早読み行政誌

修学旅行のメッカ(2013年3月25日〜3月29日号)

地方行政

【3月25日号】 東日本大震災の死者は、被災市町村全体の人口構成と比較して、高齢者の割合が高いことが指摘されています。国土交通省の調査によれば、死者の半数以上が65歳以上であったとされ、この割合は岩手、宮城、福島3県37市町村の65歳以上人口構成比(23%)と比較してかなり高いことが分かります。特に、死者の年齢層は70歳以上が多く、75歳以上79歳以下にピークがあります。障害者についても、死者の割合が高いことが指摘されています。被災3県の太平洋沿岸27市町村の人口約124万人のうち死者は約1.3万人で、人口全体に対する死者の割合は約1%です。障害者約6.8万人のうち死者は約1400人で割合は約2%でした。すなわち、障害者の死亡率は、総人口に対する死亡率の約2倍です。多くの要援護者が亡くなった地域では、在宅だけでなく福祉施設が津波に襲われ、被害を拡大しています。特に、津波ハザードマップでは安全とされていた施設で逃げ遅れた事例が数多く報告されています。大災害時には要援護者および関係者は、一般の人よりもはるかに大きな苦難を経験するのです。(月曜連載「地域防災最前線」)

【3月28日号】 九州の北端、長崎県松浦市の青島を訪ねた。青島は伊万里湾と玄界灘の境にあり、世帯90戸、人口280人、周囲10.4キロ、面積0.9平方キロの小さな島だ。この島が、新たな「修学旅行のメッカ」として注目を集めている。特別な名所旧跡もない普通の漁村だが、都会では味わうことができない自然や人との出会いがある。島では日常の出来事が、都会から来た生徒たちにとっては初めての体験となる。島民の家に泊まり、釣りなどの漁業体験をする。教科書では知ることがない「学びの場」として、学校に迎え入れられている。修学旅行生の受け入れは2003年に始まった。試験的に100人を迎えたところ、これが好評で翌年には4校の計11000人に増えた。これまでになかった体験ができると評判になり、旅行会社にも学校にも話が伝わった。受け入れに賛同する地域も増えていき、近くの鷹島、福島をはじめ、内陸部の山間地や、隣接する平戸市の漁港など、受け入れ組織は13地区に広がった。そして、現在では185校の3万5000人を受け入れるまでの規模になっている。(木曜連載「続・地域力と地域創造」)

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内外教育

【3月26日号】 特区制度を活用した富山県の「地域共生型福祉」の取り組みについて2月22日号、3月1日号の2回にわたり紹介したが、今号では実際の現場の様子をリポートする。障害の有無に関わらず子どもからお年寄りまで過ごせる場所としての「富山型デイサービス」が誕生して20年。現在、県内に約90カ所ある施設の一つ「ふるさとのあかり」(富山市)を記者が訪ねた(特集「地域活性化総合特区 全ての人に開かれた場所に」)。成年後見人を付けると選挙権を失うとする公選法の規定は違憲だとして、知的障害のある女性が国を相手に選挙権があることの確認を求めた訴訟で、原告勝訴の判決が言い渡された。この問題に関する初の司法判断。精神障害者らの自己決定の尊重という理念から、欧米では選挙権制限の見直しが進んでおり、判決で「国際的な動向に反する」と指摘された古い規定は改正を迫られそうだ。特集「都道府県・政令都市 2013年度厚生・労働・環境関係予算」6回目は、埼玉県、静岡県、滋賀県。

【3月29日号】 東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の42市町村のうち、仙台市と近郊の3市町を除く38市町村で、住民の転出が転入を上回る転出超過が4万7000人を超えるという。住宅再建が難航していることや、原発事故の影響があり、各自治体は人口流出の食い止めに必死だ(「特集 東日本大震災 被災地、4万7000人流出」)。「インタビュールーム」は、脱法ハーブ規制で全国初の制度を導入した和歌山県の山本明史保健福祉部長。販売業者にとってプレッシャーになりそうな内容で、県職員が説明に訪れる中で、販売店の一つは4月の制度スタートを待たず2月に閉店したという。特集「都道府県・政令都市 2013年度厚生・労働・環境関係予算」7回目は、宮城県、大阪市、山口県。3月前期の「社説拝見」は「PM2.5、国内対策も重要」と題し、中国の大気汚染や婚外子相続差別違憲判決、福島原発事故の健康問題、待機児童問題、混合診療などをめぐる各紙の論調を取り上げた。

