【2月18日号】 東北地方太平洋沖地震の発生から間もなく2年になります。東日本大震災は、この大地震およびその余震によってもたらされた地震被害、津波被害、原発事故被害などの総称です。広域避難を含む避難生活や生活再建の困難さ、住まいの確保、コミュニティーの維持再生、心身の健康確保、災害時要援護者支援、風評被害等による農林水産業や観光業の不振、インフラの整備、除染活動、災害廃棄物の処理など膨大な課題が今なお山積しています。したがって、東日本大震災は現在も継続している大災害です。どの被災地も復興への努力を懸命に続けていますが、あまりの被害の大きさに十分な進展が見えていない地域もあります。これまでと同様に、否、これまで以上に、被災地に思いを寄せながら、一緒に歩みたいと考えています。一方で、東日本大震災をきっかけに、次の大地震やその対策に関心が集まり、全国各地で地域防災の新しい動きが始まっています。次の震災被害を軽減させるためには、すぐれた活動を学び水平展開しなければなりません。(月曜連載「地域防災最前線」)
【2月21日号】 農林水産省の「地産地消の仕事人と学ぶ・現地検討会」(運営・都市農山漁村交流活性化機構)が3年目を迎えた。地産地消の仕事人は、農業者や直売所運営者、学校給食に関わる栄養教諭など、地域農産物の活用に貢献している人で、農水省が各地の推薦を受けて認定している。筆者も現地検討会の運営委員として参加した。そこで提唱したのが、すぐれた仕事人がいる現地で学ぶ合宿形式のノウハウ共有活動だ。これまでに福島県猪苗代町、長崎県大村市、新潟市、奈良県明日香村、群馬県高崎市、愛媛県今治市、和歌山県田辺市、滋賀県東近江市などで開催した。全国から自治体や農業、直売所、学校給食の関係者らがたくさん集まった。検討会の特長は、▽仕事人が持つ経験やノウハウが公開される▽地域のさまざまな取り組みを現地で直接見ることができる▽集まった仕事人たちと意見やアイデアの交換ができる─ことだ。例えば、高齢者農家の生産物でもしっかりマネジメントさえすれば売れることや、地元で行われる餅つきや稲刈りなどを活用すれば、十分に集客可能なイベントになること、観光地でなくても景色がよければ人が集まる要素になることなど、現場に行けばいろいろな発見がある。(木曜連載「続・地域力と地域創造」)
【2月19日号】 経済協力開発機構(OECD)が2012年に実施した「生徒の学習到達度調査」(PISA)は13年末にその結果が公表される。義務教育終了後の15歳を対象にする能力測定だが、その結果によっては、「ピサショック」を起こすこともある。日本もそれをきっかけに「脱ゆとり—低学力論争」が起きたことがある。ただ、能力を測ることは決して容易ではない。どういう側面を測るかによって、まず、違ってくる。3月初めに東京で開かれた国際シンポで「新しい学力」を判定する道が探られた。学力観について考えさせられる、とても興味深い内容のリポートをお届けする。
【2月22日号】 体罰は日本の文化になっているのではないか、という疑問が起きることがある。柔道女子の日本代表チーム監督が告発されたことをきっかけにして、学校教育の場だけではなく、暴力体質がスポーツ界全体にもともと蔓延していたことを直感させられた人は多いのではないだろうか。コミックのスポ根ものには、暴力場面が必ず出てくることを考えると、日本文化が暴力に対して寛容なのではと疑いたくなる。教育現場では、体罰を「愛のムチ」とかばってきた。「モンスター・ペアレント論を超えて」の筆者小野田正利大阪大学大学院教授は、「体罰は麻薬のようなもの」として、体罰を否定する。「愛のムチ」は「愛の無知」という自分勝手な思い上がり、という主張だ。
【2月19日号】 特集「多様化する保育所と経営」17回目のタイトルは、「認可外保育施設での事故と関係者の見解」。施設における乳幼児の事故は認可保育所でもそれなりの件数起きているものの、死亡事故に限ると認可外の方が明らかに高い発生率だという。こうした統計データや、主な死亡事故の事例などを取り上げた。特集「2013年度主要省庁予算詳報」3回目は、経済産業省。再生医療や介護ロボットなど、医療・介護産業の創出に重点が置かれている。長崎県のグループホームで火災が発生、高齢者4人が死亡した。市から防火対策の不備を指摘されていたが、スプリンクラーの設置義務がない小規模施設で、同様の施設の9割は未設置だという。多くの高齢者施設にとって、人ごとではいられない事故だろう(「グループホーム火災、4人死亡」)。「地域を支える」は、卒業を控えた特別支援学校生徒を対象に「身だしなみ講座」を開いている資生堂販売の三重オフィス。社会に出るにあたり、マナーや身だしなみを身につけると同時に、自分を見つめる意識を学び、自分らしく毎日を過ごせるようにとの思いがある。
【2月22日号】 富山県では地域活性化総合特区の指定を受け、高齢者、障害者、児童といった福祉行政の縦割りを排した地域共生型福祉施策を推進している。「赤ちゃんからお年寄りまで、障害の有無にかかわらず誰もが一緒に住み慣れた地域で日中過ごせる場所」としての「富山型デイサービス」に始まる長年の取り組みについて、県厚生部長の小林秀幸氏が2回に渡り概説し、共生型福祉の全国展開への期待を語る。「インタビュールーム」は、日本三大秘境ともいわれる徳島県西部の三好市祖谷地区で診療所長を務める宮城亮氏。「保健や福祉との連携が大事」と、へき地ならではの在宅医療の課題や魅力について語っている。政府の規制改革会議が開かれ、「健康・医療」など4分野59項目の論点が挙げられた。医療分野では混合診療の範囲拡大などが盛り込まれ、議論の方向次第では現場への影響も大きそうだ(「混合診療の範囲拡大」)。
