早読み行政誌

留学のススメ(2013年5月13日〜5月17日号)

地方行政

【5月13日号】 「私が聞いた東北の合意形成方法は、(1)情報共有(2)共感を育む──というプロセスに時間をかけていることが理解できます。しかも情報共有では、地域の過去の記録を当事者たちが伝承する知恵も含まれています。情報共有、計画への共感を持っているので、その後は軋轢(あつれき)を生まずスムーズに展開しやすいのです。外部の専門家が住民アンケートなどに基づき、たたき台を提案し、そのたたき台に関する案を話し合うというスタイルは、一見、効率的なように思えますが、合意形成の重要なプロセスを飛ばしている可能性が高いと思います。これが地域の分断、復興まちづくりへの軋轢を生むことを恐れます」(地域防災最前線(10)「東日本大震災、復興の現状と課題」)

【5月16日号】 「豊岡市は、思い切った観光PR作戦に打って出た。それは地図で知られる昭文社のガイドブック「ことりっぷ」シリーズの一冊として『城崎温泉 出石・豊岡』を出版したことだ。3万部の発行で、一般書店で販売されている。(中略)このガイドは女性に人気のシリーズで、食べ物や宿泊施設などを紹介する内容。あえて市が広報誌を作ることをせずに、人気書籍の出版社に任せ、比較的自由にお金を使い、また一人旅が増えている女性観光客のニーズに合わせて編集した。市としては初の試み。だが、明確にターゲットを絞り、それに合わせたデザインとインフォメーションを打ち出すというのは、理にかなっているというものだ。今後、豊岡市のような広報戦略が主流となることだろう」(続・地域力と地域創造⑫「まちの情緒を全面に」)

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内外教育

【5月14日号】 学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの発達障害がある生徒が通常学級に在籍している公立中学校は全体の95・8%─。全日本中学校長会が、中学校教育の課題などに関する各種調査結果を収録した2012年度の「調査研究報告書」がまとまった。本号から5回連載で取り上げていくが、第1回は特別支援教育がテーマ。発達障害を抱える子どもへの指導上の困難さを訴える学校が増えており、7割以上の中学校が、指導ができる教員の加配を求めている現状が浮かび上がっている。

【5月17日号】 グローバル競争に耐えられる人材育成の観点から、大学生の留学促進策が大きな政策課題になっている。しかし、実際の大学生の留学に対する意識はどうなのか。本誌では、ベネッセ教育研究開発センターの「大学生の学習・生活実態調査」報告書を14日号から2回に分けて紹介しているが、本号は海外留学や就職活動がテーマ。「海外留学の意向は持っていても、実現するのはごくわずか」「左右するのは語学力。しかし自信は入学直後をピークに年々喪失」といった実態が浮き彫りになっている。留学促進策も、こうした事実に基づいた議論が必要なのだろう。

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厚生福祉

【5月14日号】 特集「多様化する保育所と経営」25回目からは、保育所運営のテーマに移る。保育所の経営を中心的に担っている社会福祉法人について、その特徴や法的規制、NPO法人などとの違いを見た上で、定款の内容をひも解く。政府の規制改革会議は、認可保育所への株式会社やNPO法人参入を加速させると発表した。安倍首相が表明した5年後の待機児童解消に向けた動きで、厚生労働省は2015年4月の子ども・子育て支援新制度の施行を待たず、株式会社なども公平・公正に扱うよう通知を出すという(「認可保育所、会社参入加速へ」)。「インタビュールーム」は岡山市の森真弘保健福祉部長。同市は在宅介護の分野で国から総合特区の指定を受けたばかりで、デイサービスへの成功報酬制度導入など持続可能な社会保障制度に向けた取り組みを聞いた。特集「都道府県・政令都市 2013年度厚生・労働・環境関係予算」17回目は、群馬県、兵庫県、大分県。

