【4月1日号】 必ずしもリードタイムの十分でない災害において、行政が避難支援を実施することは現実には困難です。むしろ、要援護者情報の共有等、平常時から要援護者支援の基盤づくりを進めることが重要です。避難生活における要援護者支援では、在宅者も含めて適切な支援を講じることが東日本大震災の教訓でした。市町村は人的支援や物資供給の既存の仕組みを活用するとともに、柔軟性・機敏性・想像力をもって、避難支援から避難所における生活支援まで、適切に対応することが求められています。なお、要援護者における支援の中核は市町村ですが、都道府県、国は市町村が実効性のある支援を行えるように努めなければなりません。大規模な災害の発生を視野に入れた法制度の整備、人材育成と専門事項に関するマニュアルの作成等を通じた体制の整備、広域的連携に関する仕組みづくりおよびその調整等を行うことが求められます。(月曜連載「地域防災最前線」)
【4月4日号】 「やる気になっていく人、頑張っている人を応援するという社会になっていかないといけない。そのためには、負の連鎖から抜け出していかないといけない。(中略)マイナス思考は自分にとっていい流れを呼び込むということができない。ただ、多くの人が、田舎は過疎地域、限界集落、条件不利だ、地域が駄目だと言ってしまっている。(中略)私は上勝町に来てから、そういう言葉は一回も使っていない。なぜ、条件が不利、限界集落だという言葉を使うのか。(そういう人は)同じ土俵で物を見てしまっている。例えば、(葉っぱのモミジを見て)モミジの色付けをしたり、香りのいいものをつくったりすれば価値が出るという視点に立つことができない。同じ土俵でない視点があることを気付かせなければならない」(特集「地域ミュージアムとまちづくり」)
【4月2日号】 教育専門誌や一般誌、新聞に掲載された教育関連記事・評論を紹介、論評する「評の評」は、内外教育の隠れた人気コーナー。今号は、中央公論(中央公論新社)、世界(岩波書店)など4月号の一般誌が対象で、いじめや体罰問題に関する各紙の記事をベテラン教育ジャーナリスト・斎藤剛史氏が自身の見解を踏まえて縦横に論じ、一読の価値がある。
【4月5日号】 市民としての意識と行動力を育む「シチズンシップ教育」。欧米に比べ日本では取り組みが遅れているとされるこの分野で先月末、高校教員でつくる「全公民科・社会科教育研究会」が研究発表会を開催。慶応義塾湘南藤沢中等部などで非常勤講師を務める太田正行氏が新科目「市民生活と法」(仮称)のカリキュラム開発に取り組んでいる事例を発表するなど、活発な意見交換が行われた。民主主義を守る基盤とさえ言える教育分野だけに、今後注目を集めそうだ。
【4月2日号】 特集「多様化する保育所と経営」21回目は、国有地や市有地を活用した保育所整備にスポットを当てる。国有地はかつて売却が基本とされていたが、自治体が保育所や介護施設に利用する場合の貸付制度が導入され、さらに社会福祉法人への直接貸し付けも可能となった。このほか、市有地の貸し付け・無償譲渡、市による土地所有者と事業者との仲介──といったケースについて、東京都、名古屋市、川崎市、神戸市などの具体例を取り上げた。「ワンコイン健診の現場から」は、「インド・ヘルスケア最前線」の最終回。インドの予防医療の状況を紹介し、インドでの事業展開の可能性を探る。特集「都道府県・政令都市 2013年度厚生・労働・環境関係予算」8回目は、札幌市、東京都、静岡市。兵庫県小野市が、生活保護の受給者らが給付金をパチンコなどで浪費することを禁じる条例を制定し、話題を呼んだ。市に寄せられた意見の6割は賛成だが、「人権侵害を招きかねない」との懸念や反対も根強い(「ギャンブルで浪費禁止」)。
【4月5日号】 尼崎公害訴訟が3月に終結を迎えた。提訴から25年目。原告の高齢化による「時間切れ」の面も否めない大型訴訟の経緯を振り返り、その成果と今後への課題をまとめた(特集「尼崎公害訴訟 原告高齢化で協議終結」)。「地域を支える」は、佐賀県の療育支援センター「あそしあ」。発達障害を伴う知的障害児の入所・通所事業のほか、幼保・小学校の教諭や保育者らに専門的な技法を伝えるなどし、地域で療育できる基盤づくりを進めている。わが子の障害は保護者にとって受け入れがたいものだが、「手だてさえ分かれば十分地域で生活できる」と担当者は強調している。特集「都道府県・政令都市 2013年度厚生・労働・環境関係予算」9回目は、茨城県、愛知県、鹿児島県。
