早読み行政誌

都会のとなりの自然(2013年2月25日〜3月1日号)

地方行政

【2月25日号】 近年の災害では、自衛隊・警察・広域緊急援助隊・緊急消防援助隊、災害派遣医療チーム(DMAT)、国土交通省の緊急災害対策派遣隊(TEC─FORCE)など専門的な緊急対応組織が、被災地の支援を効果的に行っています。またライフライン関連事業者も、全国各地からの支援により早期の復旧を行えるようにしています。ところが、災害対策全般の総合調整を行う自治体の災害対策本部にはこのような組織的支援の仕組みがありません。米国には連邦緊急事態管理庁(FEMA)があり、自治体の災害対応業務を相当程度請け負っていますが、わが国にはこのような組織もありません。そこで、自治体がスーパー防災職員を出し合って、自治体間連携の中心となる日本版FEMAを設置してはどうかと考えます。発災時には、スーパー防災職員の派遣調整、情報収集を行い、迅速な自治体間連携の調整を行います。また、顔の見える関係を活かして他の防災関係機関、民間団体との調整業務を行います。さらに、初動対応を中心に自ら災害対策本部の支援も担います。孫子は「古の善く戦うものは、勝つべくして勝つものなり。善く戦いて勝つや、智名なく勇功なし」という旨の言葉を述べています。戦によく勝つ者は、当たり前のように勝つので、名将との名前も勇ましい功績もありません。自治体職員の防災も、そうありたいと思います。(月曜連載「地域防災最前線」)

【2月28日号】 高知県は、人づくりや物づくりに時間をかけ、小さくとも新しい経済を動かすことに熱心に取り組んでいる。山間地などにある幾つかの現場を見た。馬路村農協は柚子加工で知られる。1200人弱の山村で森林が96%を占める。そこで、柚子のポン酢やドリンクなど50種類以上の商品を生み出し、年に30億円を売り上げる。馬路村農協は山村に革命をもたらした。消費者に直接アプローチしてマーケティングを行い、商品開発に当たってデザイナーも雇った。顧客管理のためのオペレーションセンターをつくり、儲かったお金の一部を村の景観づくりに投資して観光客誘致にもつなげた。地元の雇用を増やし、技術の継承に力を入れ人材育成にも努めた。馬路村への視察は年間100件を超える。それでもなかなか「ナンバー2」が登場しないのは、視察では馬路村が見えないところにお金と時間と人材を投入していることに気づかないからだろう。高知県では、もともと個性を大切にする県民性からなのか、馬路村のようにソフト面に時間と人を投資するという考え方が、県内各地に行き渡っているようだ。(木曜連載「続・地域力と地域創造」)

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内外教育

【2月26日号】 横浜シュタイナー学園の1年間の活動を伝える連載は、公立学校の「家庭科」に相当する専門科目「手仕事」をリポートしている。学園公開でひときわ目を引くのが子どもたちの手芸作品だという。編み物だったり、縫いぐるみだったりするのだが、全児童生徒が9年間を通して手芸に取り組むこと自体、公立学校では考えられない。あまりの出来映えに保護者たちは「本当にわが子の作品?」と驚く。その授業の秘密を再現した。

【3月1日号】 全国各地で町おこし、村おこしの手段として、修学旅行誘致が注目を浴びている。体験プログラムなど旅行メニューに工夫を凝らし、誘致に躍起だ。そんな実例として、神奈川県三浦市の実例を紹介した。横浜、川崎などとの都市間連携も組み込んでいる。強みは修学旅行先として人気の東京ディズニーランドからも90分程度で移動できる。「都会のとなりの自然です」が売り込み文句だ。学校が修学旅行先を検討する際に、誘致側の事情も知っておくべきことであろう。

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厚生福祉

【2月26日号 特集「多様化する保育所と経営」18回目は、引き続き認可外保育施設における乳幼児の死亡事故がテーマ。今回は具体的に神奈川県と香川県を例に取り、県などを相手取った損害賠償請求訴訟で県の責任がどのように認められたか、あるいは認められなかったかを見ていく。「地域を支える」は、妊娠中や子育て中の女性に、保育園をかかりつけ医のように気軽に立ち寄れる場所として利用してもらう「さかいマイ保育園事業」を紹介する。核家族化で近所付き合いも減っている中、育児相談などのサービスを提供し、子育てに関する悩みや孤立感を軽減させる狙いがある。意外とありそうでなかった取り組みだ。2月前期の「社説拝見」は「『スプリンクラーなし』の悲劇繰り返す」と題し、4人が死亡した長崎市の高齢者施設火災、中国の大気汚染、再生医療に関する法整備などをめぐる各紙の論調を取り上げた。