【5月17日号】 入所者10人が死亡した群馬県の高齢者施設「静養ホームたまゆら」の火災では、今年1月、元理事長に有罪判決が出た。特養ホーム八色園顧問の斎藤芳雄氏は「『たまゆら事件』を考える」と題した巻頭言で、10人のうち6人が東京都の生活保護受給者だった点を挙げ、大都会の高齢者対策の問題に思いを巡らせている。日本年金機構は今年、「気になる年金記録、再確認キャンペーン」をスタートさせた。年金記録問題への集中的な取り組みの一環で、インターネットサービス「ねんきんネット」の機能を拡充するなどしている。その内容と狙いについて、事業企画部の北波孝氏が解説する(特集「年金記録問題 記録再確認キャンペーンをスタート」)。「インタビュールーム」は、沖縄県の糸数公健康増進課長。平均寿命1位の座を明け渡し、「長寿県」のイメージ崩壊の危機に直面している同県の課題や、長寿県復活への対策について聞いた。特集「都道府県・政令都市 2013年度厚生・労働・環境関係予算」18回目は、秋田県、横浜市、佐賀県。4月後期の「社説拝見」は「医療改革と社会保障会議に注目」と題し、社会保障制度改革国民会議での医療改革論議や、司法が初めて水俣病患者認定を行った最高裁判決などをめぐる各紙の論調を紹介した。

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税務経理

【5月14日号】 「私の苦心」欄は、仙台市で昨年発足した納税部を紹介。大震災の被災地だけに、職員は本業と並行して避難所運営や各種証明書の申請受け付けなどの被災者支援業務に当たっていたといい、言外の苦労が漂う。自治体税収見通しは千葉県、香川県、広島市を掲載した。

【5月17日号 「ぷろふぃる」欄は4月に国税庁長官に就任した稲垣光隆氏を紹介。「経済のグローバル化により、国際的な財産隠しが起きている。外国の国税当局と連携して防ぐことが重要だ」と協調している辺り、大企業や国際企業は税逃れしているのでは、という庶民の疑問に応えてくれることを期待したい。「直言苦言」欄では匿名筆者が、3月21日に最高裁が違法・無効判決を下した神奈川県の臨時特別企業税を取り上げた。判決は「地方自治体の課税権は、法律の準則の範囲内で行使されなければならない」との趣旨で企業税を違法としたが、肝心の「準則」とは何を指すのか不明だという。年度末の判決だったせいか、これを掘り下げた報道があまり見当たらなかったが、この欄を読むと、自治体が最も知りたい憲法の租税法律主義(84条)と地方自治(92条)の関係について判決は詳しく触れなかったのだ、ということが浮かび上がる。「私の苦心」欄は、岐阜県で自動車税の膨大な滞納額の整理を図った県税事務所の取り組みを紹介。自治体税収見通しは神奈川県、佐賀県を掲載した。

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金融財政ビジネス

【5月13日号】 「個人消費が牽引した日米経済」と題して、5月の景気動向と金融情勢について解説した記事を載せた。同記事は「株価の上昇を背景に1〜3月期の米景気を牽引した個人消費は、株価の先行き不透明感の広がりや歳出削減圧力等から、今後伸びが鈍化しよう。牽引車が外れることから、2013年の成長率は12年を下回ることとなろう。日本でも、株価の上昇を背景に個人消費が1〜3月期の景気拡大をリードした。個人消費は今後いったん中だるみするとみられるものの、13年度下期には住宅投資と共に消費税率引き上げ前の駆け込み需要によって大きく伸びるだろう。13年度は公的部門と並んで家計部門がリードすることで、12年度を上回る成長率を達成しよう」としている。

【5月16日号】 「依然根深い米国の党派対立」と題して、米国の政治動向について分析した記事を掲載した。同記事は「13年4月、米国の首都ワシントンに衝撃が走った。民主党の大物上院議員が14年の中間選挙への出馬見送りを表明したからである。今期限りでの政界引退を明らかにしたのは、モンタナ州選出のマックス・ボーカス上院議員だ。上院でも有数のベテラン議員で、1978年に初当選して以来の通算任期は優に30年を超える。引退表明が衝撃的だった理由の一つは、ボーカス議員が米国の今後の政策動向に与える潜在的な影響の大きさにある。同議員が委員長を務める上院財政委員会は税制や医療保険、さらには通商問題など重要性の高い政策を議会で議論していく際の入り口となっており、同委の委員長は関連法案の審議をリードする『船頭』としての重責を担っているからだ。同時に、今回のボーカス上院議員引退表明の背景には、現在の米国政治が直面する『厳しい党派対立』があり、『党派対立の克服』を掲げてバラク・オバマ大統領が再選を果たしたにもかかわらず、こうした対立が依然として続いていることを裏付けたとも言える。ライフスタイルと一体化した有権者の『住み分け』がこれに関係しているだけに、米国における党派対立の克服は容易ではなさそうだ」としている。

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