【4月2日号】 巻頭言は、経済評論家の柳沢勝氏が日銀新体制を取り上げた。安倍政権発足後、大幅な円安と株高が進み、今年の春闘では、安倍首相の要請に応える形で、自動車産業や流通業界など中心に一時金増額に踏み切る企業が相次ぐなど明るい話題が続いたが、「今後の課題は、雇用の8割を占める中小企業に浸透していくかどうかだ」とくぎを刺す。デフレ脱却に向けて政府が描くシナリオについては、「シナリオ通りに展開したとしても、タイムラグ(時間の遅れ)は覚悟しなければなるまい」と、過度な楽観を慎むよう忠告。黒田東彦新総裁による日銀新体制がスタートしたことを歓迎しつつも、2年後をめどに2%というインフレ目標達成に向け、「金融緩和が過剰流動性となり行き過ぎた資産価格の高騰(バブル)とならないよう、大胆かつ慎重な金融政策の舵(かじ)取りを期待する」と、複雑な注文を付けた。「私の苦心」欄は、来年度のNHK大河ドラマに決定した「黒田官兵衛」の子、黒田長政により開かれた武士の町・福岡を基礎に発展してきた福岡市の取り組みを紹介する。1972年の政令指定都市昇格以来となる大規模な税務機構改革により、従来5区役所に分散していた償却資産の課税業務(約5万9000件)と固定資産課税台帳作成に必要な法務局登記異動通知のシステム入力業務(約11万件)を本庁に集約。さらに、固定資産課税台帳の入力業務に労働者派遣を導入したことなどを挙げている。職員削減や業務知識・経験水準を維持できなくなるという懸念もあった半面、「できることは実行する。やらねば何も変わらない」という一貫した考えから実施した、という担当者の信念は敬服に値する。自治体の2013年度税収見通しは埼玉県、福井県、神戸市、熊本市を掲載した。
【4月5日号】 自治体の13年度税収見通しは青森県、山形県、栃木県、愛知県を掲載した。「私の苦心」欄は、埼玉県で最も人口の少ない長瀞町を紹介。県の「相互派遣制度」を活用したスキルアップや、納税推進コールセンターの開設などにより、収納率アップ部門で11年度に県から表彰を受けるに至った。地道な取り組みが成果をもたらすことを改めて感じさせる。
【4月1日号】 「求められる労働生産性向上策」と題して、金融政策と実体経済の関係について分析した記事を載せた。同記事は「新体制の日銀が金融緩和の余地を探る中、『期待チャネル』が重要性を増している。しかし、『期待チャネル』自体の持続性は最終的にファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に左右される。従って、金融政策がファンダメンタルズとどの程度密接に結び付いているかは、これとは別に問われなくてはならない。本稿では、超過準備の保有者構成の変化に加え、自然利子率(≒潜在成長率)の低迷、労働市場の流動性欠如、人口動態と賃金プロファイルの特殊性という三つの障壁に着目する。金融政策と実体経済の結び付きを強める上では、特に労働市場の流動性向上が求められる」としている。
【4月4日号】 「問題多い公共投資依存型経済運営」と題して、いわゆる「三本の矢」のうち、財政政策について解説した記事を掲載した。同記事は「『アベノミクス』が日本経済を大きく動かしつつある。アベノミクスは『大胆な金融緩和』『機動的な財政政策』『民間投資を喚起する成長戦略』という『三本の矢』から成ると説明されている。しかし、アベノミクスは多様なパッケージであり、その内容が体系的に示されているわけではない。また、三本の矢のうち実際に動きだしているのは、機動的な財政政策だけであり、大胆な金融緩和はこれから実行される上、成長戦略については現在検討中である。全体としてのアベノミクスの評価は、今後徐々に定まっていくことになるだろう。そこで本稿では、三本の矢のうち既に動きだしている機動的な財政政策について考えてみたい。なお、単純化するために『機動的財政政策』は『公共投資を増やすことで成長率を高めようとする政策である』と定義する」としている。