早読み行政誌

「再生」の意味を問い掛ける(2013年3月11日〜3月15日号)

地方行政

【3月11日号】 3月11日が巡ってきました。改めて東日本大震災の犠牲になられた方々のご冥福をお祈りいたします。言葉にならない無念さを心に深く受け止め、復興支援活動と減災行動につなげてまいります。内閣府は、地震や水害などの被害に遭われた方々にインタビューし、短い物語にまとめる「一日前プロジェクト」を行っています。これは、普通の人が災害に遭ったとき、「どのように行動し、どう感じ、もし災害の1日前に戻れるとしたら何をするか」に答えていただき、その教訓を国民が学び取れることを狙いとしています。私もインタビューやまとめの手伝いをしています。今回は、大震災のわずか5日後に列車を一部運行し、被災者に大きな勇気を与えた三陸鉄道の話を紹介させていただきます。三陸鉄道、通称「さんてつ」は岩手県沿岸部の久慈─宮古間(北リアス線)と釜石─盛間(南リアス線)を走る第三セクターです。インタビューに答えていただいたのは、当時の旅客サービス部長の冨手淳氏と北リアス線運転士の下本修氏です。(月曜連載「地域防災最前線」)

【3月14日号】 地域ならではの人づくり、新たなコトづくりによる経済創出で注目しているのが、長野県飯田市だ。中でも、中山間地での経済活動や再生可能エネルギー活用の取り組み、中小企業のマッチング事業には、目を見張るものがある。中山間地では、450戸の農家が民泊を受け入れ、年に130校の生徒が修学旅行でやってくる。農家に宿泊して現地の日常を体感する。ソバ打ち、五平餅づくり、アユ釣り、乗馬など、地域にあるもので163もの体験メニューを組んだ。四季ごとにさまざまなプログラムがある。地域連携の一環として、1泊を旅館宿泊にしている。修学旅行の経済効果は約10億円といわれる。この運営に当たっているのは、市町村、JAなどが出資した第三セクターの南信州観光公社だ。また農繁期には、農業体験(援農)の希望者を募り、農家の手伝いをしてもらうワーキングホリデーの制度も実施。そこから定住者や就農者、リピーターが生まれ、都市と農村の交流にも発展している。受け入れ農家は100戸。年に1500人が援農に訪れ、山村の大きな力となっている。(木曜連載「続・地域力と地域創造」)

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内外教育

【3月12日号】 TPP交渉参加問題の際に持ち出される農業の未来。連載「視学官・教育課程調査官の講義ノート」は高校・農業科の教科調査官が執筆した。1970年に689校、19万人強だった農業を学ぶ高校生は、現在、343校8万5千人強と大幅に減少している。閉塞感が漂う中で、人材育成をどこに見いだし、農業学習をどのように展開していくべきなのか。産業論で語る農業ではなく、教育論で語る農業を熟読、吟味していただきたい。

【3月15日号】 安倍政権になって設置された教育再生会議が2月末に道徳の新しい枠組みでの教科化を盛り込んで提言をして以来、教育コミュニティーでは波紋を広げている。動揺というものではないが、民主党政権下のねじれ国会の結果、教育現場にとっては、一面で静かな環境で教育活動に専念できていた期間があっただけに、安倍政権の動きは気になるというのが本音の反応である。そういう意味で読むと最終面匿名コラム「ラウンジ」が目を引く。12日号のラウンジも「教育再生」の「再生」の意味を問い掛ける内容だった。再生アレルギーとでも命名できる教育界の反応が、第三者的には面白い。次の勝負はどこに用意されているのだろうか。

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厚生福祉

【3月12日号】 三重県でドクターヘリ運航1周年を迎えるにあたり、元警察庁長官で、認定NPO法人救急ヘリ病院ネットワークの理事長を務める国松孝次氏が三重大学で講演を行った。銃撃事件で救急医療に命を救われたという国松氏は、ドクターヘリ導入の意義を強調。今後に向けて、救急以外への利用の拡大や、運航費負担の多様化などの課題を挙げている(特集「ドクターヘリ 『最寄り』でなく『最適な』医療機関へ」)。連載「ワンコイン健診の現場から」は、インド・ヘルスケア最前線の2回目。伝統医療であるアーユルヴェーダの病院と西洋医療の病院、そして海外から患者を受け入れる医療ツーリズムの動きを紹介している。「地域を支える」は、ホームレスや障害者といった社会的弱者とともに、耕作放棄地となった田畑を開墾し直し、作物を栽培する活動を行っている「さいたま自立就労支援センター」。農地の再利用と自立支援の一石二鳥の取り組みで、作業による収入で生活保護を脱却できた人もいるという。特集「都道府県・政令都市 2013年度厚生・労働・環境関係予算」3回目は、名古屋市、奈良県、香川県。

