【2月14日号】 筆者の長男がイタリア留学から帰国した。彼は、イタリア北部ピエモンテ州の人口6000人ほどのコスティリオーレ村にある「外国人のためのイタリア料理研修機関(ICIF)で学び、そのあと、ミシュラン一つ星リストランテ グイード・ダ・コスティリオーレで研修を受けた。パスタやリゾットのプリモピアット、メーンディッシュのセコンドピアットを担当した。とても充実した内容で、身についたものも大きかったようだ。この留学を強く勧めた。というのも、彼は筆者と同じような食のまちづくりのコーディネートに関わりたいという希望を持っているからだ。ならば、現場でプロから料理を学び、実際に料理を作り、グローバルな視点で文化的な活動を見る力を養った方がいいと思った。ICIFは、海外から研修生を受け入れている。外国人にイタリア料理を学んでもらい、食材の輸出や観光客の誘致につなげようという目的がある。まさに、食文化を根底にした輸出戦略が練られている。これは、NPOスローフード協会のプロモーションも同じで、食材の背景調査や生産加工との連携、調査を基にした書籍の出版、学校教育プログラムの制作と実践、文化としての食の発信など、基礎の組み立てが周到に実践されている。(木曜連載「続・地域力と地域創造」)
【2月12日号】 高校教師が小学校で教えたらどうなるのか—。現場の先生が自らの教育実践を報告する「授業を創る」。本誌の長い歴史を持つ連載もの(掲載は不定期)だが、今回はそんな経験をした高校教師の実践リポートが掲載されている。どんな実践だったかは、ぜひ読んでいただきたいのだが、結末だけ伝えておきます。授業直後に小学校の子どもたちの感想文をもらった。「今日のじゅ業はとても楽しかったです。」筆者の高校教師は感想文集を机の上に置きながら悩んでしまった。「さて、あすの授業では、高校生をどうやって面白がらせようか」と。
【2月15日号】 スマートウェルネスシティ(SWC)とは、住む人が健やかで幸せ(健幸)に暮らせるような街のことだ。歩道や公共交通網といった街のつくりが健康に影響を与えることが知られており、新潟県見附市など7市9団体が政府の地域活性化総合特区の指定を受け、健幸な街づくりに取り組んでいる。新潟市で開かれた「健幸サミット」では、各市の取り組み や課題などが議論された。その模様をお伝えする(特集「地域活性化特区 新潟で『健幸サミット』開催」)。特集「2013年度主要省庁予算詳報」2回目は環境省。再生可能エネルギーの導入・普及や省エネ対策に重点を置き、特に民間資金を引き出す仕組みづくりや他省庁との連携に力を入れているのが特徴だ。「インタビュールーム」は札幌市生活保護担当部長の中村武信氏。同市では昨年、知的障害を持つ40代女性とその姉の「孤立死」が問題化しており、保護を受けるべき人が受けられるよう、行政につながるチャンネルを増やすなど改善に取り組んでいる。1月後期の「社説拝見」は「生活保護費切り下げをめぐって」と題し、保護費切り下げとその影響を受ける低所得者対策、群馬県渋川市の高齢者施設火災の判決、中国の大気汚染問題などに関する各紙の論調を取り上げた。
【2月15日号】 巻頭の「フォーラム」は、東大名誉教授の神野直彦氏が「刺激的課税と公平性」と題して寄稿。租税をデフレ脱却や雇用促進の手段として活用することが声高に叫ばれている。公共サービスの財源を、公平に調達するという租税本来の使命ではなく、経済政策の手段として租税を活用することを「刺激的課税」と呼んでいる。しかし、雇用促進に例を取るなら、この「刺激的課税」には雇用促進行動を採る企業に租税優遇措置を適用する「租税刺激」とともに、雇用促進にとって望ましくない行動を採用する企業に対して租税重課措置を適用する「_正(きょうせい)的課税」があることを忘れてはならない。「刺激的課税」を租税本来の使命と両立させながら、しかも効果的に実施しようとすれば、「租税刺激」と「_正的課税」を組み合わせるべきである。ところが、日本では「刺激的課税」という優遇措置のみが独走する。法人税では支払い賃金は控除され、課税されることがない。つまり、人件費を増加させれば、それだけ法人税の負担を低めることができるのである。それにもかかわらず人件費を増加させた企業に、法人税の税額が控除されようとしている。これは租税優遇措置というよりも、文字通り人件費を増加させた企業への補助金である。円安で原材料が高騰し、経営難に苦しみながらも、従業員のために人件費を増加させている赤字企業には、この税額控除という補助金は交付されない。課税の公平が政治を動かす企業によって打ち砕かれてしまっている。しかし、それによって雇用が促進するかといえば、その効果は疑わしい。