東日本大震災と『情報』」)
【1月15日号】 道徳をどう教えることができるのか。現場教師には難しい課題である。道徳性の育成を図るとは、社会性や規範意識、思いやりなど生徒の豊かな人間性を育むことであるが、いずれにしても抽象的な指摘である。連載「ここが授業のポイント」32回では、澤田浩一・国立教育政策研究所教育課程調査官が分かりやすく指導している。(1)対話を重視し教師と生徒が共に語り合う(2)既知のことを改めて問い直し共に考える(3)魅力的な教材を選び十分吟味し活用する—の三つのポイントを指摘する。道徳の時間の構成に悩む教師には、格好のアドバイスが並んでいる。
【1月18日号】 「新閣僚インタビュー」として、田村憲久厚生労働相のインタビュー記事を掲載。政権交代を経て、社会保障制度改革はどこに向かうのか、生活保護をはじめ山積みの課題にどのように取り組もうとしているのか、注目される。医薬品のインターネット販売規制をめぐる訴訟で、国の敗訴が確定。安全性を第一に対面販売の原則を重視し、ネット販売を規制してきた国の姿勢が違法とされたことで、今後の医薬品行政に与える影響は大きそうだ(「薬ネット販売、国の敗訴確定」)。「地域を支える」は、札幌市のNPO法人「自殺・うつ病対策家族の会きずな」を紹介。悩む人にとって身近な「地域」の力を生かした独自資格「地域対話士」を創設し、自殺・孤立死防止対策に取り組んでいる。特集「多様化する保育所と経営」13回目は、認可外保育施設の定義や現況のほか、保育内容などをめぐる各種調査結果を取り上げた。
【1月18日号】 「私の苦心」欄は、「案件完結に向けて」と題し、札幌市の取り組みを紹介。札幌市は2010年10月に、10区役所にあった税務部を中央・北部・東部・南部・西部の5市税事務所に集約した。市税事務所に集約した際に、滞納事案を現年班、滞繰班、処分班および高額班(滞納100万円以上)に担当を分類する「機能分担型滞納整理」を導入した。中央市税事務所では、2012年度から滞繰班に滞納50万円以上の案件を専門に扱う「準高額担当」を設け滞納整理のベテランを配置。長期間にわたって滞納している案件の早期完結に努めている。また、従来から行っている不動産、動産、預金、生命保険の差し押さえにとどまらず、継続的に収納が見込める給与差押を積極的に行っている。軽自動車とオートバイのタイヤロックによる差し押さえも実施した。タイヤロックは効果絶大で、タイヤロックした当日に延滞金を含めた平均100万円超の滞納税が納付され完結した。タイヤロックは、事前調査に時間を要するが、滞納者へのインパクトも大きく、市税事務所では、普通自動車にも広げたいとしている。2012年10月の同事務所の案件数は前年同月比で1500件、うち100万円超は同160件それぞれ減少したという。
【1月17日号】 「日米共に今年は低成長」と題して、1月の景気動向と金融情勢について解説した記事を載せた。同記事は「米国の『財政の崖』問題は、一応打開策について合意に至ったが、2カ月以内には債務上限の引き上げと並んで積み残した部分についても合意する必要がある。どのような形であれ、歳入の増加および歳出の削減は実体経済を下押しする。今年の同国の経済成長率は2012年を下回ることになろう。日本の12年10〜12月期の実質GDP(国内総生産)は小幅ながら前期比マイナスが見込まれる。3四半期連続のマイナスとなり、景気後退と判定される可能性がますます高くなるだろう。1〜3月期は小幅なプラス成長に転じるとみられるが、牽引役は見当たらず、低成長が続くことになろう」としている。