早読み行政誌

ない袖は振れない(2013年4月22日〜4月26日号)

地方行政

【4月22日号】 「東日本大震災を契機に自治体間連携について強化する改正が行われました。一般に防災施策は平常時にはなかなか進まず、災害後に大きく動きます。やるべきことは、ほぼ分かっているのですから、事前に進んでいたらと悔やまれます。今、重要なことは、制度を実際に回す人材です。自治体間連携を真に機能させるために、全国的な人材育成と運用計画の具体化が迫られています」(地域防災最前線(9)「災害対策基本法等の改正について」)

【4月25日号】 「近い将来、自治体の歳入は人口減少によって確実に減少していく。その一方で、人口動態には係らない固定費が多々存在している。地域住民や企業の要望に合わせて、施設を拡充していけば、確実に財政破綻に至る。駄々っ子がいくらおねだりをしてみても、ない袖は振れない。むしろ、どのような施設を残し、どのような施設は撤廃するのか、職員や議員数はどの水準が適正なのか、などを明確にして固定費を削減しない限り、お金のやりくりがつかなくなる。(中略)そのため、超長期の視野で歳入と歳出をシミュレートしてみて、どのような事態が起きうるのかを、早い段階で理解しておくことが必要になる」(人口減少社会の自治体経営(1)「超長期予測の試み」)

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内外教育

【4月23日号】 昨年4月に連載が始まった「視学官・教育課程調査官の講義ノート」も19日号で各教科を一巡。教育現場から「教える神さま」との称号も得ている視学官・教育課程調査官が授業のポイントを分かりやすく解説したシリーズは、学校関係者から好評で23日号から2巡目に入ることになった。再スタートの1回目は、世間一般ではあまり知られていない教育課程調査官の役割を、調査官を束ねる勝野頼彦・国立教育政策研究所教育課程研究センター長が紹介していて興味深い。

【4月26日号】 安倍晋三首相が成長戦略の一環として、都市部を中心に深刻化している保育所待機児童の解消策を打ち出したが、ベネッセ次世代育成研究所が全国の国公私立幼稚園と公私立認可保育所、認定こども園を対象に実施した調査によると、やはり現状では「定員割れの幼稚園、定員超過で入園できない保育園」という構図が鮮明だ。調査は、認定子ども園への移行意思、保育者・教諭における非正規雇用拡大の実態についても聞いており、「幼稚園、保育所、認定子ども園を全国的に同じ枠組みで比較した例のない」(監修者の無藤隆白梅学園大学教授)、貴重な資料となっている。

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厚生福祉

【4月23日号】 肺がん治療薬イレッサの副作用被害をめぐる裁判で、最高裁が原告側の上告を棄却。国と製薬企業の責任を否定した二審東京高裁判決が確定した。「期待の新薬」が一転して多くの死者を出した問題は、法的に決着したとはいえ、副作用の危険性に関する情報提供の在り方、新薬承認のスピードと慎重さのバランスなど、多くの課題と教訓を残した。関連記事をまとめた(特集「イレッサ副作用訴訟 遺族側の全面敗訴確定」)。「インタビュールーム」は、障害の有無や年齢にかかわらず全ての人を対象とする「富山型デイサービス」の先駆けとなったNPO代表、惣万佳代子さん。富山型デイについては先般、特集記事でも取り上げているが、行政との関係など20年間の歩みがよく分かる内容だ。特集「都道府県・政令都市 2013年度厚生・労働・環境関係予算」14回目は、福井県、大阪府、福岡市。

【4月26日号】 特集「多様化する保育所と経営」24回目は、大規模マンション開発や、街づくりの中での複合施設整備に伴う保育所整備について、横浜市や東京都豊島区などを例に見ていく。また、保育所整備への行政の補助をめぐって住民監査請求が起こされることもあり、その具体例を取り上げた。安倍晋三首相が、今年度からの5年間で待機児童ゼロを目指すことを表明。その実現に向けて、実効性ある施策が求められている(「待機児童、5年後にゼロ」)。「インタビュールーム」は、鳥取県子育て王国推進局長。全国トップクラスの子育て環境を誇る同県の取り組みについて尋ねた。水俣病認定をめぐる訴訟で最高裁は、患者認定を命じた二審福岡高裁判決を支持、認定しなかった熊本県の敗訴が確定した。司法が独自に認定の可否を判断する道を示したものだが、国は厳しい認定基準を変える予定はなく、「二重基準」状態が続くことになる。問題が長期化する中で、抜本的な解決策が求められている(特集「水俣病訴訟 水俣病を初認定」)。特集「都道府県・政令都市 2013年度厚生・労働・環境関係予算」15回目は、富山県、神戸市、長崎県。