【2月19日号】 「私の苦心」欄は、「恐れず ひるまず へこたれず」と題し、鳥取県の取り組みを紹介。同県の2011年度県税決算(徴収率97.7%)における滞納額は約11億円、このうち個人県民税が約9億円と県税滞納額の8割を超える状況が2008年度以降続いている。県税滞納額の縮減のため、2010年4月に県内全19市町村と共同して滞納整理を行う「鳥取県地方税滞納整理機構」を設立した。しかし一方で、機構の対象とならない滞納者が多数存在すること、また、任意組織のため調査権などの自力執行権を持たないことから財産調査や差し押さえ手続きなどは県と市町村が別々に行う必要があることなど、万全な取り組みではない。県は最大の効果・効率性を発揮するため、滞納整理を行う法定組織の創設について検討をしてきたが、ある自治体から「滞納整理事務だけではなく、課税事務を含めた検討が必要だ」との提案があり、現在、課税事務を含む税務事務に係る市町村との共同化について、権限と責任が効率よく確実に発揮できる持続可能な組織が構築できないか、関係機関等と共同して検討を進めている。今後も「自主財源を確保するという使命」と「滞納は絶対に許さないという正義」を信念とし、「恐れず・ひるまず・へこたれず」で、困難事案等に取り組んでいきたいとしている。
【2月22日号】 巻頭の「フォーラム」は、一橋大学名誉教授の石弘光氏が「復興増税に思う」と題して寄稿。今年1月1日から、所得税の復興増税が始まった。「震災の痛みを国民皆で分かち合い、現世代で負担しようという趣旨でこの臨時増税が始まった」と前置きした上で、「第一に思うことは、負担が余りに長期になりすぎるということである。所得税の臨時増税が25年に及ぶとなると、後世代へツケが及ぶのは明らかであろう。今にして思えば、当然たばこ税も含め所得税の増税期間を短縮すべきであったと思う。第二に、25年間も毎年苦労して所得税の臨時増税に耐えても、その増収分はわずかに7.5兆円にすぎない。今般、安倍内閣の大型補正予算編成で、デフレ脱却と称し長年死守した44兆円の壁をいとも簡単に超え、安易に5.5兆円追加発行することになった」と指摘。最後に「政治家は安易に将来の財源のメドも付けずに国債を発行するが、その償還のために国民が長期間毎年耐えねばならない。今回の増税フレームと同じにすると、18年間も必要になることが分かる」と締めくくっている。
【2月18日号】 「交渉の密室性と『知財条項』に危惧」と題して、環太平洋連携協定(TPP)と知的財産権の関係について解説した記事を載せた。同記事は「2012年12月5日、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン、著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム(thinkC)、インターネットユーザー協会(MIAU)の3団体は『TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム提言』を発表した。同フォーラムは、TPP自体に対しては中立的な立場にあるとしながらも、TPPの交渉状況を公開することもしくはそれが実現しない場合にはTPPの対象から『知財条項』を除くことを参加条件にするよう日本政府に要求している。背景には、TPP交渉の密室性と、外部に流出した知財条項の内容に対する強い危惧があり、同フォーラムは『仮に伝えられるような内容のまま日本が加入することになれば、豊かな文化の創造と情報の流通は萎縮し、この国の未来を担う情報・文化セクターを弱体化させ、コンテンツ市場でも日本を輸入超過大国の現状に固定化しかねない』としている。本稿では、この提言に沿って知財保護の側面からTPP交渉にどう対応すべきかについて論じることとしたい」としている。
【2月21日号】 「『八方美人』のアベノミクス」と題して、安倍政権の経済政策について解説した分析した記事を掲載した。同記事は「最近、『リフレ派』と呼ばれる人の『アベノミクス』についての論評を聞いて驚いた。『三本の矢』のうち、金融緩和(リフレ政策)には大いに期待したいが、財政出動と成長戦略などは無意味であると論評していたからだ。筆者とは全く逆の見解だ。リフレに肯定的な人はアベノミクスに全面賛成だと思っていたが、そうではないようなのである。筆者は『日銀の金融政策を完全に方向転換させたのだから、リフレ派と呼ばれる人々は全面勝利を喜んでいる』と思い込んでいた。人によってアベノミクスに対する考え方がこれほど異なっているかと興味深く感じている。そもそも経済政策をめぐっては、経済学者、エコノミスト、ビジネスマンなど、立場によって評価が大きく異なる。従って、ある人が金融緩和、財政再建、景気刺激策のうち一つの立場でどれかに賛成すれば、別のものに対して批判が必ずある。アベノミクスについては、いずれの立場も包含しているため、そうした批判をかわすことができるように設計されているのである」としている。