【3月15日号】 埼玉県、千葉県、茨城県は人口当たりの医師数が全国でも最低水準で、医師不足のため医療提供体制が破綻している地域もある。これは医学部の少なさに大きく起因しているが、従来型の医学部を増設することは費用・人材の資源面で非常に困難だ。この地域の医師不足解消にはメディカルスクールの設立が最良の手段であると、亀田総合病院副院長の小松秀樹氏が提言している(オピニオン「埼玉県、千葉県、茨城県にメディカルスクールを」)。「進言」は香川大学の徳田雅明教授。同教授は自然界に微量にしか存在しない「希少糖」を研究しており、カロリー過剰摂取による糖尿病をはじめとする生活習慣病を予防し健康長寿を実現するのに希少糖が役立つのではないかという。特集「都道府県・政令都市 2013年度厚生・労働・環境関係予算」4回目は、山梨県、広島県、福岡県。2月後期の「社説拝見」は、「ハーグ条約加盟、政府の支援体制を」と題し、国際結婚が破綻した夫婦の子の扱いを定めたハーグ条約加盟問題、安倍政権の社会福祉政策、再生医療などをめぐる各紙の論調を紹介した。

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税務経理

【3月12日号】 「私の苦心」欄は、「松江税務署に着任して」と題し、松江税務署長が寄稿。それによると、松江市と安来市の2市を管轄し、県下6署が行う税務調査などに職員を派遣する広域運営の中心署で、多くの新入職員が配置される署でもある。税務調査を取り巻く環境は、インターネットの普及などによる経済取引の広域化、資産運用の多様化、定員削減など、厳しい状況にあるが、税務調査では例えば、調査件数の一定割合を特定の業種に集中的に投入する「業種別の集中調査」など、効率的な調査に努めている。また、「業種別の集中調査」の実施に当たっては、島根県下の各税務署が同時期に同じ業種を調査するなど組織力を生かすことで、波及効果を高めるようにしている。限られたマンパワーで島根県全体にわたる取り組みを行うためには、松江税務署の職員を、どの税務署の調査支援にどの規模で派遣するかなどの調整も、中心署の役割となる。若手職員の指導育成については、入署3年以下の職員を対象とした「新聞記事発表会」を開催し、会話力や質問力の育成を行っている。同会では当日、発表テーマを新聞記事以外に変更するなどして、現場での対応力の養成も行うようにしている。

【3月15日号】 「私の苦心」欄は、「主体的に積極的に汗を!」と題し、栃木県の取り組みを紹介。同県は、2007年4月に地方税徴収特別対策室を設置した。所得税から住民税への税源移譲を踏まえ、市町の徴収技術の向上を図り、税を確実に徴収するため、県と市町が協働して、個人住民税を中心に市町村税の徴収を行う組織である。これまでに延べ171人の市町職員が同室に派遣され、延べ74人の県職員と協働で滞納整理に当たるなど徴収ノウハウを習得し、派遣終了後は各市町に戻り、中核となって滞納整理に取り組んでいる。市町からの派遣職員にとっては、徴収技術のスキルアップのほかに、(1)他市町の状況を知ることで自分の市町の状況を客観的に見られるようになった(2)他市町との切磋琢磨(せっさたくま)により滞納整理などのモチベーションが上がった(3)滞納案件処理の進行管理を意識するようになった—などのメリットがあった。同室では「この6年間の対策室における徴収技術の蓄積は、市町により差異が見られるが、既に十分な技術を身につけ発揮している市町が出てきており、大変頼もしい。対策室は時限的組織であり、今年度をもって設置期間終了となるが、各市町の徴収担当部門においては主体的に積極的に汗をかいていく姿勢を貫いていってほしい」としている。

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金融財政ビジネス

【3月11日号】 「株価が支える日本の個人消費」と題して、3月の景気動向と金融情勢について分析した記事を載せた。同記事は「米国では強制歳出削減が発動され、暫定予算の失効や連邦債務上限の暫定引き上げの期限が次々に迫るなど、財政の緊縮化が不可避となってきている。この下押し圧力は強く、2013年の成長率は12年を下回るだろう。一方、日本の輸出は底を打った可能性がある。ただし、輸出環境は引き続き厳しく、今後景気回復を牽引するほどの伸びは期待できないのではないか。このところの個人消費の伸びは好調な株価に支えられているが、これを持続させるには賃金の上昇が不可欠だろう」としている。

【3月14日号】 「観光振興を成長戦略の柱に」と題して、今後の観光振興の在り方について解説した記事を掲載した。同記事は「03年の『観光立国宣言』以降、観光はわが国の成長戦略の重要な一角を占めてきた。人口減少社会では、消費人口が減少する。それを補うためには、消費需要をもたらす外国からの旅行者の増加が不可欠だ。しかも、世界は『大交流時代』を迎えている。国内の事情と国際的な環境とが相まって、日本では観光への期待が膨らんできた。とりわけ人口減少で苦しむ地域において、観光は地域経済活性化の『切り札』的な役割を期待されている。しかし、残念ながらこれまでのところ、観光は期待されたほどの盛り上がりを見せていない。むしろ、目標を大幅に下回る状況になっている。今後、安倍政権が推進する成長戦略でも観光は重要な役割を担うはずだが、どのようにしたら観光が経済発展の力になるのだろうか。本稿では、これからの観光振興の在り方を考えてみる」としている。

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