早読み行政誌

断腸の思い(2013年2月4日〜2月8日号)

地方行政

【2月4日号】 右肩上がりの経済成長、そして人口が増加する時代にあっては、生産年齢人口が増加すると市民1人当たりの税収も増加した。ところが、人口減少と高齢化の時代では税収の減少と高支出構造が続く。自治体の財政収支の悪化を防ぐには、市民に対する行政サービスを抑制し、財政構造に見合った支出構造に転換する必要がある。財政制約の中で、公共サービスの水準を上げられないと、地域が従来の行政サービスの一部を負担せざるを得ない。行政サービスの内容を市民ニーズに合致した内容に見直すなどのコスト削減策が求められる。対策としては、第一に長期的な緩やかな人口増加策、特に15〜64歳の生産年齢人口を増やす施策が必要である。第二に住宅施策の転換が考えられる。たとえば大阪府豊中市における若年層の増大策や、千葉県佐倉市のユーカリが丘等で見られる入居時期の分散化による高齢化抑制策などがあり得る。第三に、65〜74歳の前期高齢者を75歳以上の後期高齢者向けの福祉サービス提供者に変身させるといった施策があり得る。第四に、継続的な開発投資を企画し、生産年齢人口を誘引する努力が欠かせない。そして、これらの施策は単独で行うのではなく、ポリシーミックスとして実行すべきである。人口急増都市は、超高齢化社会が来てから対策を打つのではなく、まだ余裕のあるときに早急に対策を立てなければならない。(月曜連載「人口急増都市と高齢化リスク」)

【2月8日号】 地方公務員給与を7月から削減することが政治主導で決まり、2013年度の地方財政対策が決着した。税収の伸びを見込み、地方交付税総額(出口ベース)は12年度比2.2%減の17兆624億円と、6年ぶりに前年度を下回った。給与関係経費を削減する一方で、これに見合う額を地方財政計画の歳出に「地域の元気づくり事業費」などの特別枠として計上した。社会保障関係の大幅な自然増を「きっちり見込み」(総務省自治財政局)、一般財源総額は前年度並みの水準を確保した。出口ベースの交付税総額は、民主党政権では3年連続して増額だった。今回の減額について、新藤義孝総務相は「前年度の総額を維持できなかったことについては断腸の思い。一方で、国全体の財政再建を行い、日本の再生を図るという政権の意志の下、われわれとしてはぎりぎりの交渉をした」と語った。その上で、「13年度予算では国債発行が税収を4年ぶりに下回ることになった。われわれは財政再建を行うことに合わせて、財政規律を保つという姿勢を示すことが極めて重要だったと思う」と強調している。(特集「13年度地方財政対策」)

地方行政表紙 地方行政とは

内外教育

【2月5日号】 いじめの問題は早期の発見が重要であることは、教育界では常識となっているが、この早期の発見が本当に難しいことなのだ。1月末に佐賀市で開かれた日教組の教研集会で、校内の全児童を対象に「心の健康チェックシート」というアンケートを継続して実施して効果を上げていることが報告された。アンケートは子どもたちが本当の心のうちを明かすかどうかが、鍵となる。年間を通して継続的に実施することで、繰り返し子どもたちが自分の内面を問い返し、それが早期発見につながっているというのだ。命を守るために、毎日の積み重ねという、何の変哲もない努力こそ怠ってはいけないことなのだろう。 

【2月8日号】 大阪市立桜宮高校の体罰自殺に続き、柔道オリンピック女子代表監督の暴力問題も発覚し、日本のスポーツ界にはびこる暴力体質が全面的に明らかになった。一切の体罰は禁止、と言っても、一部からは「暴力を受けたが、それで強くなれた」という擁護論も上がる。「巨人の星」など「スポ根」というマンガ文化の領域では、暴力描写が必ず登場している。もしかしたら、暴力体質は日本人のメンタリティーを形成する一部ではないかとさえ思えてくる。決して容認することはできない暴力の問題。教育現場は、暴力体質ときちんと決別することに向けて努力する必要がある。今号では巻頭エッセー「ひとこと」から最終面「ラウンジ」まで、ほとんどが体罰・暴力問題を考えている。

内外教育表紙 地方行政とは

厚生福祉

【2月5日号】 低賃金と離職率の高さが問題となっている介護業界。今後ますます人手不足が予想される中、キャリアパス導入によってこうした問題を解決しようと、静岡県が対策に乗り出した。介護施設に対して直接的にパス導入を働き掛けるとともに、モデル給与表を作るなどして導入を支援する(特集「介護職のキャリアパス導入を要請」)。「地域を支える」は、未婚男女に出会いの場を提供する「あおもり出会いサポートセンター」。1月29日号で愛媛県の「えひめ結婚支援センター」を紹介したばかりだが、行政による〝安心・安全な婚活〟は少子化対策の一環として一つのトレンドといえそうだ。1月前期の「社説拝見」は、高齢者医療費の窓口負担据え置きや、薬のネット販売に関する最高裁判決、少子化と労働力などをめぐる各紙の論調を取り上げた。