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厚生福祉

【3月22日号】 東日本大震災で被災した東北3県で、地域住民に対する心のケアの必要を感じている医師の割合が67%に上るという。日本医師会総合政策研究機構が3県の医師を対象とする調査結果をまとめたもので、心のケアが必要な人(複数回答)では「高齢者」が8割に達した。「幼児または児童」は全体では24%だったが、診療科別に見ると小児科医の8割以上がケアの必要性を訴えている。(特集「東日本大震災 心のケア、67%の医師が必要性認識」)。特集「多様化する保育所と経営」20回目は、保育所を立ち上げるための用地確保や施設整備などのテーマに移る。特に大都市部では土地の確保が大きな課題となっており、大阪市や川崎市などを例に、市による貸し付けなど国や自治体の施策を取り上げた。「インタビュールーム」は、在宅医療と介護の一体的ケアをモデル事業として進める福井県あわら市・坂井市で、医療機関同士や各職種間の連携に中心的な役割を担う坂井地区医師会会長の藤田博明氏。特集「都道府県・政令都市 2013年度厚生・労働・環境関係予算」5回目は、新潟県、京都市、愛媛県。

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税務経理

【3月26日号】 「私の苦心」欄は、「徴収体制の継続に向けて」と題し、大分市の取り組みを紹介。それによると、同市では、これまで効率的な収納体制構築に向け組織・業務内容の見直しを行い、収納業務のシステム化や小班体制の構築等を行ってきた。特にシステム化は業務自体の可視化を進め、具体的事務進行の精査から業務全体の統一的スケジュール化を可能にした。徴収業務、特に滞納処分には、非常に強い強制力を持つ法が後ろ盾としてあり、これは、ある意味で両刃(もろは)の剣とも言えるが、突き詰めれば、滞納者と対峙(たいじ)する徴税吏員が個々の業務執行力を最大限に発揮できるかが最も重要だ。組織においては、「マネジメント」が問題となる。組織の目標達成は、結果的に組織を構成する個々の職員自体が自己の職務を理解・認識し、計画的に責任を持って遂行するからこそ導き出されてくると考えられる。現在の納税課が組織として機能しているのも、過去および現在にわたり自主的に実務上の問題点を洗い出し積極的に数々の提言を行い、組織一丸となって業務の見直しを実践してきた職員たちが存在するからである。組織の常として、職員の異動は避けられないが、これまでの道筋は職員に引き継がれ日々業務は進んでいる。その道筋を誤らず継続させていくのみである。

【3月29日号】 「私の苦心」欄は、「滞納額のさらなる圧縮に向けて」と題し、富山県の取り組みを紹介。それによると、同県では、2005年10月に県下全域を所管する総合県税事務所が設置した。同事務所納税課に滞納期間3年未満の滞納案件を扱う収納班、滞納額の多い個人住民税と自動車税を扱う対策班、困難・膠着(こうちゃく)した案件を扱う整理班の4班を設け、各班が機能分担して効果的な滞納整理に取り組んできた。個人県民税について、最近郡部の町村長からは議会が厳正なる滞納処分を強く求めており、県の指導を受けて差し押さえを実施したいとの声が増えてきた。納税課の役割は、県民の納税意識を高めて収入率向上により自主税源の確保を図るとともに、県民の信頼性を確保することにあるが、現実は毎日滞納者の苦情との戦いである。苦情を恐れて前年通りの対応では前に進まない。法律に基づく滞納整理が県民からの信頼を確保する上でもますます重要となってきている。滞納整理の成果は業務内容の見直しだけでなく、強い使命感で苦情に負けず粘り強く取り組んだ職員の長年の努力の賜(たまもの)である。

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金融財政ビジネス

【3月25日号】 「2%の物価目標達成は困難」と題して、正副総裁が交代して発足した日銀の新体制について分析した記事を載せた。同記事は「政府が2月28日に国会に提示した日銀の正副総裁の人事案が、衆参両院で承認された。黒田東彦新総裁率いる日銀の新体制が3月20日にスタートし、安倍晋三首相が唱えてきた金融政策のレジームチェンジ(体制転換)はいよいよ具体化の段階に入る。だが、特殊要因を除けば日本経済が過去20年間経験していない2%の物価上昇率の実現は、至難の業である。そして、この新体制には足元ではなく先行きに大きなリスクが潜んでいると筆者は考える」としている。

【3月28日号 「『攻め』の安倍外交に4つの試練」と題して、安倍政権が抱える外交課題について解説した記事を掲載した。同記事は「安倍晋三首相率いる自公連立内閣が発足してから、早くも3カ月が経過した。デフレ脱却を旗印にした安倍内閣の意気込みに応えるように、株価は上昇し続け、為替相場は円安が進行。業績回復を受けて、一時金要求に満額回答を出す企業が相次ぐなど、半年前には想像もできなかった活気がよみがえってきた。安倍首相はそうした経済情勢の好転を追い風に、2月の訪米を踏まえて3月15日には懸案だった環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を正式表明した。これにより、日本は米国やオーストラリア、ニュージーランドなどアジア太平洋地域の11カ国との貿易自由化をめぐる本格的な協議をスタートさせる。一方、北朝鮮は2月の核実験後も朝鮮戦争の休戦協定の白紙化を宣言するなど強硬姿勢をますます鮮明にし、尖閣諸島の領有権を主張して日本に圧力をかける中国では習近平共産党総書記が3月14日に国家主席に就任、新体制が発足した。このように緊迫した状況が続く中、安倍外交は最初の試練に立ち向かおうとしている」としている。

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