【3月1日号】 特集「特区制度を活用した共生型福祉施策の推進(下)」は、2011年12月に「とやま地域共生型福祉推進特区」が地域活性化総合特区の指定を受けた後、富山県が国との協議を経て実現してきた規制緩和の内容を解説。これらの規制緩和は特区限定ではないとし、厚生労働省も積極的に推進しようとしている「共生型福祉」の全国展開に期待を寄せている。福祉関係者にぜひ一読いただきたい内容だ。「進言」は埼玉県北本市長の石津賢治氏。「笑い」が心身に良い影響を与えることは知られているが、市が吉本興業とプロジェクトを組んで「笑い」の事業を進めているというのは面白い。第2次安倍内閣の予算編成がこのほど発表された。産業振興費や公共事業が増額となる一方、民主党政権下で削減圧力が弱まっていた社会保障費は実質的に抑制されている。発表内容からはなかなか分かりにくい「15カ月予算」の内容をひも解く(解説「2013年度予算 生活保護削減、防衛費は拡大」)。

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税務経理

【2月26日号】 「私の苦心」欄は、「断固たる決意と大いなる覚悟」と題し、長野県茅野市の取り組みを紹介。同市では2010年4月、長野県下19市中の市税収納率最下位という不名誉の中で、徴収部門を分離独立した収納課が発足した。収納課では、「滞納整理は戦略を立案し、戦術を駆使し、スキームにのっとり、スタッフをいかに活用するかが、収納率向上のための大きなポイント。現況を分析する中で、ドラスティックな業務手法変革、意識改革を行わなければ、収納率の向上はあり得ないとの結論に達し、革命に近い徹底した改革を行い、定着させた」。その一つは、処分徴収重視型体制への転換。二つ目はスタッフの有効活用。三つ目は市民風土の変革。延滞金の徴収は、公平性の観点から絶対譲ることができない。四つ目は徹底した事務改善と職員の意識変革。この結果、2011年度の収納率は、一般市税現年97.80%、滞納繰り越し25.49%で県下15位だった。同課では「滞納整理においては、滞納者を納税者に転換することが目的と考えている。今、茅野市の改革は道半ばであり、先進自治体に追いつけ追い越せの気持ちで改革を継続している」としている。

【3月1日号】 「私の苦心」欄は、「マネジメントと人材育成」と題し、東京都の取り組みを紹介。それによると、主税局は1995年に10月に〝構造改革〟を実施した。これまでは、口は動かすが行動は伴わない、差し押さえの議論はするが差し押さえ処分はしない、つまり仕事をしない構造となっていた。構造改革が実施され自分の意思で滞納処分を進めることができるようになり、先輩について銀行の小さな会議室でマイクロフィルムを操作し調査する方法を教えてもらったり、生命保険会社の弁護士から判例の解釈で呼び出しを受けたため、交渉同席をお願いするなど貴重な経験をさせてもらったりもした。こうした経験を同じ職場の同僚や後輩の職員に伝えなければならないとして、職場で時間外に自主的な勉強会がスタート。研修講師の要請が年々増え、現在に至っている。最初の頃は滞納整理実務で起きた失敗事例の悪い見本を教えることから始め、管理職になってからは組織を預かる組織運営者という立場でこれまで経験したことを伝えるようにしているという。最後に、「最近感じることは、組織の長がどれだけマネジメント能力を発揮できるかにより実績が変わるということ。そのためにも、地道なことではあるが、マネジメントを通して次に続く徴税吏員を一人でも多く育成することが必要」と結んでいる。

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金融財政ビジネス

【2月25日号】 「上昇傾向見込まれるREIT市場」と題して、不動産投資信託(REIT)の動向について分析した記事を載せた。同記事は「REITの値動きを示す東証REIT指数(総合指数)が、2012年12月後半から急上昇している。現在は政策に対する期待が先行しているため、今後は調整局面も出てくると思われる。しかし、4月に新年度入りした後は、国内金融機関等による投資が拡大し、再び上昇傾向が強まりそうだ。13年のREIT市場は、不動産市況の回復を受けて安定した運用成績を維持する見通しであるほか、制度や政策による支援もあるため、着実に成長すると予想される」としている。

【2月28日号 「マイナス幅縮小でも先行き不透明」と題して、昨年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報値について解説した記事を掲載した。同記事は「内閣府が2月14日に発表した12年10〜12月期の国内総生産(GDP)1次速報によると、物価変動の影響を除いた実質は前期比0.1%減、年率では0.4%減になった。事前の民間予測値の平均はわずかながらプラスだったが、結果的には3期連続のマイナス成長となった。7〜9月期(前期比1.0%減、年率3.8%減)に比べマイナス幅は大幅に縮小したが、景気が上向く兆しと速断してよいものかどうか、検討を要する。同時に発表された12年暦年の成長率はプラス1.9%で、国際通貨基金(IMF)の予測のプラス2.2%(12年10月発表)を下回った。民間エコノミストの多数は安倍政権の積極的な金融・財政政策を評価し、景気は既に底を打ったとの見方をしているが、12年同様、今年の景気も輸出環境に左右されよう」としている。

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