【2月8日号】 巻頭言は伊藤雅治・全国社会保険協会連合会理事長の「医療安全対策の再構築を」。全社連は、米ハーバード大の医療事故対応マニュアルを取り入れて「医療有害事象・対応指針」を作成、グループ全病院で活用している。今回は、マニュアルのみならず原因究明から賠償、再発防止策の検討、医療従事者の再教育まで体系的に実施しているハーバード大関連病院の医療事故対策を紹介。組織ごとにバラバラな日本の対策も、見直すべきではないかと提言している。特集「2013年度主要省庁予算詳報」1回目は厚生労働省。生活扶助費の引き下げなどがポイントだ。「地域を支える」は、福岡市の障害福祉サービス事業所「JOY倶楽部」。単純作業が中心の授産事業ではなく、音楽・芸術を通じて障害者の社会参加を実現している。特集「多様化する保育所と経営」16回目は、認可外保育施設の立ち入り調査にスポットを当てた。保育所運営の適切さを確保する手段として重要な立ち入り調査が、どのような内容で行われ、どのように結果が公表されているか、東京都や大阪市などを例に解説する。

厚生福祉表紙 地方行政とは

税務経理

【2月5日号】 「私の苦心」欄は、「22年ぶりの徴収業務に戸惑いながら」と題し、2011年に総勢27人の和歌山県税事務所の納税課長として22年ぶりに徴収業務に携わることになった筆者を通して、和歌山県の取り組みを紹介。着任早々に着手したことは、第一に、部下(仲間)とのコミュニケーションを図ること。第二に、課内研修の充実。筆者を含め職員16人中9人が新たに納税課に着任した新人で、滞納整理の基礎を身につけることが急務だったことや、徴収業務をフォローする滞納整理支援システムが新たに稼働し、このシステムのマスターも大きな課題となった。第三には、滞納額が40万円を超える高額滞納事案(231件)の整理。第四は個人県民税対策。同県では県税未収額の7割超が個人県民税で、特に和歌山市の個人住民税の徴収率の動向が県税全体の徴収率に影響を与えかねない状況のため、和歌山市との日ごろからの徴収連携(職員の短期併任派遣、合同捜索、不動産公売など)に力を注いだ。最後に筆者は「私たち徴税吏員が常に背負っているのは、善良な納税者の思いです。この思いを決して忘れることなく、これからも滞納ゼロを目指して、和歌山県税事務所納税課職員一同が日々の徴収に頑張っていく考えです」と結んでいる。

【2月8日号】 「私の苦心」欄は、「当たり前でないことを当たり前に」と題し、山口県下関市の取り組みを紹介。筆者で、2012年4月に着任した納税課長によると、「徴税業務は、既に整備された法令という道路を、脱輪しないよう注意しながらひた走る、という感覚」。ただ、今、徴税業務を通じて痛感することがあるという。「私たち徴税吏員は、『人でなし!鬼!無慈悲だ!』などとののしられ、疎まれながら、職責を全うすべく納税交渉を続け、財産を調査し、滞納処分を行うなど、公平性と財源の確保のために毎日努力している。しかし、他の職場のどれだけの職員が、そのことを理解しているか?」。もう一つ痛感する大きな課題は、納税しやすい環境を整備すること。筆者は「納税の利便性を高めることが、徴収強化とのバランス上からも急務であることは間違いない。現在はまだ当たり前でないことを、できるだけ早く当たり前にする。滞納者の怒鳴り声を聞きながら、部下の頑張りにも報いるため、もっと努力しなくてはと思う毎日です」と締めくくっている。

税務経理表紙 地方行政とは

金融財政ビジネス

【2月4日号】 「米国で注目集める革新的企業家」と題して、インターネット関連企業の躍進で注目を集めている革新的企業家(アントレプレナー)について解説した記事を載せた。同記事は「米国でアップルやグーグル、アマゾン・ドット・コムなどのインターネット関連企業が大躍進したことによって、従来のビジネスモデルに拘泥しないアントレプレナーの役割が改めて注目されている。米英には普遍主義のカルチャーが存在し、標準化や規格化が得意だ。それに対して日本では、標準化や規格化を妨げる諸制度がイノベーション(革新)の障害になっている上、個別主義や共同体主義のカルチャーも組織の再編や新組織の形成を阻害しており、そのことが非効率を生み、社会の進歩の妨げとなっている」としている。

【2月7日号】 「2年以内に1ドル=112円も」と題して、今後の為替相場について分析した記事を掲載した。同記事は「安倍政権誕生への期待で昨年11月中旬から始まった円高修正の動きは、政権発足後も続き、約2カ月半で円は約15%(約12円)下落した。この円安は一時的な相場変動ではなく、日本の政治的・経済的な構造変化による中・長期的な円安トレンドの始まりと筆者は考えている。短期的には、政府・日銀が協調した本格的な金融緩和によるマネーサプライ(通貨供給量)の増加や貿易赤字の拡大による実需面でのドル不足も円安の背景にあるが、国際的には米国経済の回復やユーロ問題の沈静化見通しによるリスクオフ(リスクを回避する行動)からリスクオン(リスクを取る行動)への転換も円安要因だ。中・長期的には、国内総生産(GDP)比200%以上の財政債務問題も日本売りの要因となる。また、円売りポジションを持たないリスクを避けたいという『トレーダー心理』や、チャート的に見た米政権と円相場の関係からも円安の継続を予想できる。一方、円高への巻き戻しの可能性も否定できないが、その確率は小さいだろう。リスクとしては通貨戦争(Currency War)への対応がある。『円高修正』と『円安誘導』の境界線がどこか、また適正な円相場の考え方など、日本の成長戦略との関連で為替相場の動向について的確に情報発信されるか注視したい。今年は『ポリティカル・エコノミー』(国際金融市場の動向を政治からのアプローチで分析する考え方)が、相場予想にとっての鍵だと考えている」としている。

金融財政ビジネス表紙 地方行政とは