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税務経理

【4月23日号】 「巻頭言」では片山善博・慶大教授が、都心部の木造住宅密集地域における老朽家屋の建て替え促進策を論じている。きっかけは東京都が、老朽化住宅を除去して更地にした場合、固定資産税を住宅用地並みに抑制する方針を固めたと一部で報じられたこと。現行制度では、老朽住宅が撤去されれば、「土地の固定資産税負担が一挙に6倍にまでも跳ね上がる」ため、撤去したくてもできないという事情があり、土地への固定資産税軽減という都の方針には追従する自治体が出てくるだろうと評価する。もっとも、その場合には「事業所など住宅以外の建物を撤去した場合と、老朽住宅を撤去した場合とでは、同じ更地でも税負担が6倍も開いてしまう」と、新たな矛盾が生じることを指摘。そこで「上物の住宅に対する軽減措置を拡充させることで、全体としての固定資産税が増えないように案配したらどうか」と、別の解決策を提言している。活発な論議を期待したい。「私の苦心」欄は、青森市収納対策本部を紹介。滞納整理に当たる職員の士気を保つために「ストレスからできる限り解放してあげることが必要」として、チーム全体でフォローし合う組織文化を醸成しようという取り組みは、一考の価値があるだろう。自治体の2013年度税収見通しは京都府、堺市、福岡市を掲載。

【4月26日号】 「私の苦心」欄では、岡山東税務署長が「岡山の地酒を全国で、そして世界で味わってもらいたい」と訴えている。「吉備のうま酒」と酒どころで知られる岡山でも酒造が減少傾向にあり、今では輸出にも力を入れているという。「乾杯は日本酒で」という呼び掛けは、左党の心に響くだろうか。2013年度税収見通しは新潟県、長野県、大分県を掲載した。

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金融財政ビジネス

【4月22日号】 「世界経済のリスク要因はユーロ圏問題」と題して、ユーロ圏諸国が抱える信用不安等の問題について解説した記事を載せた。同記事は「2008年9月に起きたリーマン・ショック後、低迷が続いた世界経済にも、最近少しずつ明るさが見え始めている。米国は不動産バブル後のバランスシート調整にめどが付きつつあり、緩やかながら回復への道を歩んでいる。さらに、『シェールガス革命』に代表されるエネルギー分野への期待も高まっており、米経済に構造的な変化が起きるかもしれない。中国に関しては、国内の不動産価格の上昇などマイナス要素はあるが、政府の景気対策に支えられる格好で経済活動は少しずつ活発化している。そうした状況の中、わが国の景気も緩やかに改善の方向に向かっているとみられる。一方、ユーロ圏諸国の信用不安などの問題は依然としてくすぶり続けており、なかなか根本的な解決に向けた道筋が見えてこない。今年3月にも、キプロスへの支援策をめぐってさまざまな軋轢が顕在化し、世界の金融市場を大きく不安定化させる結果となった。ユーロ圏諸国が抱える問題の根は深く、これからも世界経済や金融市場に悪影響を与えるのではないかという懸念は拭えない。その意味では、ユーロ圏の問題は、世界経済が抱える最大のリスク要因になっていると言える」としている。

【4月25日号】 「『ミサイル発射』で米韓の対話姿勢引き出す」と題して、最新の北朝鮮情勢について分析した記事を掲載した。同記事は「4月に入り、北朝鮮がいつミサイルを発射するかで大騒ぎになった。4月18日までに中距離弾道ミサイル『ムスダン』の発射準備をしなかったのは、米国と韓国が対話姿勢に転じたからだ。『戦時状況だ』『最後通牒だ』という言葉を使った北朝鮮の強気の発言とそうした状況を思わせる動きを分析すると、北朝鮮の核戦略がはっきりしてきた。北朝鮮は核実験とミサイルの発射実験で大きな自信を付け、核保有国としての自信を前面に出し始めたのである。北朝鮮の核戦略が米国の『核の傘』打破と朝鮮半島統一を目指すものであることが明確になってきたと言える」としている。

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